その者、神を名乗る

しばた じゅん

第1話

 

 序盤から首位争いを続けたサッカーJ2リーグ新潟キグナスは

7月頃から不調にあえぎ目標たる1部昇格から徐々に遠ざかりつつあった。

 薄暗い部屋の中でテレビの画面越しにチームの敗北を見届けた一人の男がい

た。

「だから言ったんだ!この、この俺が作った最強メンバーを出さなかったのが

悪いんだ。無能監督め!クズフロントめ!!お客様は神様なことを忘れやがっ

て。」

悔しさのあまりか物言わぬテレビにビールの空き缶を投げつける

「・・・お客様は神様なんだよ!奴らにゃ解んねぇのか!!」

 

新潟キグナスの練習場に併設されたクラブハウス内で数人の男性が会議を行っ

ていた。テーブルの上には他クラブのユニホームをまとった選手の写真と

資料らしき書類が詰まれていた

「ビアシオン監督、問題なしです。彼のエージェントから了解を得ました。

あさってには合流します。」

「ご苦労様。完全に満足とはいえないが私の要求に答えてくれて感謝する」

監督と呼ばれた初老の男性が通訳を介して椅子に座ったまま軽く頭を下げ答え

る。

「しかし、最近のキグナス元気ないですね。強化担当としては申し訳なく思い

ます。責任の一端は私にもありますから。」

「・・・シノザワ、君が悩むことじゃない。

大丈夫だよ、今はギアのかみ合わせが悪いだけだ。

何せ私の実家は機械工だからね、調整は心得ているよ。」

監督と呼ばれた男性は肩をすくめてニヤリと笑う。

「ではこれで失礼します、週末の勝利をお祈りします

「任せてくれ。」

監督は強化担当にサムアップサインを送り答える。

 強化担当はそのままホームスタジアム内にあるチームの本社へ向かう

そこで執行役員との打ち合わせが行われる為である。

オフィス内に入ると女性スタッフから声をかけられる

「篠沢部長、これ見てください。」

事務机にはA4の紙が置かれていた

「ラブレターっぽく無いなぁ。第一に俺には妻も子供もいる。」

「もぉ・・・ウチの公式アドレスに送られてきた要望というか」

その紙を読み始めた部長と呼ばれた強化担当が答える。

「・・・よくこんな無理難題を恥ずかしくも無く書けるな

ある意味感心するよ」

「で、お伺いしますけど、仮に要求に応じたらどうなります?」

女性スタッフが質問する。

「ヨーロッパ3大リーグの有名どころ即時獲得

知れ渡っている市場価格を合計すると・・・」

「すると?」

「当社5年分の強化費が必要となる。」

「そんな無茶な!」

「だろ?どっかのサッカーシミュレーションゲームと

ごっちゃになってるんだな。イライラが貯まっているのは理解するがね。」

そんな時、オフィスの隅っこでなにか倒れたような衝撃音がする

別のスタッフが照明を替えようと脚立に上ろうとして転倒したのだった。

「痛って~」

強化部長が駆け寄り、スタッフから蛍光灯を受け取りあっさり交換する。

「弱いなぁ。脚立も満足に上れないでよくキグナスの社員が務まるな」

腰をさすりながらスタッフが申し訳なさそうに強化部長の方に頭を下げる

「・・・電球替える位に編成が楽な仕事なら誰も苦労せんわい。」

脚立を畳みつつ強化部長が独りごちる


 週末のホームゲーム、新潟キグナスは久しぶりの勝利を挙げる

ただ、内容に関しては事故のようなペナルティーキックでの1点でどうにか凌

いだ程度の好調時に比べると内容的には凡戦と言うべき試合であった。

翌日、チームの本社に一本の電話がかかる

「おい!強化部長に代われ!!」

電話の主は恫喝気味な声で強化部長との会話を要求する

「・・・おりません。」

チームが不調になればそういうクレーマーと呼ぶべき連中からの電話など日常

茶飯事なスタッフにとっては困るほどのことではなく軽くあしらう。

「貴様ら、俺の要求にいつになったら応じるんだ?!」

「要求とおっしゃいましても。」

「この俺が以前送ったメールを読んでないのか?”お客様は神様”だよなぁ?

お前らに幾ら金突っ込んでると思ってんだ?何とかしろや、あ?!

