【WEB版】追放魔術師のその後 ~なんか、婚約破棄されて、追い出されたので、つらい貴族生活をやめて遠い異国の開拓村でのんびり生活することにしました~
始めてちょろちょろ中パッパ赤子が泣いてもフタ取るな ①
始めてちょろちょろ中パッパ赤子が泣いてもフタ取るな ①
「いきましたか?」
「……あぁ。多分もう大丈夫だ」
真っ暗な暗闇の中、男と女の声が反響するように響く。
声の主は俺とミーリアだ。
狭いところで反響した声はいつもと違う感じに聞こえるんだよな。
俺はもう一度魔力の探査を行い、天誅の二人が近くにいないことを確認する。
土の中からの探索だとノイズが多くてわかりにくいが、あの二人が遠ざかっていることは間違いない。
安全そうだとわかると、俺は自分たちの上に乗っていた土をどけて外へと出た。
「ふー。なんとかなったな」
「みたいですね」
地中。それも、魔力を多く含んだ魔の森の近くの地中は相当な技量がないと探査するのは無理だ。
俺でも地中からの探査だと相当なノイズが入るから性格に調べることはできない。
今までの攻撃の感じから言って、あの二人に地中の中にいた俺たちを見つけることは不可能だろう。
そして、おそらく、魔の森の近くに住んでいない彼らは魔の森の土が魔力探知を妨害することを知らない。
普通の土だと別に魔力探知の妨害になったりしないからな。
「これで俺たちが死んだとおもってくれたらいいんだけど」
魔力の反応が消えれば相手が死んだと思ってくれるはずだ。
それが自分の魔術に自信のあるものならなおのことだ。
魔術に自信があれば、自分の目よりも探査魔術の結果を信じる。
視界から消える方法はいろいろあるが、魔術的に隠れる方法はあんまりないからな。
「これだけの魔術を受けたんですから、多分大丈夫でしょう。それにしてもすごい威力ですね」
「まあ……、そうだな」
ミーリアは周りを見回す。
木々が薙ぎ倒され、真っ直ぐな道ができている。
まるで飛行機の滑走路みたいだ。
これだけの高威力の魔術は彼女たちはまだ使えない。
俺もこんなに高威力は出す必要もないし、今までやってこなかった。
「でもこの魔術。見た目はすごいけど、防ぐのはそこまで難しくないんだよな」
「そうなんですか?」
「あぁ。この魔術は物理法則を利用した攻撃なんだ。でも、物理法則と魔術では魔術の方が優先される。だから、簡単な魔術の防壁を築けば完全に防げちゃうんだよ」
俺は風の防壁であの二人の魔術を受けることもできた。
彼らの魔術は魔術の『余波』を使った攻撃だ。
つまり、魔術の法則ではなく物理法則によるものだ。
だから、魔術で風の膜を作れば膜のほうが優先されるため、それを突き破って衝撃が届くことはない。
もしかしたら、スイが水弾の中に隠れるとかしても防ぎ切れたかもしれないな。
まあ、きれまなく魔術を使うというのは難しいので、結構な技量がないと少しは衝撃を受けてしまうかもしれないが、怪我をするほどではないだろう。
魔術で防げるにも関わらず、土の中に潜って隠れたのは天誅の二人の探査魔術から逃れるためだった。
この場をさったということはおそらく、死んだと思ってくれたのだろう。
「考えていてもわかりませんね
「それもそうだな。ミーリアの友達を癒すっていう目的も達したし、帰ろーー」
「SHAAAAAA!」
「な、なんですか!?」
「これは、魔物の鳴き声? まさか!」
突然、遠くから魔物の鳴き声が聞こえてきた。
俺は魔の森の方を見ると、天誅の二人の魔術は大きく魔の森を削っていた。
「あいつら!」
「レインどうしたんですか?」
「魔術で魔の森を大きく削りやがった!」
「えぇ!? そんなことしたら」
「あぁ、そんなことをしたら間違いなく」
「「「「「SHAAAAAAA!!!」」」」」
「魔物が出てくるよな」
魔の森からのそりのそりと灰色の大蛇が這い出してきていた。
数はひぃ、ふぅ、みぃ……ちょっと数えるのは難しいな。
人間はバラバラなものの数をかぞえられるのは十やそこらがせいぜいらしいからな。
「こんな傷付け方をしたらそれはいっぱい出てくるよな」
「そういえば、前にレインが言ってましたね。一度に深く切り開きすぎると魔の森はリバウンドするって」
「あぁ」
天誅の二人が放った魔術は魔の森を深く削っていた。
浅く削るようにではなく、深く穿つようにだ。
昔の対魔貴族の研究にどのように魔の森を切り拓けば魔の森がどういう反応をするか調べたものがあった。
その研究で、同じ面積を切り開いたとしても、魔の森は魔の森の表面から深く切り拓かれるほど激しく、そして長い反応を見せると書かれていた。
その研究で一度に五十メートルほど切り開いた研究があった。
その場合は数百の魔物が一ヶ月以上もの長い間絶え間なく溢れてきたそうだ。
その時は一ヶ月で迎撃を諦めたと記載されていた。
結局、切り開いた部分はすべて魔の森に戻り、それどころか、リバウンドでもしたように切り開く前より魔の森が広がってしまったらしい。
この研究の結果、一度削って一ヶ月ほど置くと魔の森の表面が前回削ったあたりまで後退するので、一ヶ月おきに十メートルずつ削っていくのが良いとされていた。
その研究を受けて、神聖ユーフォリアローレシウム神聖人民王国では少しずつ、何度も繰り返して魔の森を開拓する方法が採用されていた。
「これは、百メートル以上いってるよな」
「そうですね」
今、天誅の二人が放った魔術は魔の森のかなり深いところまで傷つけていた。
これだと間違いなく強いリバウンドが起こるだろう。
「さて、どうしたもんかね」
「どうしましょうか?」
俺たちはとりあえず出てくる魔物を退治しながら対応策を考え始めた。
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お読みいただき、ありがとうございます。
次回は6月15日頃に更新予定。
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