第24話 紗矢の家
「……はあ……。眠いぃ~」
私が紗矢の隣でそう言っていると紗矢はくすくすと笑いながら私の方を見てこう言った。
「これからあたしの家に行くってのに何言ってんの。寝させないかんね~?」
紗矢はいたずらっぽい笑顔で私にそう言った。
時間がたつにつれ紗矢は無事に元に戻っていたからちょっと安心。
「……えぇっ、ひどい……!」
私は驚いて思わず叫んでしまう。
眠たいのに寝れないなんて私はもうだめだ……。
「ふふふ~。じゃあ寝たらデコピンね」
「……起きてられるかな~……」
私は頭を抱えそうなくらいの声を上げた。
「……久しぶりの紗矢の家だぁ~」
私は紗矢の家の玄関で靴を脱ぐ前に、大きな声でそう言った。
「久しぶりだっけ? 最近きてた気がするんだけど……。」
「久しぶりだよ……」
私はあきれたような声でそう言った。
やっぱりそういう細かいことは憶えてないんだ……。
そして私は紗矢に言われるように紗矢の部屋に向かっていった。相変わらず紗矢の家はきれいで、なんだかいい匂いがした。香水でもあるのかな。部屋も多いし広いし……羨ましい。あのお屋敷ほどではなかったけど……流石に。あそこは異常だからね。
「……で、渡したいものって結局なんなの?」
私は紗矢の部屋に入ると小さなテーブルの前に座った。
「えっとねぇ~。ちょっと待ってて……」
紗矢はそう言い残すと立ち上がって近くの押し入れやタンスをあさり始めた。
紗矢は探しながら「あれ? どこやったっけ」など独り言をつぶやいている。
……おぼえてないんだ。
紗矢は必死になってガサゴソと周りを探していた。
「……あ、あったあった……!」
しばらくして、紗矢がようやく渡したいものとやらを見つけ出した。
やっと見つかったんだ……と私はほっと息をつく。
紗矢が喜びのあまり高高く掲げているものは、四角い箱? のようなものがラッピングされたもの。
けっこうでかいものだったら持って帰るの大変だったからそれくらい小さくてちょっ
と安心した。
「これだよ渡したいものってのは……!」
「これって……?」
小包を開けてもらわないとわかんないんだけど……。
そんなツッコみを入れていると紗矢は私に強く言った。
「いいからあけてみんさい!」
紗矢はそういうと強引に小包を私に押し付ける。
紗矢の顔はワクワクとしたような嬉しそうで楽しそうな表情。なんだか愛らしい。
私はそれを受け取ると丁寧に包まれた小包を一枚一枚はがしていく。
こういう時って包んである紙が破けそうで怖いんだよね。
あんまり破きたくないから……。
そして中から出てきたのは、箱の中に入った高級そうな時計だった。
「……高そうなものだけど……大丈夫なの……?」
私は時計を呆然とした表情で見つめ、心配になって紗矢に聞いてみる。
「もう~反応薄いなぁもっと喜びなさいよ~。……まぁいいけどさ。そう、それあたしが頑張ってお金集めてかったの。日頃の感謝の気持ちよ」
紗矢は嬉しそうににかっと笑っていた。無邪気な一面こういう気遣いが感じられるものも、紗矢のいいところ。
「……ありがと」
私はなんだか照れくさくなって、短い言葉で返した。
きっと今の私の顔は少し赤くなってしまっているに違いない。
「ふふ。うれしいんでしょ。顔赤いよ」
そういって紗矢は私の頬をツンツンとつついた。
「……うれしいよそりゃあ……。親友がお金かけてプレゼントしてくれたものだもん」
「なになに……、うれしいこと言ってくれんじゃん。……やっぱりいい親友持ったよあたし」
紗矢はしみじみと深くうなずき、にこにこと笑っていた。
「何言ってんの。……あとなんかする?」
「……えぇ~、スルーかい。ま……今日の麻実の様子のことでも詳しく聞こうかね。……なんであんなことになったの」
そういうと紗矢はテーブルに頬杖をついてニヤッと笑った。
正直その話はしたくないのだけど紗矢のためにはしょうがないと思い私は渋々話し始める。
「……学校でも言った通り、あの転校生……私の夢にも出てきてるの。そしてあの転校生は私の夢の中で神様を名乗って私の大事な人たちを殺したんだよ……。すごくつらくて……かなしくて。正直死んでしまいたかった。……あ……、ごめん、暗いよね」
私が話したことで、一気に場の空気が重くなる。でも、予想はしてた。……だからあんまり話したくなかったんだけど今回は仕方がなかったから。でも決して紗矢が悪いって言ってるわけじゃないの。
「こっちこそごめんねー。嫌なこと話させちゃった。ごめんごめん。……じゃ、違うことはなそっか」
紗矢は私の言ったことを疑いもせず聞いてくれて、紗矢の明るいふるまいで空気は気まずくならなくて済んだ。
やっぱりこういう時の紗矢は元気を出させてくれる。
私の元気の源って言ってもいいくらい。……それはいいすぎ?
「……あ、そうだ。何日か前さ、私学校休んだ?」
「え……? 休んでないよ? どしたの急に」
ほんとにお屋敷に言ったのかだけを確認したかったから聞いてみたけど、どうやら私はお屋敷にはいってないみたいだ。
「……ううん。ちょっと聞いてみただけ。夢のせいで記憶があいまいでさ」
「そう……。急に変なこと言いだすから何かと思った」
紗矢はほっと胸をなでおろすように安堵の声を漏らす。
「……何でもないよ別に」
私は笑いながら言った。
「ふ~ん。なんかそういわれると怪しくなってくるけど……?」
「ほんとに何でもない~!」
「……大丈夫大丈夫。無理やり聞き出そうなんてしないからさ」
「ならいいんだけどね……」
私は少し笑うように言った。
「……ふふ。優しいでしょ、あたし」
紗矢は堂々とした表情で言った。
「うん。優しいよ」
「なによ、なんか素直じゃん」
なんでそんなに不満そうなのかはわからないけど紗矢が優しいのは確かだよね。
やっぱり紗矢といるの楽しいなぁ……。
カガミ様のことも忘れられる……。ありがたいものだよね。
私の親友はやっぱり最高だ。そのためにも、私はカガミ様を必ずどうにかする。
紗矢のためにも、自分のためにもね。
これからも定期的に紗矢に頼っちゃうかもしれないけど……。
よろしく……ってことで。
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