卒園式

 経験を積んでフリークラスを担当していた時のこと。

 フリークラスとは、クラス担任が休みの時に代わりにそのクラスへ入って、その日の担任をすることだ。


 その年度の卒園式に出席した。僕も児童養護施設への転職が決まっていた。つまり僕の卒園式でもあった。


 その卒園児たちのことは一歳の頃から知っていたので、特に思い入れがあった。 

 しかも、最後の一年は僕もフリーでよくそのクラスに入っていた。

 歴代でも、特に僕になついてくれていたクラスだと思う。


 僕はよく泣くことで知られていた。お遊戯会で号泣。子どもの合唱で号泣。産休に入る先生に対して号泣。


 もちろん、卒園式では大号泣。


 最後に子どもたちが卒園ソングを唄うのだが、保護者たちからのサプライズで歌の歌詞が一部変わっていた。


「♪みんなの人気者~♪しゅう(僕の偽名)先生みたいになりたいな~♪」


 僕の目から滝が出た。

 コンタクトレンズが剥がれ落ちた。

 最高のプレゼントだった。


 今ではその子たちも中学生。

 毎年、花見の時にその子たちに会うのが楽しみなのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

こどもかんけいのおしごと。~ほいくえん編~ 秋野 柊 @shun0923

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画