・・・お前じゃ話になんねぇよ!居留守使ってんだろ?代われや、あ?」

「いないのにどう応対しろと?」

すかさず、近くにいたスタッフが自分の指でバツを作って関わるな的

合図を送る。

「居留守など使ってはおりません。ご用件は確かに承りました。こちらも

誠心誠意努力して参りますので。」

「お前ら、サポをなめんなや。俺はそこいらのにわか共とは違うぞ

言うこと聞かなきゃいつか痛い目に遭うぞ!」

「承知いたしました。」

と一言だけ答えほぼ一方的に電話を切る。

「会話のログと電話番号は?」

「取りました、ご心配なく。」

「そういうのまともに相手しなくて良いから。」

「そうなんですけどぉ」

「まぁ、少しは黙るだろうよ。これを発表すればな」

来期新人選手との最終交渉のため地元を発った強化部長が渡した新加入選手の

公式リリースを見せる。

「そうですねぇ」

すぐさま公式メールサービスの送信準備に取りかかる。

とある工場の駐車場、車の中でスマートフォンを見つめる男の姿があった。

(篠沢の野郎、こんな程度で勝ったつもりか?にわか共もキャァキャァ喜びや

がって!やっぱ真のサポの恐ろしさを無能共に教えてやる必要があるな。)

何か思い詰めた表情で自分の車を急発進させる。

 

昇格圏内の2チームが取りこぼし、苦手とするアウェイにて

勝利することにより昇格圏へ2ポイント差まで詰めることに成功した

新潟キグナス。一気に重苦しいムードが振り払われた感覚が

チーム全体を包む。

そんな本社事務所に一本の電話がかかる。

「大橋社長、お電話です。」

営業スタッフとの会議を終えたクラブ社長が呼び止められる

「なんか抗議の類いか?!適当にあしらっておいて。」

「いえ、警察です。県警のサイバー犯罪対策課です」

「おいおい、なんだそれ。繋いで」

電話を替わった社長は警察からの電話に驚く。

「爆破・・・爆破予告?!」

「その通りです。SNSや県内のあらゆるサイトの掲示板にお宅様の関連施設

を次のホームゲームで爆破すると書き込みがあったと通報がありまして

まぁ取るに足らないイタズラの類いとは存じますが、一応警備対象に。」

「”マル対”ということですか?」

「えぇ・・・。あと、なにか恨みを買われているようなことはございません

か?」

「まぁ、それこそ怒りにまかせた暴力的抗議電話やメールは多少にありますが

 それこそイタズラの類いなようなもんです。」

「はぁ・・・まぁ何事も無いことを祈りますがご注意を。」

「解りました。」

電話を切った社長が振り向きざま社員に声をかける

「おい、先週だか妙な電話かけてきたのいただろ?すぐに電話をかけて!

 サポーターを疑いたくはないが事件があれば大変だ。」

電話機に残された電話番号からすぐに発信する。

「・・・どうした?」

「電話番号が代わったみたいで繋がりません!」

 週末のホームゲーム3日前、爆破予告があったことがクラブ公式から

発表され、試合開始時刻が一時間繰り下がった。無論、警察による捜索の

為である。

ホームスタジアムの管理事務所に詰めていた警察関係者の元に異常なしの報告

がスタジアム各所より報告が入る。

「これで全部です。」

安堵の表情を浮かべるチーム関係者。すると、現場で指揮を執っていた警察官

が尋ねる

「大橋社長、日本サッカーの観客はおとなしいものと認識しておりますが?」

「これが全てと曲解していただくのはご勘弁願いたい。確かに今現状は

目標からは遠ざかりつつある。ですがね、何もせずダラダラとしているわけで

はない。彼らは勝利することが仕事だ、結果がどうあれどっかの愉快犯に文句

を言われる筋合いはないのですよ。」

「御高説はいただきました。ただ、現に事件は起きているのです。どうか警戒

を緩ますことが無いようにお願いします。」

 試合前の混乱の影響か、試合は3戦ぶりの敗戦に終わる。

チームのロッカールームを引き上げる監督を社長が呼び止める。

「ビアシオン監督、本当に済まない。君にもっと凄い選手を預けたかった

が。」

監督の目前で深々と頭を下げる。

「そんなことはない。君の所のシノザワもそう言ったが悪いのは私だよ。

君らが責任を被ることはない。

なぁに、うまくやるよ。現にトップとは6ポイント差だ、不可能じゃない。」

通訳を介しても解るくらい彼の口調に強い自信を感じ取った

「だがね、少々日本人はいたずらが過ぎるな。」

ニヤリと笑い社長に握手を求める。

こぼれそうになる涙をこらえその手を握り返す。

 

悪質なイタズラのニュースは瞬く間に県内はおろか全国へと広がる。

翌朝自宅内でテレビのニュース番組を渋い顔で眺める大橋の姿があった。

(悪いことをしているんじゃないんだが、自分が悪いように見えるな)

