【そのさん】 - 違う
出かけていた父が母と共に帰ってきた。
何やら見慣れない物体を大切そうに抱えている。
母が帰宅したら暖かい胸に抱かれることを楽しみにしていた私は、その気持ちをどこに向けて良いのかわからず、しばし戸惑った。
そして、その心の迷いは私の体に症状として現れる。
母の入院中、祖父と共に一階の部屋で眠っていたが、母が帰宅し再び二階の寝室で眠るようになった途端におねしょが始まったのだ。
寝ぼけ眼でトイレの便器に座っている私のことを支えながら母が何やら呟いている。
「おじいちゃんと寝てたから…。」
私は、心の中で叫んでいた。
(違うおじいちゃんが悪いんじゃない!)
間も無く3歳になろうとしているのに、それをうまく説明できない自分が悔しくて私は涙を流した。
「あらあら、泣かなくていいのよ。ママおねしょしても怒ったりしないわよ。」
優しい笑顔でそう言う母のことが少しだけ疎ましく思えた。
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