雪山の女王〜さよならハグルマビーチ〜

プロローグ

　これは遥か時空を超えたもう一つの世界で起こった話です。

　その世界には魔法と呼ばれるものが数多く実在し、

こちらの世界では想像もつかないような事が起こります。

そんな世界でのお話です。

　東の外れにある小さな浜辺の街「ハグルマ・ビーチ」。

その遥か北の方に、常冬の土地がありました。

そこには大きな山があり、その山のてっぺんに小さな街がありました。

その街の一角に、クリスタという名前の女の子が

家族と一緒に暮らしていました。

　ある日の事。

異国の兵隊たちが、街を乗っ取ろうと大勢でやってきました。

兵隊たちは街の人たちを生け捕りにし、

従わない者は殺されてしまいました。

もちろんクリスタの家族も捕まってしまいました。

しかし、クリスタだけは、両親がうまく逃がしてくれました。

クリスタは兵隊たちが全員街から出る時まで、

家族だけが知っている秘密の地下室に隠れていました。

　どれだけの時間が経ったのか。

クリスタがそっと外に出てみると、街は破壊され、

誰もいない寂れた土地にされていました。

クリスタは悲しくて仕方がありませんでした。

そして、その悲しみは怒りとなって、クリスタを心の優しい女の子から、

恐ろしい力を持つ魔法使いに変えてしまいました。

それからというもの、その山に登った者は誰一人として

戻ってくることはない恐ろしい山へと姿を変えてしまいました。

人々はその山を「呪いのクリスタルマウンテン」と呼び、

山への入り口を全て塞いでしまいました。

そして、その常冬の土地には人も住まなくなり、

遠い記憶の向こうへと忘れ去られてしまいました。