出勤の時間になり愛車の元へ向かうと、車のタイヤが何か鋭利な刃物で

切りつけられて4輪ともパンクしていた。

驚きと恐怖のあまりのけぞる大橋はすぐさま警察に連絡する。

「この物騒な世の中で外で駐車していて、防犯カメラを設置しなかった

私も悪いのですが。」

「まぁ、厳しい言い方になりますがそうですとしか申し上げられませんな。」

手短に調査を終え警察官が引き上げる

「あ、そうそう。つい先だってのイタズラとつながるかもしれませんね

もう聞き飽きたかと思いますがくれぐれも警戒だけは厳重に。」

「・・・ご指摘感謝します。」

 路線バスで社に向かうと連絡したつもりであったが、社員が迎えに来た。

「社長の自宅近くに通りかかったもんで。」

「そっか、頼むわ」

助手席に乗り込んだ大橋に社員が驚く

「後ろでもいいのですよ?」

「後部座席じゃ君が運転手みたいだ。そういうのは好きじゃない。」

車は会社へ向け走り出す

「原、専務になって何年目だっけ?」

「2部に落ちた年ですから、3年目ですかね。」

「来年、お前社長をやってみるか?」

「はぁ?!何を藪から棒に!」

「サポーター連中からはお前さんの方が人気がある、俺なんか

2部にたたき落とした無能野郎らしいからなぁ。」

「いきなり返答しろってのも無茶っすよ。」

「・・・まぁ話半分だ。」

「でも、無能扱いされようともあんな悪夢からここまで

チームを押し上げたのも大橋社長、貴方のご尽力ですよ。

その事は凄く尊敬します。」

「どうかねぇ・・・」

車は何事も無く本社へたどり着く。


 サポーターの中には応援を取り仕切るグループが存在する。

その名も”ホワイトロック”の中心メンバーが居酒屋の個室に集まっていた。

リーダーらしき男性が切り出す

「大橋社長の車が壊されたってよ。」

「なんで?」

「知るか、壊した奴に聞いてこいよ。」

「で、まさかうちらが疑われていると?」

「そんなとこ。」

「大橋っちには悪いが、バチが当たったとしか言えんな。あいつが社長になっ

てからこっち良いこと無しだ、正直ざまぁみろだわ。」

「よせよ、口が過ぎる。」 

「でな、うちらのアンチが面白がってホワイトロックだとお巡りにチクったら

しい。」

「どこのバカだよ?!」

リーダーの男は生ビールのジョッキを一気飲みし空のジョッキをたたき付ける

かのようにテーブルに置く。

「いきなりどした?」

「俺らさぁ、何があっても手は出さないって誓ったよな!」

「そりゃそうよ。ウチらは半グレでもチンピラでもない。昔このチームを

仕切っていた人たちからず~っとそれ守ってきた。疑われるなんてとんでもな

い!」

「・・・あ、なんか思い出した。」

「何を?」

「6年前お巡りに御用になったのいたよな。」

「いたな。」

「運営ボランティアと警備員ぶん殴って今の社長につかみかかって警察に押さ

え込まれたの。」

「そいつがやったとか?!」

「証拠は無いけど、こないだの爆破予告とか。」

テーブルを中心に互いの顔を覗くメンバー

「一応、大橋さんには連絡してみる。」

「まずはそっからだな。」

 

「6年前のあれか、そんなこともあったなぁ。」

「大橋さん、そんなのんきな。実際事件があったんですし」

「私もね、再会したのは最近なんだが彼も”丸くなった”もんだよ。

それに、犯人捜しは警察の仕事だ。サポーターやクラブの仕事じゃない」

「しかしですよ、ほったらかしにしたら・・・」

「そんなに疑うなら住所を教えるから一度会ってみるといい、驚くよ。」

自動車にセットされたナビゲーションが目的地への到着を知らせる。

(お寺さんだよ・・・な?どういうことだ?)

サポーターグループ、ホワイトロックのリーダーは人里離れた

お寺の山門前にいた。

住職の案内で境内に入ると黙々と作務衣を着て竹箒で掃除をする

若い僧侶がいた

「竹下さんですよ・・・ね?」

「そうだよ。いまちょいとへんな別名もついているけどね。」

少し笑みを浮かべながら答える。

境内にある切り株に腰掛けて僧侶が切り出す。

「永久出入り禁止男に何の用だい?」

「実はキグナスがらみで不穏なことが。」

「爆破予告?俺も知ってる。」

「それだけじゃ無くてキグナスの現社長の車が壊されたらしくて。」

「疑ってんだ?」

渋い顔をしてうなずくリーダー。

「見ての通り、いまは坊主。そんなことしたら仏のバチがあたらぁ」

丸めた頭をさすりながら笑う。

「そういうのはさ、警察に任せりゃいいの。もう動いてるべ。」

「すいません・・・で、なんでいきなり坊主なんですか?」

「6年前な、自分の処分が決まったとこで少し自分って何よ?と考えてな。

 般若心経、あれず~っとやってたらトリップというのか?仏に目覚めてな 

で、親戚がこの寺の住職やっていて後継を探していて、

出家して最近まで福井の方で修行して今がある・・・こんな感じか?」

「ぶっ飛びすぎですね。」

「こうでもしなきゃ罪滅ぼしにならんよ。いや、こんな程度じゃ

贖罪にもならんな・・・俺はサポ全員の心に傷を負わせたも

同然だからなぁ。」

若い僧侶は立ち上がり掃除を再開する。

「今のホワイトロックが何を目指しているか知らないが、自分がゴール裏を

仕切ってると自負するなら自分の周りのみならずスタジアムにいる全てのサポ

の責任を自分が負う位の覚悟を持って行動するこったな

・・・ま、自分の行動に責任も覚悟も無かったアホがここにいるけどな。」

リーダーは黙って頭を下げその場を去って行った。

 その頃、大橋社長宅の固定電話が鳴る

(非通知着信?そういえば非通知拒否にセットしてなかったな。)

