第9話 余白すぎるオトコ

大吾の余白部分、

それはストレスを打ち消すための

快楽なのか。

文章を書く楽しみや映画を観るひとときなど、

大吾は祥子に与えてくれた。

祥子はさほどストレスを感じず

生きているので、

創作や鑑賞に時間を割くのはたやすかった。


大吾は、

熱心に余白の時を埋めているかのよう。

筆の進みも悪いといい、

最近は映画の話も出ない。

何はともあれ、時間ができると

祥子へ電話をかけてくるようにもなった。

困らない、大好きだし面白い話だから。


ただ最近はよく泣いている声が聞かれ

自信を失っている様子も見られたのが、

気がかりだった。


落とし物も多く、財布やかぎをなくし

なくしたことすらわからない様子だった。

注意散漫。という言葉がぴったりだろう。


レンタカーが配車不可で外海への

ドライブは中止、ちょうど鍵が見つかるまで

オートロックの家からは出られなかった。


今回はのんびり祥子と過ごすことにした。

たくさん話して、たくさん結ばれて。

大吾を受け止めるほかなかった。


少し、様子も変わったようだった。

別れの時、やはりまた長崎に来ると

約束した。






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