第8話 大吾の告白



死にたい。

最近よく耳にする。

この言葉の裏は会ってみないとわからない。


バスを降りマンションに向かい再会を果たす。

今回は恋人として受け入れてくれた。


その言葉の真相を受けた。

深い。

祥子だけではどうにもならないし

大吾の努力でなんとかなっていたらこんな言葉はない。


導きたい。


ただそれだけが祥子の欲求だった。

大吾は余白の男ではなくなっていた。

精神的にも肉体的にも金銭的にも

詰まりすぎていた。


祥子は後悔した。

以前、先輩のリトリートメントを受けた際、

自分が楽になるため

大吾を一度手放したこと。

あれが引き金になり、

いま大吾は苦しんでいる。


負けず嫌いの大吾だから、

祥子を見返そうと無理な将来に挑んだのだ

と推測する。

せめて一滴のエッセンシャルオイルになり、

彼の鼻から体全身に豊かな余白を

もう一度つくってあげたい。


そうするためにどうしていいものか。

頑張れと励ますのもそうではないし、

褒めたところで充分がんばっている。

大吾は利他の精神でしかない男だ。

絶対に心配かけるまいと、

愛する全てに笑顔絶やさず振る舞っている。

決して人を裏切らないし、

裏切れないオトコだ。


もしかしたら今まで祥子に余白を

見せていたのも、影ならぬ努力で自分を

殺していたのかもしれない。

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