第7話 西坂の丘

大吾が急遽、仕事になった。

1時間ほど長崎駅で過ごすことにした。

駅から徒歩10分以内にある西坂公園。

小高い丘にあり日本二十六聖人殉教地記念館

と聖フィリッポ教会が並列している。

坂の上ですぐ行けた。

ガイドブックと相談して気になった場所。

秀吉の時代、

禁教令により京阪から処刑のために

この地を目指しやってきた6人の外国人神父

と20信徒たち。彫刻として彼らは

天を仰いでいる。


処刑はむごい処刑方法だったようだ。

神に仕えるという理由だけで

そこまでの苦行ができたものなのかと

息を飲む。

言葉にならない場所。思わず合唱した。


大好きな大吾に会うためかもめに揺られているのとは訳が違う。


気を取り直して聖フィリッポ教会へ

足を伸ばした。

殉教者のひとりと関わりのある教会。

まず外観が近代的だ。

ガウディーに影響を受けた建築家が印象的な


双塔とその教会を造ったようだった。

外の造りと全く違う厳かさ。

息を潜めて礼拝する。


そこにはやはりマリア様はいた。キリストを

抱いて、なんとも言えない慈悲深い目で

うつむいている。


また窓の外には福済寺の巨大な観音菩薩がすっくと建つ。

被爆者たちの御霊を慈愛で包んでいた。


殉教地記念館に入ってみる、

奥に進むにつれステンドグラスが目に入る。

細川玉子、ガラシャだ。

大阪で命を絶った彼女もまた、

この地で哀悼されていた。


この3人に共通なのは

何ひとつ恨みごとがないこと、

愛をもっていること、許容していること。

そんなオンナはいるのだろうか。



マリアのような人

菩薩のような人

ガラシャのような人


往々にして愛を持って許容し恨み言ひとつ

言わない。果たしてなれるのであろうか。

だんだんと迷宮に陥っていく。


ただ祥子は長崎にきたのは決して

間違っていないと確信している。

大吾と出会い結ばれることも必ずそこに

意味がある。



そこだけは明白だった。



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