訝りながら受話器を取る。

「やぁ無能低脳の大橋さんかい?」

「誰だ?!」

「偉大な真のサポーターの要求を丸呑みしなかった罰の味はいかがかな?」

「貴様が犯人か。案ずるな、警察には通報済みだ。」

「ははは、悪いのはどっちだ?!俺の要求通りのことをすれば新潟キグナスは

あっという間に強くなれるのに無視した。全ては自業自得だ!」

「世の中には出来ることと出来ないことがある。以前変なメールを寄越したの

も貴様か?!」

「その通り。言ったろ?応じなければ痛い目に遭わすと。」

怒りのあまり受話器を壊さんばかりに強く握りしめる大橋。

「くどいが、貴様の無理難題に応じるほど我々には余裕はない。現状の

資本バランスで出来うる最高を目指すのが今のやり方だ。それに私は

サポーターの御用聞きじゃない!」

「簡単だよ、あんたが住んでる偉そうな家や金目のものをまとめて売り飛ばし

てクラブに売却益をそっくり預ければいい。お前だけじゃない、スタッフ全員

だ。それでもダメなら眼球や肝臓を売り飛ばせ!愛するクラブのために

リアルに身を粉にしてみな!」

「そういう小学生レベルの発想を自分で言って恥ずかしくないか?」

「全ては新潟キグナスの為に言ってるんだ!よ~っく考えな、そのうちもっと

ひどいことをおこしてやる。じゃぁな!」

電話は一方的に切られる。

 週末のホームゲーム、新潟キグナスは序盤より劣勢に立たされ

失点も時間の問題な状況だった。そして自陣ゴールネットが揺さぶれる。

すかさず失点を罵倒する声がゴール裏より聞こえ始める。

「キグナスコールでヤジを消すんだ!!早く太鼓叩け!!!」

いつになく真剣な表情で指示を出すリーダー。そしてうつむき加減の

選手たちに顔を上げろと両手を上下に振り煽る。そしていつの間にかスタジア

ム全体がキグナスコールで一体化する。

サポーターによる声援の後押しを受けてか試合は一転キグナスペースとなり

逆転勝利。

一旦は遠のいた一部昇格の可能性がまた見え始める貴重な勝利となる。

 試合終了後の帰り道、ホワイトロックのメンバーがリーダーに声をかける

「今日の仕切り、大分良かったぜ。鬼気せまるってかんじ?」

照れくさそうに頭をかきながらリーダーが答える。

「これでもキグナスを後押しする責任があるからな。もう一踏ん張りだぜ!」

その言葉に仲間たちは相槌を打つ

 翌日、早朝のコンビニ外に停車中の車中で朝っぱらから苦々しい表情で

スポーツ新聞を広げる男の姿があった。

「新潟キグナス、ニキ・ビアシオン監督来季続投だぁ・・・あのへぼイタ公を

まだ引っ張るつもりか。イタリア代表監督のロベルト・マルティーニを

引き抜けとあれほど言ったのに

・・・・大橋の野郎、どこまでもこの俺を無視するつもりだな!」

新聞をグシャグシャに丸め、外のゴミ箱に叩き込む。車内の後方には

鋭利な刃物らしきものが積まれていた。


 薄暗い物置の中、3人の男女がいた。ただ、その体にはロープが

巻き付けられ、顔には目隠しがされた状況だった。

目出し帽を被った犯人らしき音は人質をビデオカメラで撮りながら刃物を

3人の男女に向けていた

「これでよし・・・明日は面白いことになるなぁ。みんなこの真のサポーター

の前に泣いてひれ伏す。そして俺は神様になる。

・・・最高だなぁ。」

「何を言うか!お前のやっていることは犯罪だ!!」

「ば、馬鹿野郎!!誘拐なんかして愛するキグナスが喜ぶか!」

「そうよ。キグナスはあんたの御用聞きでも無ければ私物でもない、バカなこ

とはさっさとやめて!」

「うるせぇ!!!」

犯人らしき男は飲んでいたエナジードリンクの空き缶を人質達に投げつける。

「いいか?!てめぇらどのみち死ぬんだ。人の言うことを聞かないで

勝手なことばかりしやがる無能クラブを本物の地獄で恨み続けろ!」

物置の出入り口が施錠され犯人が立ち去る。

拘束された状態からなんとか動き身を寄せる人質達

「どうしよう、逃げる方法があれば」

「ここから出入り口は遠いようだな。」

そんな時一瞬女性の目隠しが少しズレて、足下に何か刃物のようなものが見え

た。

(カッターナイフ?!どうにか取れないかしら?)

両手を縛られた状態で体を揺すりカッターナイフをなんとか引き寄せようとす

る。


 人気の無い駐車場でどこかへ携帯電話で通話する女性の姿があった

「えぇ、完了しました。時間も時間ですしこのまま直来でお願いします。」

車の前でメモ帳を広げ何か書き込み乗り込もうとするとすぐ隣に一台の車が駐

車する。そして降りてきた見知らぬ男が女性の喉元に刃物を突きつける

「誰?!」

「教えらんねぇな!」

女性は抵抗するも素早く両手を後ろ手に縛られ目隠しをされ男の車の後部座席

に押し込まれる。

「人質確保・・・」

男は薄笑いを浮かべながら車を急発進させ駐車場を後にする。

 オフィスビルの地下駐車場でうずくまっていた男に男性が声をかける

「どうなさいました?」

「すいません、急に体の具合が。・・・肩をかしてもらいませんか?」

男性が近づくとうずくまっていた男が突然立ち上がり男性の口元に

タオルをかぶせる。男性は抵抗すること無くその場に倒れ込む。

「・・・・な・・・なにをする・・・」

「悪いが、理想の為の犠牲になってもらいたくてねぇ。」

 夜道、タクシーから降りて自宅へ向かう男性の姿があった。

そんな時、自分の目の前に立ち塞がる人影が見えた。

「だぁれぇで~すか?」

ほろ酔い加減で人影に声をかける

「誰でもねぇよ。」

人影は突如突進して男性のみぞおちに拳を入れ、男性はその場に倒れ込む。


 新潟キグナスの事務所に社長宛にリターンアドレスの無い郵便が届く。

数ヶ月間続く”嫌がらせ”を懸念したスタッフは開封せず廃棄するように

進言したが、社長は開封する。すると、中にはUSBメモリがあった。

「何だこれは。中身を一応ウイルスチェックしてみて。」

スタッフが確認するとウイルスの類いは無かったが、一つのムービーファイル

があった。再生すると目出し帽を被った男が数人の目隠しをされ拘束された

3人の男女を前に刃物を片手にしゃべっている映像があった。

 「やぁ新潟キグナスの諸君、君らはお客様は神様であることを無視して

この偉大なる私の要求を無視した。よって実力行使という手段を執る

これから言う3つの提言を週末の最終節ホームゲームまで実行しない場合

キックオフと同時にこの”ゲスト”の公開処刑をストリーミングサイトにて

行う。人の命を無視するか神様の要求を呑むかよく考えたまえ!

