特産品を作ろう!⑤
「えぇ!? リノ! それほんと! なんで言わなかったのよ」
「アリア、ちょっと抑えて」
アリアがリノに食って掛かろうとする。
アリアの発言にリノがビクッとおびえるように後ずさったので俺はアリアを止める。
アリアの気持ちもわからないではないが、リノも意地悪で黙っていたわけではないだろう。
「リノ。誰もリノを責めないよ。アリアもちょっとカッとなっちゃっただけだ。リノも意地悪で黙ってたわけじゃないだろ?」
「……うん」
「じゃあ、どうしてか教えてほしいな。そうじゃないと、次どうしたらいいのか一緒に考えることも出来ないからさ」
「……」
俺はリノと目線を合わせてできるだけ優しくリノの頭を撫でながら語りかける。
リノが悪い子じゃないのはわかってる。
奥に行けることだって、いじわるで黙ってたわけじゃないはずだ。
だから、ゆっくりと話を聞いてあげた方がいい。
彼女はまだ小さい子供なんだから。
「……怒らない?」
「怒らない、怒らない」
しばらく黙っていたリノは、ゆっくりと話し出す。
「……俺が隠し部屋を見つけたから、レインが呪われて。また、隠し部屋を見つけたら……」
「……そっか。俺の心配をしてくれてたんだな」
リノはコクリとうなずく。
どうやら、リノは俺の心配をしてくれていたらしい。
そういえば、行きはかなりテンションが高かったのに帰りは静かだったな。
「ごめんね! リノ! 気付いてあげられなくてごめんね」
「キーリねぇ〜」
キーリはリノを抱きしめる。
キーリもあの後色々と大変だったし、俺も呪いがおもてに出てきてそれどころじゃなかった。
その上、スイが魔導書を手に入れてみんなスイの方ばかりを気にしてリノにまで気が回っていなかったのだ。
「あれは俺の不手際で、リノに責任はないよ。実害はなかったし」
「でも、でも〜……」
実際、俺が気を抜いていなければ防げたレベルのことだ。
そんなことを言っても優しいリノは納得しないだろう。
俺はリノが泣き止むまでずっとリノの頭を撫で続けた。
***
「俺たちはちょっと焦りすぎてたのかもしれないな」
「焦りすぎてたってどういうこと?」
今日は午後の探索はやめることにした。
そして、みんなで昼食を食べた後食堂に集まってはなしあいをしていた。
今日はちゃんと話し合う方がいいということになったのだ。
「魔術の修行をして、日に三回も魔の森の探索をして、魔道具作りをして……。忙しなく動き続けてるだろ?」
「……確かにそうですね」
いろいろなことができるようになったので、いろいろなことを始めて、みんなが忙しなく動いていた。
そのせいで、いろいろなことを見落としてしまっていたかもしれない。
「で、でも、全部重要なことよ? 魔術の修行も、魔道具作りも。どれかを止める事はできないわ」
「そうだな……」
確かに、どれもみんなのために必要な事だ。
というか、全てが繋がっているので、どれかをやめてしまうと、他のものにも影響が出る。
「……そうだ。休日を作るっていうのはどうだ?」
「「「「「休日?」」」」」
「何もしない日を作るんだ。魔術の修行は毎日した方がいいけど、何日かに一回しないくらいなら大丈夫だと思う。もし気になるなら、その日は自主練ということにしてもいい。とにかく、数日おきに自由にできる日を作るんだ」
地球では神様が六日間かけて世界を作って七日目に休んだことから七日に一度休みを取る。
この制度は世界中で見られた。
日本では労働基準法で14日以上連続で働くことが禁止されてたくらいだ。
というか、俺は対魔貴族だったからなかったけど、一般人は週に2〜3日は休んでたはずだ。
俺は対魔貴族だからなかったけど……。
いや、今昔のことを考えるのはよそう。
「とりあえず、7日に1日何もしない日を作ろう。その日は村のために働くことは禁止。食事も各自自由にとって、完全に自由行動っていうのはどうだ?」
「食事は各自って、レインはどうするつもりなの? 料理できないのに」
「魔の森に入って食べられるものを探して食べるよ。ここに来る前はずっとそうしてたんだから余裕だよ。最悪、一日くらい食事をとらなかったからといって死ぬわけじゃないし」
「……ご飯食べたかったら言ってね。準備するから。一人分も二人分も変わらないわ」
「……わかった。何か食べたくなったらいうよ」
まあ、この村から出るわけにはいかないし、
俺の昼食の件をアリアとキーリにめちゃくちゃ心配されたが、おおむね皆の合意は取れた。
「じゃあ、とりあえず、明日を休日にしよう。仕事は禁止だから。やってるのを見つけたら止めるからな」
「わかったわ」
こうして、開拓村に休日制度が導入されることになった。
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