第3話 「あのねキャサリン、貴女は私が『もう辞めてキャサリン』と言って 辞めたかしら。辞めなかったわよね」 今更辞めてくれと言われてももう遅い!


妹の足の裏に釘を軽く差す。

 「痛いっ痛いよお姉様」

 まだこれからだというのにこのクズはやかましい。

 軽く刺した針の上にハンマーを叩き込む。

 「ぎゃあっ」

 妹が大袈裟にみっともない声を出す。

今まで訓練も戦闘もしてなかったのだから、痛みに慣れてないのだろう。

釘が骨に当たったのだろう。貫通できる長さの釘を使ったが、骨で当たって止まっている。

 「お姉様、もう辞めて」

 はぁ?『もう辞めて』?

 「あのねキャサリン、貴女は私が『もう辞めてキャサリン』と言って

辞めたかしら。辞めなかったわよね。

私がどれだけ痛み苦しみ泣き叫んで許してもう辞めてと願っても辞めなかったじゃない。

だからね、辞めないわよキャサリン。

自業自得でしょう。

今度は貴女の版になっただけなのよ。

貴女は10何年も毎日毎日私の事を虐げて痛めつけて、今まだ一時間も貴女を痛めつけていないのに、

被害者ぶるのかしら。ふざけてるのかしら」

 妹の足の裏に釘をずっと刺していきました。

妹が何故か泣いているのですが、何故泣いているのでしょう。

被害者ぶって悲劇のヒロイン気取りで泣いて、泣けばどこぞのイケメン王子様が助けてくれるとでも思ってるのでしょうか。

泣いてイケメン王子様が助けてくれるなら、私は10数年前にとっくにイケメン王子様に助けられています。

泣いても、誰も助けてくれないのです。

 「キャサリン、泣いても誰も助けてくれないのよ。泣いていては駄目よ。

泣くのではなく自分自身でなんとかしないと。

自分でちゃんと考えて、努力をして、自分で自分を助けるのよキャサリン」

 はぁ、こんなクズの妹にここまで親切に正しい生き方を教えてあげるなんて、

私はなんて親切で優しく面倒見が良いのでしょう。

しかし、だからといってどこぞのイケメン王子が

“なんて素晴らしい人格の女性なんだ。素晴らしい”と褒め称えてくれるわけではないのです。

それは仕方のないことなのです。

善行をしても努力をしても正しいことをしていても、そう簡単に人が社会が認めてくれるわけではないのです。

社会とは人生とはそういうものなのです。

それでも私は努力を絶やさず、人格も優れた男爵令嬢として常に行動するのです。

努力や行いをそう簡単に人に認めてもらうなどというのは甘ったれた怠け者の考える事です。

私はいくら人に認められなくても、ずっと努力と善行正しい行動を続けてきました。

これからも変わりません。

努力とは正しい行いというのは、ずっとずっと続けて、少しでも自分が成長できればいい。

努力とは正しい行いとはそういうものなのです。

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