第2話 くじ引きゲーム
「なぁ!ゲームしようぜ」
いつも誰かの声で始まるこのゲーム。
私はこのゲームが嫌いだ。誰が考えたか分かんないけどこんなゲームしたくない。
そしてなんで私も参加しなければいけないのかと毎回思う。
そのゲームというのは、クラス全員の名前を一枚ずつ紙に書き、女子はそれを女子用の箱、男子は男子用の箱の中に入れる。
毎回引く人が変わり、全員が引けるように出席番号順に引く。その箱から一枚ずつ紙を引く。
その紙に書かれている男女が『一週間付き合わなければいけない』というゲームだ。
恋人がいる人は強制じゃない。なんてルールもあるけど多分このクラスに恋人がいる人は、居ないんじゃないかと思う。多分だけど…。
今までこのゲームをしていい感じまでなった人はいるんだと思う。
誰とも話していないと周りが話している声が聞こえてくるからなんとなく分かる。
そして今日引く人が私の隣に座っている高橋くんだ。
自分だと気付いたようで「待って!今日俺かよ!」と驚いていた。
その言葉に武田くんが続けて言った。
「高橋お願い!由紀ちゃんと俺を引いて!!」
「いやいや頼まれても困るだろう」
と加藤くんがフォローしていた。
周りのみんなもザワザワしていて、「あの子となれますように」と祈ってる人もいれば「○○くんとだったらどうしよう」とキャッキャしてる人もいる。
中には「根暗ちゃんと当たったらウケるね」と言う人もいて、私だってやりたくてやってる訳じゃないのに…と思う。
最悪と言いながら高橋くんが教卓の前に立ち、男子用の箱に手を入れた。みんな静かに待っている様子だ。
一枚引いて、くだらないなぁと言わんばかりの表情で紙を開いた。
紙に書かれている名前を見て一瞬動きが止まった。
みんなが誰?誰?とザワザワしだして、武田くんが紙を取り上げる。
高橋くんは「ちょ、おい!ちょっと待てよ」と焦っていた。
その紙に書かれていた名前を武田くんは見て一瞬驚いた様子だったがすぐ「うわっ!マジか!高橋じゃん」と言った。
加藤くんはその様子を見てクスッと笑っているようだった。
みんなはというと「おぉー!」だったり「わっ!わっ!高橋くんだって!」と喜んでる人もいた。中には「俺じゃなかった〜」と嘆いてる人もいた。
私はというと心の中で「どうか神様私に当たりませんように」と祈っていた。
高橋くんが女子用の箱に手を入れた。
その様子を近くで武田くんが見ていた。
「なぁなぁ誰だろうな」と高橋くんにワクワクしながら話しかけていた。
高橋くんはゆっくりと女子用の箱から手を取り出した。
その紙を緊張している面持ちで開いてる様に見えたのは私だけじゃないようで、みんな静かに待っていた。
高橋くんはその紙に書かれている名前を見てギョ
としたのを私含めみんな見逃していなかった。
なんだかその様子を見て私は無意識に息をのんだ。
「誰?誰?」と話し声が聞こえ始め武田くんが高橋くんに「おい、誰だったんだよ」と聞いた。
なかなか言わない高橋くんに痺れを切らした武田くんが紙を奪った。
「はっ?ウソだろ。えっ、マジ?」
武田くんが動揺している様子だった。
みんながその様子を見て、もっと気になったらしくザワザワしだした。
武田くんが小さめな声で「佐々木」と言った。
ザワザワしていた教室もその言葉で一瞬にして凍りついた。
私は自分の苗字が聞こえた瞬間「嘘だよね」と思いながらも頭の中が真っ白になった。
「まぁ、席に戻りなよ」
加藤くんが空気を読んでそう言った。
その言葉で緊張の糸が切れたようでみんないつものような雰囲気に戻った。
だが高橋くんが自分の席に戻る時私は怖くて下を向いた。そしたら横からいつもより大きな音で舌打ちされた。
しかし、私はまだ気づいていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます