休日の過ごし方①
「やっぱり仕事してると思ってたよ」
「レイン!? こ、これは……」
工房に行くと、錬成鍋でキーリが知力の上がるブレスレットの作成を行っていた。
今朝、俺が朝起きると寝室には誰もいなかった。
食堂に行くと俺の分の朝食が置かれていた。
やはり、俺の食事の件は気になったらしく、誰かが作っておいてくれたらしい。
わざわざこれを食べないのも違うと思うので、ありがたく朝食をとった。
そして、みんながどこに行ったのか見に行こうと思って最初に覗いたのがこの工房だ。
そこで一人目のキーリを見つけたのはいいが、キーリは『仕事』である特産品(予定)のブレスレットの作成を行っていた。
「休むのも仕事だぞ。ちゃんと休まないと効率も悪いし」
「……わかってはいるんだけど、気になっちゃって」
キーリはそういって錬成鍋の中を覗き込む。
そして、残念そうな顔をする。
どうやら、錬成は失敗したらしい。
これは今止めても目を離すとまた再開しそうだな。
「……俺が来るまでは何をしてたんだ?」
「レインが来る前? 毎日みんなで野草摘みに行ってたわ。魔の森の中ほどいいものは取れないけど、この周りでも野草とかが取れるのよ」
「へー。冬になったらどうするつもりだったんだ?」
「冬でも摘める野草とかがあるらしいからそれを集める予定だったわ。そういえば、雪苺っていう雪の下からとれる野草があって、おいしいらしいからみんなで探しましょうって言ってたけど、いけてないわね」
「じゃあ、探しに行ってみるか? 散歩がてら」
「……わかったわ。一緒に行きましょ」
キーリはあきらめたように錬成鍋の片づけを始める。
よく見ると失敗作のブレスレットがかなりの数置かれている。
相当長いことこの作業をしていたようだ。
一人目でこれということはほかのみんなも仕事してるかもしれないな。
***
「で、アリアはここで何してたんだ?」
「えーっと。春にどのあたりまで畑にするかを測量していました」
村の外に出ると、測量の道具やら杭やらを担いだアリアと遭遇した。
どう見ても遊んでる格好じゃない。
声をかけてみれば、案の定、春を見越した作業だったようだ。
「今日は仕事はしないって約束だったよな?」
「で、でも、今のうちに測量をちゃんとしておけば春に作付けが楽に――」
「明日してください」
「……はい」
アリアは村に荷物を置きに戻る。
俺とキーリはアリアの荷物を運ぶ手伝いをしながら一緒に村に戻った。
「春に向けてしなきゃいけないことってあるのか?」
「そうね。測量して収穫予想を立てて辺境伯様に申請したりとか、いろいろね。その辺をちゃんとしないと、作付け用の種とかもちゃんともらえないし、税が多く取られたりするの」
どうやら、開拓村はいろいろと申請とかが必要らしい。
全然知らなかった。
「結構めんどくさいんだな」
「まあね。この国は今他国と戦争しているから、国費は少しでも多くほしいのよ。第二皇子と第三皇子のどちらが王位を継ぐかで内戦も起きそうだしね」
「そんなことになってるのか。全然知らなかった」
「私も詳しくは知らないわ。でも、辺境伯様に言われたのよ。ちゃんとしておいて弱みは見せないほうがいいって」
この国の情勢とか全然知らないな。
まあ、こんな開拓村にまで情勢が影響することはないからいいか。
「それにしても、その辺も明日話し合ったほうがいいかもな」
「どうして? それは村長の仕事だから私一人でやるわよ」
「まあ、アリア一人でもできるかもしれないけど、書類仕事とか頭を使う作業はスイやキーリのほうが効率よくできると思うぞ? 最近は特に魔力が上がって知力の値に差が出てきてるしな」
魔力の補正はいろいろな所に効いてくる。
知力を中心に上げているスイやキーリは数値上はアリアより頭がいい。
実際は知識とか経験とかで少し変わってくるが、経験の必要ない作業なら知力が高いものにやらせた方が絶対に良い。
「で、でも……」
「五人そろわないと探索できないんだし、意地を張らずにお願いするのがみんなのためよ」
「……わかったわ」
「じゃあ、明日みんなで集まって決めることにするか」
キーリの発言が決め手になり、作業はできるだけ分担することになった。
みんなで話し合いをする時間も定期的にとったほうがいいかもしれないな。
今回みたいに抱えてる仕事がほかにもあるかもしれないし。
そうでなくとも、これが欲しいとか、ここをこうしたいとかみんなで話し合ったほうがいい方向に行きそうだ。
俺はそれもみんなに提案しようと思いながら村の中へと戻った。
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