【そのよん】 - お休み

今日も夜がやってきた。


きっと、私はまた粗相をしてしまう。


そして、また母は祖父のせいにするだろう。


そう思うと、どうしても二階の寝室で眠る気になれず、私は一階の寝室で祖父と眠ることを望んだ。


だが、両親にも譲れない理由がある。


私を祖父と寝かせたくないのだ。


なぜなら、父が祖父のことを恨んでいるから。



「イヤだーーー!!!おじいちゃんと寝るぅー!!…っぐす…」


私は父に抱きしめられながら、目一杯両手を祖父の方に伸ばした。


祖父は、一瞬伸ばしかけた手の指をギュッと握り腕を引っ込めると


「パパとママとお休み。可愛い弟も一緒だよ。また、お日様が昇ったらおじいちゃんと遊ぼう。」


そう言って悲しそうに微笑んだ。


「イヤ…だ…。」


再びそう言いかけた私は、祖父の表情を見て、これ以上言ってはいけないのだと子供心に何かを察して言葉を呑み込む。



父に抱かれて二階への階段を上がっていく私を潤んだ目で見つめながら


「お休み。」


祖父が小さくそう囁いた。



そして、温度を感じる祖父と会ったのはその日が最後となり、この出来事が大人になった私に大きな影を落とすとは、その時はまだ誰も気づいていなかった。

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