第38話 情報収集

……情報集めるために、また図書室にでも行こうかな。

前見た本は……本当だったみたいだし。


……あ、そうだ。私あの時本をこの部屋に持って来たような気がする。私の勘違いじゃなければあの引き出しの中に……。

そう思い私は大きな棚の引き出しに手をかけ、中をガサゴソとあさり始める。

真っ黒だったためか引き出しの中に同化してしまうから結構探しにくいもの。


「あった。これだ、……真っ黒な表紙の本……」

私は引き出しの中から真っ黒な本を見つけ出した。

相変わらず怪しいオーラみたいなのを感じてしまう私はちょっとおかしいのかもしれないけど書いてるこれが正確な情報、っていうのは知ってるからただの本からオーラを感じてしまう私はおかしくない……よね。だって実際ページとか増えてたわけだし……。


私は一人苦笑いをしながらベットに座って本をぱらぱらとめくる。もしかしたらまたページが増えてたり……なんてね。


そんなことを思いながら私は少し笑うと最後のページに手を付けた。

そこで私は冗談で言ったことが本当で思わずぎょっとしてしまう。

……まさかほんとにページが増えてるとは思わなかった。



『……カガミ様から聞いたかもしれませんが、私はカガミ様の家来でございます。ですがあなたは私の本をずっと読んでいてくださいました。ですので再び、あなたが気になっているであろう情報を差し上げます。推理ゲームはもうあきらめているとのことで少し残念ですがカガミ様が楽しんでおられるので特別です。

では…まずはあなたが一番気になっているであろうカガミ様が二人いるのか…っていうことをお教えいたします。


直球に言いますと、カガミ様は二人います。あなたが知っている通り、優しいカガミ様と悪いカガミ様。あなたの会っているカガミ様自体は、もう一人のカガミ様の存在を知りません。あなたにとっては好都合なことでしょうね。

そのおかけで思う存分カガミ様と話すことができますよ。私がこれに書いたことでもうカガミ様には伝わったかと思いますが。

まずはあなたが言う「優しいカガミ様」の特徴はやはり大人びていておとなしいです。

そして現れる条件ですが、これも信じることです。うすうす気づいていたようですが呼ぶのではなく信じるだけだと優しいカガミ様が現れるでしょう。

それでは、あなたの幸運をお祈りいたします』


……本当に私の状況や考えていることがわかってる。

心の中を読まれてるみたいで少し気持ちが悪い……。

でも、これが本当なんだったら、これでカガミ様が二人いることははっきりした…?

いまだに信用することができないのはこの本を書いたのがカガミ様の家来だということがわかっているからだろう。

だって、私が敵だってわかってるなら本当のことを言う意味なんてないじゃない。

……これも楽しむためだっていうなら別だけど。

とりあえずもう一人のカガミ様の存在だけはちゃんと信じてみることにする。



「……麻実ちゃん、お昼になったからみんなのところにおいで」

とつぜんおばあちゃんが私の部屋のドアを開けて私に呼び掛けた。幸い私の手元にある真っ黒な本には目がいかなかったのか、そこには触れなかった。

正直助かったと思う。目についてたら問い詰められそうだから。

「あ、おばあちゃん。……うん、今行く」

私は小さな声で返事をすると、にこりと笑って部屋から出て行くおばあちゃんを見送った。

色々調べていたらもうお昼になっていた。こう思うと朝から昼までって案外早いもんだなぁ……と改めて思う。



みんなのもとへ行くも、みんなというほど人はいない。お母さんがいないだけでこんなにも空気が重くなってしまうのか……。

私が自分の家に戻る前カガミ様にお願いしたことは本当にかなっていてよかった。「みんなを元に戻して」っていうやつ。もしお願いしてなかったら今もみんなは私の言葉に反応すら示さないようになっていただろう。

それだけでも……私は安心して生活ができる。



今日も昼食が終わった。

いつも私の家で食べるお母さんのごはんとは比べ物にならない感じの豪華な料理が出てきたけど今では少し慣れてしまった。

お母さんのご飯はやっぱり愛情があればおいしいんだよね。愛情があってこその家族の食卓だもん。

……ただ、もうお母さんはいないのだけれど。


早くカガミ様現れてくれないかな。

そうしてくれないと話は全く進んでこないし私もさすがにやることがなくなってきてしまう。

……でも作戦決行するのは明日なわけだから暇ではないか。

カガミ様が現れるのが先か作戦が成功してみんなが脱出できるのが先か……。どっちでも安全だからいいんだけど……私的にはカガミ様が現れてくれた方がいい。……藍さんにはちょっと悪いと思うけど。


もしみんなで逃げられたのなら…そこにカガミ様が現れない限りはかなり安全な状況になる。

あの時は学校に来たからいけなかったんだから近寄らせなければいい。…カガミ様が来たらすぐにげればいいの。ずっと逃げて逃げて、カガミ様がおえなくなるまでずっと……。

優しいカガミ様が現れたらカガミ様に悪い方のカガミ様を消すよう言えばいいんだよ。そしたら私は晴れて平和な世界で生きることができるの……。

どっちでも必ず私は逃げる。

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