一つ、監督ニキ・ビアシオンの即時解任。イタリア代表監督

ロベルト・マルティーニの就任。二つ、スペイン代表カルロス・モヤ、

イングランド代表、ロイ・スターリング、イタリア代表、チコ・ロッシの獲得

二つ、運営資金1000億円への増額。

三つ、社長大橋雅紀の謝罪会見およびその場での自死

以上だ。」

ムービーファイルの再生が終わると同時に静まり返るオフィス。

そんな時、女性スタッフの一人がその場で泣き崩れる。

「そんなぁ・・・洋子ちゃん・・・」

「洋子?!人質の一人が井森君なのかい?!」

「えぇ。あの子営業は脚が命って足下がいつもスニーカーなんです。」

「そういえば彼女、いつも赤いスニーカーだったな。」

「馬鹿野郎!!いい気になりやがって」

男性スタッフが事務机を拳で叩く。

「ともかくだ、警察には通報する。取り乱すなというのは無理かも知らんが、

君らは自らの職務にいつも通り取り組んでくれ。」

社長の一言で全員持ち場につく。ただ、重苦しい空気が立ちこめるのは

当然であった。


 その日の夜、警察署の会議室に報道関係者が集められた。

「え~以上であります。被害者の生命、安全を最優先にするため

現時刻より誘拐報道協定に基づき事件解決まで報道規制を行います。」

署長らしき男性が説明を行う。

「質問をしたいのですが」

一人の報道関係者が手を上げる。進行役の警察官が発言を促す

「被害者の身元については?」

「女性に関しては、新潟キグナスの社員様と確認したとの報告が

大橋社長様よりありました。」

「他にお二人に関しては、断定はしておりませんが数日来行方不明の捜索依頼

がありました亀石製菓と極東精機の社員様と把握しております。」

他の記者が質問する。

「亀石と極東といえば、長年新潟キグナスのメインスポンサーだったはずです

が、その辺の関係性とかは?」

「捜査中なので確定的なことは申し上げられませんが可能性はゼロでは無いで

しょう。」

間を置かず、他の記者が再度質問する。

「え~、先ほどの映像ですが、近くで見てもよろしいでしょうか?」

「どうぞ。」

進行役が前に出るよう促す。

腕を組み最初から見ていた記者が突然手を上げる

「一時停止してください。1分35秒の辺り」

画像が停止する。

「ここ、犯人の脇の窓・・・なにか映ってません?」

他の記者も促されるかのようにモニターに群がる

「人の形をした建物?」

「滑り台?!」

会場が一斉にざわつき始める。それを制するかのように進行役が

記者会見の終了を発言する。

「・・・え~先ほども署長からもありましたが報道規制の厳守をお願いしま

す。以上になります」

集められた記者達がその場から立ち去る。

「一課長、なんか記者が言っとったな。」

「署長、滑り台ですか?いやまさかそんな巨大なのがこの辺にあるとは。」

「これは、セメント工場によくある建屋じゃないのか?」

「はぁ・・・それならたくさんありますがこれから全県のセメント工場

全部当たるのはかなりの時間がかかりますが。」

「・・・特定は簡単でしょう。」

進行役を務めた警察官が口を挟む。

「何?」

「建屋に何か企業名がかいてませんか?」

「確かに。」

「画像解析すれば特定は可能と思われます。」

「よし!事態は急を要する。君に任せるので急ぎ調べろ!」

「はい!!」


「社長、奥様から着替えを預かりました。」

「おぉありがとう。」

「・・・何日会社に詰めるつもりですか?」

「終わるまでだ。」

「そんなに気を詰めなくてもよろしいのでは?」

「大事な社員が捕まってるんだ、脳天気に家には帰れんよ。」

事件発生以降、大橋社長は事件解決まで本社に居残る事を決断した。

それは多くの社員の反対を押し切っての行動である。

「警察から連絡は?」

「無いな。だがついさっき報道規制がかかったとあった。」

「極秘ですか?」

「そうなるね。あぁ、選手と監督、コーチにも内緒だぞ。

こっちも合わせよう。」

「はい。でもお体には十分お気を付けください。」

「あぁ・・・」

 廃屋に拘束された人質達がなんとか活路を見いだそうと

必死の行動を続ける。

「ナイフがあるなんてよく分かったね。」

「私の目隠しがズレていたことがラッキーでした。」

「しかしどうやって使うよ?」

「簡単だよ。」

一番右端に座っていた男性がおもむろに立ち上がった。

「?!」

「あんにゃろの凡ミスだ。俺にかかったロープと足かせが緩かったんだ。」

男性が大きく深呼吸をすると上半身を拘束したロープが一気に緩む。

「お見事。」

「脱出マジックの種明かしだ。まさかこんなとこで使うとはね」

自分の拘束を解き、女性の脇にあるカッターナイフで他の二人の拘束を解く

「新潟キグナスの最終節は今週の・・・」

「土曜日です。」

女性が答える

「で、今何日?」

「水曜日、これもあんにゃろの凡ミスです。所持品くらい

奪っておけば良かろうに。」

もう一人の男性がズボンのポケットからスマートホンを取り出す。

「ということは土曜日にまたくるな。」

「後は出入り口を」

「・・・ですね。」

「まて、まずは警察に電話だ。鍵開けより手っ取り早い。」

スマートホンから電話するもすぐに異変に気づく。

「つ・・・繋がらない?!」

「そんな、今時電波が通らない所なんて!」

「電波ジャミング。要は電波妨害をする機械がこの物置のどっかに

仕掛けられてるんだ。」

「一難去ってまた一難。ついてないよ。」

もう一人の男性が頭を抱え座り込む。

「まぁこういうの私慣れっこなんで結構楽しいですよ。

 ちっとも成績が安定しないサッカークラブの営業なんてこれくらい

日常茶飯事ですよ。契約を約束した会社に一日でひっくり返されたり

不調を盾にお金を絞ったり、サポーターにはお前らの営業努力が足らんとか

メールで煽られたり・・・今回のは異常ですけど。」

肩をすくめ女性がつぶやく。

「とりあえず鍵を開ける方法と、ジャミングの機械を探す。」

3人の人質はお互いの顔を見合いうなずく。


 捜査関係者が集められた警察署内、一人の男性が説明を行っていた。

「え~犯人の送りつけた映像に映った建屋の部分を解明したところ、

古矢セメント工業という文字が判明しました。」

「所轄にあるのですかその古矢ってのは?」

「二軒存在します。ただ、そのうち一つはすでに工場は閉鎖されており

プラント・・・工場設備もまもなく解体されるそうです。」

「課長、自分なら閉鎖した方に人質を隠しますね。」

「だよな。・・・では古矢セメント工業周辺を中心に不審者の捜索

 そして、人質が拘束されている場所の特定。

 そんなに時間は無い、急ぎ当たってくれ。」

 刑事達が一斉に立ち上がり外へ出る。

「警察のご厄介になるようなのは当社にはおりませんがねぇ。」 

 「いえいえ、あなた方を疑ってるのでは無くちょっとお伺いしたいことが

 あるだけでして」

 セメント工場の責任者が怪訝そうな表情で刑事の案内をする。

「ここです、当社の旧プラント。もうお年寄りでねぇ、今年の夏から

  全く動いてません。」

プラントの中程にある制御室と扉に貼ってある場所から刑事が

 双眼鏡でのぞき込む。

 「あの小屋は?」

 「知り合いの建設会社が置かせてくれと。

  ・・・もう3年になりますかなぁ。置いた当人も

  忘れてるんでしょうな。」

 「(間違いない、あれだ)え~っと小屋の持ち主の会社名は何ですか?」

 「これです。なんか気になりますかねぇ?」

 名刺入れから建設会社の名前の入った名刺を取り出し見せる

「色々と・・・あ、もう結構です。ご協力感謝します。」

 刑事はそれを写すと足早に建屋から去って行く。

 プラント下の駐車場では他の刑事が車の車内で待っていた

 「なんか解りました?!」

 「あの小屋に間違いない。土曜日間違いなく犯人は来る

  入った瞬間に逮捕だ。」

 「肝心の小屋の持ち主は?」

 運転席の刑事にメモ書きを渡す。

 「・・・急げ!」

 車はその場を離れた。

 

「さぁ明日はいよいよ最終節、他会場の結果次第ですが勝利することで

  久しぶりの昇格が決まります。」

 夕方の地元テレビのスポーツニュースで若干興奮気味にキャスターが

 新潟キグナスの事を伝える。

 それを見ながら太めの荷造り用ロープをいじる男がいた。

 「バカ共め、明日何が起きるか知らずに脳天気な奴らだ」

 そのロープは輪っか状になっていた。

 「(ついに、明日俺は神になる!)」

 不気味に薄笑いを浮かべる。

 「ええ、首を絞めても切れないようなのとかおかしな事を言ってましてね

  店員が気味悪がって。」

 ホームセンターの事務室、店主からの通報を受けた警察関係者がいた。

 「人相とかは?」

 「レジ前の監視カメラに。ほら、この辺」

  警察官がモニターを注視する

 「首を絞めるとか尋常じゃ無いオーダーですね?」

 「だからこそお呼びしたわけでして・・・」

 「解りました、署内で警戒します。」

警察官は警察車両に戻り急ぎ連絡を入れる。

「え~本部へ、首を絞めても切れないロープとか奇っ怪な事を

 言った客ですが・・・」

 小屋の中では人質達が悪戦苦闘していた。

「あれですよ、梁の上。なんかランプが点滅してます!」

「・・・落とさないでくださいね」

「大丈夫、女性は大事に扱わなきゃ男が廃る」

少し笑みを浮かべながら女性を肩車する男性

「もっと半歩前進してください。」

「と・・・取れたかい?」

 顔を赤くしながら歯を食いしばる男性

「オッケーです、下ろしてください!」

下ろした瞬間床に大の字になる男性。

もう一人の男性が電波妨害をする機械の電源を切り小屋の中にあった

ハンマーで叩いて壊す。

「さて警察に”ご足労”を願いますか?」

「いや、通報はまだしないでください。今一瞬良いこと考えつきまし

た。」

「何を?」

「大馬鹿野郎にはひどい目に遭ってもらいましょう

 大きなお返しです」

女性がニヤリとする。

 明けて土曜日の新潟キグナスのホームスタジアム、ようやく見えた

悲願の一部再昇格へ向けスタジアム全体が興奮に包まれているようだった

「ねぇ?今日パトカー多くない?」

「お巡りも。どっかじゃあるまいに勢い余って暴れはしませんよ。

 警察もオーバーなんだよ。」

 通りすがるサポーターの会話が社長大橋雅紀の耳に入る。

 「(・・・実際起きてんだよ、とんでもないことがな)」

 「社長、代表者会議がまもなく始まります。至急会議室へ」

 スタッフに呼び止められる

 「あぁ解ってる。」

関係者用エレベーターで二階客席コンコースから会議室へと向かう。

目出し帽を被った男が長く放置された小屋の前にいた。

その手には3つの輪っか状のロープがあった。

正面の鍵を開け、壊れて動かない事を知らない電波ジャミング機を

遠隔スイッチで電源を落とし、ノートPCのスイッチを入れビデオカメラの繋ぐ

「やぁ、人質諸君。予告通り君らの処刑を行う。」

ロープを梁に引っかけ簡易絞首刑台をいそいそと作り始める。

だが、男は気づいていなかった。身元がとっくに警察関係者にばれ

ひっそりと追尾されていたことを

男は腕時計を見る。

「キックオフだ。・・・ん?てめぇら寝てんのか?!今から殺されるんの

に良い度胸だ。」

刃物を片手に人質の方へ歩み寄る。すると3人がそろって顔を上げる

「お前ら・・・目隠し・・・どうやって拘束をほどいた?!」

「大甘なんだよ、自称神様な坊や!」

ビデオカメラの前に人質の男性が立ち上がる

「今までのお返しだ!!」

「ゴーーーーーーーーール!!!ただいまのゴールは前半30分~」

「社長!!先制です!!」

チームの先制を喜ぶスタッフ達の中、ジッとピッチの方を

腕組みをしたまま見つめる社長の姿があった。

「例の件が終わってない、喜ぶのはまだ早いよ。」

すると社長のスマートホンが鳴る。

「・・・解りました、ご苦労様です。」

「社長?!」

「喜んで良いようだ!事件無事解決だ!!・・・他会場は?」

「未だ0-0です。」

「頼むよみんな~」

