【そのきゅう】 - 冷たいあの人

「そこの襖外して。」

「そう、そこのおもちゃ箱はこっちへ。」


ーーーーー


私が再び目を覚ますと周囲は明るくなり、何やら騒がしかった。


父や母、叔母がせわしなく動き回っている。


「ママ、あのねおじいちゃんが…。」


声をかけると母が息を吸い込み驚いた表情を見せた。


「お利口さんね。お着替えしていらっしゃい。」


気を取り直すように柔らかい言葉を選ぶと私の言葉を遮った。



それからのことはあまり記憶にない。



いつもと同じ家の中なのに、いつもと違う風景。


静かに眠る祖父の頰と髭に触れる。


そこには温度がなく冷たかった。


「あの人は冷たいんだよ。」


父の言葉がリフレインした。

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