秘密を聞こう①
「何を、……いってるんですか?」
「本当は誕生日が気になって落ちこんでたわけじゃないんだろ?」
ミーリアは驚いた表情で俺の方を見る。
その表情を見て、俺は思わず苦笑いをしてしまった。
(違和感を持っていることをそこまで隠していたつもりはなかったんだが)
普段のミーリアであれば俺が誕生日以外の落ち込んでいる原因を探していることに気が付いただろう。
実際、キーリやスイは俺の様子を見てミーリアが誕生日以外に落ち込んでいる原因があるんじゃないかと探り始めていたようだったし。
それにすら気づけないということは、それだけミーリアは弱っていると言うことか。
(……それ以前に、普段のミーリアであればサプライズパーティ自体が成功しないか)
ミーリアは結構周りの視線を気にするほうだ。
コソコソとパーティの準備をしていればすぐに気づいただろう。
……今思うと、あんまりコソコソ出来てなかった気もするし。
危なくバレそうになったのは昨日の一件だけだけど、パーティの料理の材料を普通に倉庫に保管したりしてたしな。
ほんと、よくバレなかったな。
俺がじっとミーリアの方を見ていると、ミーリアは俺の視線から逃れるように俯く。
「……」
「俺には教えられないことか? もしかして、前から隠していたこととも関係があるのか?」
俺のセリフを聞いてミーリアは力なく顔を上げる。
「それも気付いてたんですね」
「そっちはなんとなくわかってただろ?」
「えぇ。うすうすは」
おんなじ家で生活しているんだ。
そうそう隠し事なんてできるわけない。
隠されているほうが協力しない限り。
たとえ本当の家族であってもすべてのことをつまびらかにしているわけじゃない。
だけど、相手が隠していることをわざわざ探ったりはしない。
それは円滑な人間関係を築くために必要なことだ。
ミーリアたちだって、俺の魔術について気づかないふりをしていることは多い。
収納魔術とか、口には出してないけど、遠回しに気付いてると伝えてきてるのはあるけどな。
……いいように使われているわけではないと信じたい。
それに、ミーリアの場合、隠し事をしているのは俺たちのためでもあるんだろうということは想像できた。
それが意見を取りまとめるのが大変なためなのか、心配させたくないためなのか、その辺の理由まではわからなかったが。
それなら、できるだけ協力してやるべきだろう。
多分俺たちのためを思って隠し事をしてるんだろうし。
「たぶん、アリアたちもうすうすは気が付いているだろ」
「……でしょうね」
ミーリアは前々から何か隠し事をしていた。
その内容まではわからなかったが、おそらく、村の外、この国に関することだろうと思っている。
ミーリアはジーゲさんたちと俺たちとの接触を最小限にするように動いているように見えた。
アリアが対人恐怖症になっているっていうにしてもそのやり方は度を越したものがあった。
聞かなかった理由の半分は俺は政治的な問題はあまり得意じゃないので、聞いても大したことができないと思っていたからだけど。
たぶん、みんなもそうだろう。
それに、隠し事があるのはミーリアだけじゃない。
隠してるってほどじゃないけど、みんなに言っていないことは俺にも結構ある。
母親の件とか、転生の件とか。
「もしよかったら、話してくれないか? 俺たちは絶対にミーリアの味方だから」
「……」
話を聞いて、俺に何かできるかはわからない。
でも、何もできなかったとしても秘密を知ってもらっているだけで気持ちは少しは楽になるものだ。
俺も無数に秘密があるから秘密を持った人の気持ちはわからなくはない。
たとえ相手のためであっても、秘密にするというのは結構つらいものだ。
ばれないように常に気を張っていないといけないし。
それがなくなるだけでも気分はずっと楽になる。
それだけでも少しくらいの助けにはなるはずだ。
俺はミーリアを助けたい。
困っているミーリアをこのままにしておくことはできない。
今まで押し付けていた分もできることをしてあげたい。
「少し、長い話になりますが、聞いてもらえますか?」
「あぁ」
ミーリアはうつむいたまま、ポツポツと話し始めた。
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