休日の過ごし方②
「そういえば、二人はあんなところで何してたの?」
「俺たちは雪苺を探しに行こうと思ってたんだ」
「あぁ。そういえば、冬になったらみんなで探しに行こうって話してたわね」
アリアはそういって暗い顔を見せる。
暗い顔をする理由がわからず、俺が首をひねっていると、キーリが俺の耳元でその原因を教えてくれる。
「この話をしてた頃はこの村が無くなるか無くならないかのころだったの。少しでも明るい話をしようとしてそんな話をしてたからそのころのことを思い出したんじゃないかしら」
「あぁ。なるほど」
俺が来るまではこの村は存亡の危機に置かれていたらしいからな。
その時していた話題からその時のことを思い出したのか。
村長という役職があるアリアはほかの四人より強いプレッシャーを受けていたのだろう。
「私も行っていい? 食べてみたいわ。雪苺」
「……あぁ。もちろんいいぞ」
「一緒に行きましょ」
つらい思い出を振り切るように明るくアリアは言う。
俺たちはアリアと一緒に雪苺探しに出かけた。
***
「そういえば、リノはどこに行ったか、アリア知ってる?」
「リノ? あぁ。リノはスイと一緒に湖に釣りに行ったんじゃない? 二人が釣竿を持って出かけるのを見たわ」
村を出たあたりでキーリはアリアにリノたちのことを知っているか質問した。
そういえば、村の中にリノたちがいる気配はなかった。
スイはともかく、リノはどこにいても目立ちそうなのに。
というか、この村の近くに湖なんてあったんだな。
全然知らなかった。
「釣り!? 大丈夫かしらあの子たち」
釣りと聞いて心配になったのか、キーリはそわそわしだす。
今にもリノたちを探しに行きそうだ。
「たぶん大丈夫よ。ミーリアが一緒だったから」
「……そう。なら、たぶん大丈夫ね」
ミーリアが一緒に行ったならよっぽどのことがない限り二人に危険はないだろう。
危険なことをしようとしたら止めてくれるはずだ。
万一、魔の森から魔物が溢れてきたとしても三人いればなんとかなるはずだ。
二人は強いし、ミーリアの支援が加われば魔の森から出てきた魔物程度には後れを取ることはない。
そうはいってもキーリは心配なのか、しきりに湖があるであろう方角を気にしている。
「……どこで雪苺が取れるかわからないし、湖の近くから探し始めてみるか?」
「え?」
「そうね。そうしましょう」
俺の提案にキーリは驚いた顔をしたが、アリアはさっさと肯定して湖のほうに歩き始めてしまう。
アリアもキーリがリノのことを気にしていることに気づいていたのだろう。
彼女も別に鈍感というわけではないから気づいて当然か。
俺はアリアの後を追い、キーリも少し遅れてついてくる。
「……二人とも、ありがとう」
「別に気にすることないよ。湖に行ったら雪苺が取れなくなるわけじゃないんだし」
「そうよ。湖の周りにいっぱいあるかもしれないわ」
俺たち三人はアリアを先頭に湖に向かった。
***
「うぉぉぉぉ! 釣れたぞーー!!」
「今度も、結構、大きい」
「よかったですね」
湖に近づくと、リノたちの楽しそうな話声が聞こえてくる。
どうやら、三人は大いに釣りを楽しんでいるらしい。
「結構釣ったな!」
「今ので、十匹目」
「これ以上は食べられないかもしれませんね」
どうやら、かなり大漁らしい。
六人で食べられない量ってどんだけだ?
いや、今日は昼食も夕食も各自で食べるって話だったから三人で食べ切れない量ってことか。
「あ! レイン兄ちゃーん!」
俺たちが湖の近くまで来ると、俺たちに気付いたリノが全力で近づいてくる。
「兄ちゃん兄ちゃん! 今日はめっちゃたくさん釣ったんだ! 一緒に食べようぜ!」
「お。たくさん釣れたのか! じゃあ、いただこうかな」
「こっちこっち。見てくれ!」
リノに引っ張られるように湖の辺りまで向かう。
湖の近くに子供用プールくらいの生簀を作ってそこに釣った魚を入れているらしい。
「これ全部俺が釣ったんだ!」
「どれどれ? ってでか!」
「でかいだろ! 俺もこんな大きいのは初めて釣った!」
生簀の中にはアマゾンとかにいそうな大きさの魚が10匹泳いでいる。
確かに大きな湖ではあるけど、こんなサイズの魚がいそうな湖じゃないのに。
魔力ってすげー。
それに、まだ午前中なのにもう十匹も釣ったのか。
すごいな。
「おー。かなり釣ったわね」
「これは……食べ切れるかしら」
俺と一緒に生簀を覗いたアリアはひたすら感心している様子だ。
キーリは予想以上の数に頬が引きつっている。
「まあ、無理そうなら干物にでもすればいいだろ。作り方は知ってる」
「……そうね」
キーリは俺の意見を聞いて少し安心したようだ。
干物にすればかなりもつ。
作り方も簡単にではあるがわかっている。
「レイン兄ちゃんとキーリねぇも釣りしに来たのか?」
「俺たちは雪苺を探しにきたんだよ」
「雪苺! いいな! 俺も探したい!」
リノは目をキラキラさせてそういう。
どうやら、雪苺狩りにはリノも加わることになりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます