ハグルマビーチの冬景色

 それから数百年後。

ハグルマビーチに今年も冬がやってきました。

とは言っても、街は海からの優しい風のおかげでそこまで寒くはありませんし、

雪が降ったり、氷が張ったりすることはありません。

しかし、一年の中で一番空が澄んで綺麗に見える季節でもあり、

夜になると子供たちが星を見るために望遠鏡をかついで町外れの丘に向かうのです。


 この丘は街の西側に位置する小高い山で、

丘の上には大きな木が一本生えています。

この木は数百年もの間この街を見守ってきました。

もうどれくらい立っているのかはわかりませんが

大きな傷みもなく、立派なものなのでした。


 さて、この丘の上は街を一望できるとともに、

東西南北遠くの方まで見渡せる場所です。

ビーチは東の果てにある街で、

はるか南にはオランジュコーストと呼ばれる一年を通して温かい浜辺の街があり、

西にはフロンティアフィールドと呼ばれる未開拓の大地が広がっています。

そして、遠く北の方にはクリスタルマウンテンという、

閉ざされた街があるのです。


 話を戻しますが、この丘にはもう一つ不思議で素敵な言い伝えがあり、

千年に一度流れ星の大移動と呼ばれる現象があり、

この大移動の夜に子供たちが願った願いはどんな事でも叶うと言われているのです。

そして幸いな事に、その大移動があるのが今年の冬なのだと言われています。

なので、子供たちは毎夜毎夜この丘へとやってくるのです。

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