魔道具を作ろう⑦
「ねえ、レイン。錬成はいつやる?」
「え? 明日にしないか?」
スイと話をしていると、キーリが話しかけてくる。
どうやら、キーリは今日も錬成をするつもりのようだ。
俺は今日は休日だから明日やるつもりだと思っていた。
いやあ、昨日、明日って言ったのは俺だけどさ。
「明日だとみんなに迷惑かけるでしょ? レインに支援魔術をかけてもらった後は動けなくなるんだから」
「……まあ、そうだけどさ。ならなおさら明日やるべきじゃないか?」
たしかに、俺の支援魔術を受けて錬成をした後のキーリはいつも限界って感じだ。
あの後に探索をしたりするのは無理だろう。
だからって休日に錬成をするのもどうかと思う。
もともと休日は休みを取るっていう目的で作ったものだ。
そこで仕事をするのはいかがなものか。
……そういえば、俺もスイと実験の話とかしてたか。
いや、実験は趣味みたいなものか?
うーん。
仕事とプライベートの切り分けって難しいな、
「そうかもしれないけど、今回のは私のわがままみたいなものだから、みんなには迷惑をかけたくないの」
「確かにそうかもしれないけど……」
『恐慌』だけを防ぐ魔道具であれば昨日のうちにできていただろう。
昨日はほとんどの時間が俺の支援魔術になれるための時間に使われていたし。
確かに、『完全耐性』の魔道具を作るのはキーリのわがままと言って仕舞えばそれまでだ。
だが、リノとミーリアのためにやってることだから、わがままというのも違うだろ。
「……キーリ。無理はしないでくださいね」
「心配しないで、ミーリア。それに、今回の件で色々と掴めたこともあるの」
「……そう、ですか」
アリアと話していたミーリアが心配そうに話しかけてくる。
あっちは話の途中だった様で、アリアもキーリのことを心配そうに見ている。
キーリは指輪の錬成で作るものを『完全耐性』にした理由は新しいことに挑戦したくなったからだとみんなに説明していた。
だが、ミーリアにはどうしてキーリがそんなことをしようとし出したかバレてしまったらしい。
ミーリアは「私のためですか?」なんて聞いてくるタイプではないので直接言われてはいないが、まず間違い無いだろう。
「いいなー。キーリねぇばっかりレインに鍛えてもらって」
「いや、俺は何もしてないぞ? 錬成は完全にキーリの方が上手いからな」
リノが不満の声をあげる。
そういえば、最近はリノの魔術とかは見ていない。
必要な魔術はもう教えたし、魔術を使わない探索に関してはもうリノのほうが上だ。
だから、ずっと一緒に作業しているキーリをうらやましく思ったのかもしれない。
だが、俺はもうキーリのことを見ているしかできない。
錬成の準備も手伝えないし。
出来ることは支援魔術をかけることだけだ。
「でも、支援魔術はかけてるんだろ? 俺もレイン兄ちゃんの支援魔術を受けてみたいぞ!」
「私も、受けて、みたい」
「……うーん」
キーリの様子を見ると、今の状況で支援魔術をかけると何もできなくなりそうなのだ。
キーリもかなり朦朧とする意識の中で錬成をしている。
最初数回は錬成を始めることすらできなかった。
今でも、錬成鍋の前から一歩も動けていない。
素材を手の届く位置に置いてなんとか錬成できているのだ。
戦闘なんてできるわけがない。
魔術だってちゃんと使えるか微妙だ。
「……もう少し強くなってからな」
「むー。わかった」
「頑張る」
正直、どこまで魔力量が近づけば俺が支援魔術をかけても大丈夫かはわからない。
俺の方も出力を絞る練習をしておいた方がいいかもしれない。
今までは魔力の出力を絞る練習なんてしたことなかったからな。
俺は不満そうにするリノとスイの頭を撫でる。
「そのかわり、今日はキーリの手伝いが終わったら二人と一緒に遊ぶから」
「「本当!?」」
「本当だ」
リノたちはもう十分に強い。
でも、村の外に出る時はだれかがついて行くことになっている。
俺が来る前からそうだったらしい。
村の外にはどんな危険があるかわからないからな。
魔物以外にも川でおぼれたりとか、高いところから落ちたりとかも考えられる。
だから、誰も都合がつかなければ村の中で過ごすことになる。
畑のおかげで村が広がったとはいえ、彼女たちにとっては狭く感じられるだろう。
最近はみんないろいろと予定があって村の外には行けていないはずだし。
今日もキーリはたぶんこのあとはぐったりしてるだろうし、アリアとミーリアはたぶん話し合いで忙しいだろう。
思う存分遊べば少しは気が晴れるだろう。
「俺はまた湖で釣りがしたいな」
「私、行ってみたいところが、ある」
二人は口々にやりたいことをあげる。
やっぱり二人とも村の外でやりたいことがいっぱいあるらしい。
なんにせよ、二人が楽しそうで何よりだ。
俺が行ったことがないところも候補に挙がってる。
出かける前にアリアにどういう場所か聞いておく必要があるかもしれないな。
「どこにでもついて行くから、キーリと一緒に作業をしている間に決めておいてくれ」
「「わかった」」
俺は話し合いを始める二人を置いてキーリと一緒に工房へと向かった。
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