【そのご】 - 海の向こう側

あゝ、まただ…。


また、あの癖が出てしまった。


アプリで送信したメッセージを見詰めながら、私は苦い思いを噛み締めていた。


私は、男性と肌を重ねて親しくなると逃げたくなってしまう癖がある。


深く愛していればいるほど裾をひるがえしたくなってしまうのだ。


これで何度目だろう。


一つ前の恋は、ある会社の代表取締役社長だった。


私がプロデュースしたイベントに並並ならぬサポートをしてくれたのが彼だ。


このまま…生涯に渡ってお互いの支えになっていくものだと思っていた。


ところがだ、私は逃げた。


その前は、ハリウッド女優や大御所監督の写真も依頼されるフォトグラファー。


彼のことも愛しすぎたゆえに苦しくなり、私は海を渡って逃げたのだ。


青い空と蒼い海を眺めながら彼にメッセージを送った。


『あなたのことが好きよ。』


「でも、俺のこと置いて沖縄に行っちゃったでしょ?』

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