第7話 俺の話 (高橋優斗 視点)



急で申し訳ないが俺の話を聞いてくれ。


俺はこの間のくじ引きゲームをしてからルールだからと仕方なくやる事にした。

でも、ゲーム初日目の朝は俺がなんでこんな奴と一週間も付き合わないといけないんだよと思っていた。

だから週末はずっとなんで俺がと思いイライラしていた。

だがくじを引いたのは自分であり、嫌なのは俺だけじゃなく多分あいつもだろうなと思った。

それを考えると少し気が引けるが、だからと言って嫌なものは嫌だった。

武田の「一週間だけだからさ、すぐ終わるよ」と言う言葉にしょうがないと思い引き受けた。



俺はサッカー部に所属していて、ゲーム初日目は部活が終わったあと自主練をしたので少し帰りが遅くなってしまっていた。

帰ろうと思うと玄関のところに佐々木が立っていた。

少し話しかけてみようと思い話しかけてみた。

「おい、お前なんでこんな遅くまで学校にいるんだよ 」

すると一瞬ビクッとされたが応えてくれた。

返事は全部敬語で、何でそんなに敬語なんだよと思ったが話を聞くと、図書室で小説を読んでいたかららしい。

俺は小説を読むのが苦手だから、わざわざ図書室まで行って小説を読むこと自体が俺には考えられない。

だからいつも読んでいるのか尋ねると、佐々木は首を縦に振った。

佐々木は緊張している面持ちだったのと少し怯えた様子が見えたので今日は帰ることにした。



別に気に入った訳ではない。ただ一応付き合っている設定だから仕方なくだ。

二日目、いつものように武田と加藤とたわいもない話をしていた。

すると「ガラッ」と教室のドアが開く音が聞こえドアの方を見ると、佐々木が立っていた。

いつものように武田が「うわっ!根暗ちゃんがきたぞ」と言う言葉に俺は今回は反応しなかった。

そしたらみんなから凄い視線が集まった。

みんなだけではなく佐々木も驚いている表情で俺を見ていた。

すると武田から「えっ!高橋どうしたんだよ!」と言われたが俺はわざと「ん?何がだ?」と誤魔化した。

しかし、いつも舌打ちをしていたのでツッコまれないわけがない。

「何がだ?じゃねぇよ。いつも舌打ちしてただろう」と案の定言われた。

俺は武田に「別にどっちでもいいだろう。してもしなくても」と思ったことを話した。

別に今日はしなくてもいいと思ったからしないだけで、別に強制じゃないしいいんじゃないのかと思う。

だが俺はそう話すと周りも驚いていたし、加藤も何も言わず驚いてる様子だった。

舌打ちを一度しないだけでこんなに驚かれると思わなかったので、どれだけ自分が毎日習慣になっていたのか思い知る。



次の日佐々木は休んだ。

どれだけいじめても休まなかったあいつが休んだので正直少し驚いた。

そして今日はなんだか珍しく加藤がいつもと様子がおかしな気がした。

「なぁ加藤なんか今日お前いつもと様子が違うように見えるが何かあったのか?」

俺は気になったので加藤に直接聞いてみた。

「いや、別に何もないよ。ただちょっと考えごとをしてただけだよ。」

加藤はそう話すので、俺はこれ以上特に深くは聞かなかった。

授業が終わり、担任の先生からみんなプリントを渡された。

今日佐々木が休みなので、先生が誰か佐々木の家に持って行ってくれる人いないかと聞いていたので、別に通り道だし遠くないなと思っていたので手を挙げた。

すると、先生も「た、高橋持って行ってくれるのか」と少し動揺していた。

みんなもこの間同様に驚いていた。

先生が佐々木の分を封筒に入れて俺に頼むぞと言われ渡された。

今日は部活も休みだったのでそのまま真っ直ぐ佐々木の家に向かった。

佐々木の家は、俺の家の通りにあるので知っている。

「ここだな」

佐々木の家の前まで着いて呼び鈴を鳴らす。

誰も出てきそうもなかったので、もう一度だけ鳴らした。

そしたら少し経ってから「ガチャ」と玄関のドアが開き佐々木が出てきた。

佐々木は俺が居ることに驚いている様子だったが、俺も佐々木のパジャマ姿など見たことなかったので少し動揺してしまった。

「だ、大丈夫か?風邪で休みって先生が言ってたから、その、プ、プリントを渡しにきた。ただプリントを渡しに来ただけだからな。」

そう言ってプリントを渡すと佐々木は敬語でお礼を言ってきた。

どうしていつも敬語なんだよ…。

よく見ると佐々木の顔が赤かったので一応大丈夫かと聞いてみた。

すると佐々木の身体がフラッとして倒れそうになったので支えると「大丈夫です」と言われたが、立てそうになかったので俺は佐々木を抱き抱えた。

思っていたより軽くてちゃんとごはん食べてるのかよと思いながら歩き出した。

部屋の場所を聞いてベッドに運んでやった。

ごはんは食べたか聞くと、飲み物だけと言ったのでしょうがなくお粥でも作ってやろうと思い台所を借りた。

料理は家でまたに作るのでカンタンな物なら作れる。

作っている時、俺はふと我に帰って何をやっているんだ!?と思い急に今の状況に驚きと何故だか恥ずかしさを感じ、我になんて帰りたくなかったと思ってしまった。

そんな事を考えているとお粥が出来た。

俺はそのお粥を佐々木に持っていき「簡単な物しか作れないけど、これでも食って寝てろ」といい俺は早々と佐々木の家を出た。

帰り道、俺はさっき起きたことを思い出し顔が熱くなったのを感じた。

そして何故だか俺の胸がキュッとなった。


もしかしてこれってこ、こ、恋っていうやつか?

俺の話を聞いてくれてありがとう。










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る