第8話 ゲーム開始 4日目



4日目(木曜日)


今朝起きたらすっかり元気になり熱も下がったので今日から学校に行く。

なんだかいつもなら、学校に行きたくなくてため息ばかりついていたが、今日は不思議とため息どころか学校に行きたくないと思わない。

まぁ行きたいとも思わないが…。

多分ここ数日の出来事があったからだろうと思う。

高橋くんはこの間のゲームで、私と当たってしまったから仕方なく恋人のふり?をしてくれているのかもしれない。

でも不思議なのは加藤くんだ。

この間どうして私を抱きしめたりなんてしたんだろうってずっと考えていた。

でも何の答えも出なければ、喜んでいいのか、もしかしたら何か違うゲームをしていてそれの罰ゲームで仕方なく指示された通り行っただけだったのか、何が正解なのか分からず悩んでいた。

でも加藤くんイケメンだし頭もいいから、こんな私になんかゲームで指示とかされない限りあんなことしてくるはずがない。

それに加藤くんクラスで一番モテるし、クラスだけでなくもしかしたら学年でも一番モテているのかもしれない。

だからそんなモテる人が私なんか相手にするわけが無い。

考えすぎ、考えすぎと頭を振り忘れることにした。


支度を終え、学校に行く道をいつも通りに歩いた。

いつもは下を向いて歩くので、珍しく顔を上げて歩くといつもと同じ道なのにこんなに見え方が違うんだとちょっと感動してしまった。

学校に着いて軽く深呼吸をして教室のドアを開ける。

特に今までと変わりなく挨拶があるわけでもなければ、自分もすることはない。

今日は武田くんがいつも言う「根暗ちゃんが来たぞ」という声が聞こえなければ、高橋くんの舌打ちもなかった。

昨日休んだので、何か言われるんじゃないかと思い少し怖かったが言われることは無く安心して自分の席まで行った。

特に何も無く授業が始まった。

ノートに先生が書いている事や大事な事を書き写していると、突然隣から何かが飛んできた。

一瞬驚いたが、飛んできた物を見るとそこには二枚折りになっている紙のようだった。

その紙を取り隣を見ると、高橋くんがこちらを見ていて手で『読め』と合図をしていた。

私は高橋くんの合図の通りその紙を見てみることにした。

ゆっくりその紙を開く。

『風邪は大丈夫か?ちゃんとごはん食べたか?』

そう紙には書いてあった。

私はその紙を見て高橋くんが私の事を心配してくれていることに驚いた。

あの高橋くんが私の事を心配してくれる時が来ることなんてありえないと思っていたので、夢でも見ているんじゃないかと思ってしまう。

私はメモ帳をいつも持ち歩いているので、そのメモ帳から一枚紙を取り昨日のお礼の言葉と、さっきの返事を紙に書いた。

先生が見ていないタイミングで隣の高橋くんにその紙を渡した。

たったそれだけの事でもとても緊張したし、自分でいうのもなんだが凄いことだと思う。

するとまた紙が隣から飛んできた。

今度はその紙をすぐ開いて読んでみた。

『バーカ なら良かったよ』

その紙に書かれているのは一言だったか凄く嬉しくて少し泣きそうになった。

私はその紙を大事にとっておこうと思い自分の手帳に挟んだ。


この紙が、今から無くなってしまうことを私はまだ知らないでいた───────




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