 腹に蹴りを打ち込まれのたうちまわる犯人の惨めな姿が

 ストリーミングサイトで配信される。

その光景を、犯人の確保と人質の救出に動いたフル装備の警察官達が小屋の中で

あっけにとられた表情で見つめていた。

「あ・・・あのどうやって?」

「犯人の作戦が大甘だったんですよ。」

「チョロいもんです。」

「いやぁ~こっちも容疑者の身元をようやく掴んで・・・ま・・・まぁ

 ご苦労様です。」

軽い会釈をして警察官が答える。

「お・・・お客様は神様なんだ!俺の言うとおりにしなきゃ

キグナスはダメになるのにぃぃ!どうして邪魔すんだよぉぉぉ」

手錠をかけられ同行を促された犯人が泣きながら叫ぶ。すると

人質だった女性が近づきいきなり掴みかかる。

「あんたみたいな頭の悪いポンコツに指図される筋合いは無いよ!

キグナスに関わるみんなもっと高いとこ見てんだ、神様気取りの

自己中な馬鹿には死ぬまでわかんないだろうね!」

顔面へ平手打ちを食らわそうとする女性を警察官が慌てて制止する。

そして犯人がパトカーの後部座席に押し込まれる。

「姉さん、言うねぇ」

他の人質だった男性が声をかける。

「一度言ってみたかったんです。SNSとかでチームのためを思って~

とか半端な理屈でギャーギャーいう連中に・・・すっきりしましたわ。」

「あ、あのぉ事情聴取の方をお願いしたいんですが?」

3人に警察官が声をかける。

「良いですよ、向かいます。」


 市内中心部の住宅地、営業しているかどうかも疑わしい古びた

喫茶店があった。

「やぁやぁ、よく来たね。」

サポーターグループ、”ホワイトロック”のリーダーがここに呼ばれてい

た。呼んだのは新潟キグナスの社長だった。

「解りづらかったろ?この場所を知ってる人はそんなにいないだろうな

ぁ」

「いえ、問題ないです。」

リーダーが着席を促される。

「クラブがサポと癒着してるとか勘違いされると面倒だからね。

あえてここを選ばせてもらった。」

「何の御用ですか?」

「私は、社長から退任する。後任は専務の原君だ」

「え?!」

「正式発表は明日の公式メールだが、君らには迷惑をかけたし

真っ先に伝えなきゃってね。」

「でも、あの誘拐事件は貴方の責任じゃ無いですよ。」

「最高責任者が責務を担うのは社会の常識だ。問題行為が

起きたならなおさらね。それに、君ら言ったじゃ無いか

2部降格の時、大橋、原さんに代われ~ってね。」

「あ・・・あれは怒りにかまけてというか・・・」

「怒りだろうがマサカリだろうがお客様、サポーターの

信頼を得られなければその時点で社長失格だ。

あのときからね、チームをなんとか再生してから去ろうと決意して

今までやってきたんだ。最期の年にこれはキツかったが。」

コーヒーを少しすすり外を見る大橋。

「この店はね、昔キグナスが地域リーグ全国対抗戦に初めて挑むとき

壮行会を開いた場所なんだ。あのときは私は経理担当だったが

まぁひどかった、遠征用の大型バスのレンタル費用がどうしても

足らないで、選手にまで割り勘をお願いしたんだ。」

「へぇ・・・」

「以来ここは自分が大事なことをおこす際にはここを使う

忘れちゃならない聖地みたいな場所だ。」

「で、これからどうするんですか?」

「案ずるな、半年一年プーでも食えるくらいの蓄えはあるよ。

それとね、ここだけの話リーグから常任理事就任の話がある。」

「そうですか・・・」

「まぁそういうことだからチームの後押し、しっかり頼みますよ」

大橋はは立ち上がり座っていたリーダーの両肩を叩く。

「では失礼、・・・元気でね。」

伝票を掴み勘定を済ませ、軽い会釈をして大橋は外へ出る。

駐車場で自分の車を一回りして首を縦に振る

「良かった。今度はパンクしてない」

大橋の乗った車は走り去って行く。

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その者、神を名乗る しばた じゅん @jun8139

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