第22話 夢だったはずなのに
「……麻実。授業終わったよ。……寝てるかな?」
ドアが開き、紗矢がそう言いながら私のベットのそばへ向かってきた。
「う、ううん。起きてるよ。どうしたの?」
私は起き上がって返事をする。
……そっか。そんなに時間たってるんだ。
「ちょっと心配になっただけ。もう元気になった?」
「……どうだろう。なんか……ボーッとする」
「なにそれ~。自分の体調わかってなくてどうすんの」
紗矢は笑いを含んだ声でそう言った。
確かにそう。……でも微妙なところ……だからあんまり自分でもわからない。
「あはは。そうだよね」
私は笑って返事をする。
「……もう授業戻れそう?」
紗矢は体を傾けて私の顔を覗き込むようにそう言った。
「うん。だ……あ、ごめんまだここにいたい」
最初は大丈夫と言おうと思ったけど転校生のことを考えたら……やっぱり行きたくないな。
「……そう。早く元気出しなよ~。じゃね」
そう言って紗矢は私にひらひらと手を振って、保健室を出て行った。
なんで私ずっとこんなとこにいるんだろう。
……授業に出なきゃいけないのに。
ちょっと寝てよう……。
「もう起きてますの?」
突然かけられた声に私は驚いて目を覚ました。
……こ、この声は……。
誰だかわかってしまうのが、すごくつらい。
私は恐る恐るゆっくりと目を開けた。
……そこには予想通り転校生の姿があった。
「……!……なんでここに…‼」
私は驚いて思わず叫んでしまった。
「……人をゴキブリを見るような目で見るのはよしてくださいまし?」
転校生が私をにらみつけるようにそう言った。
……それはこっちのセリフだといいたくても思うように口は開こうとはしない。
このしゃべり方と、この容姿は絶対にカガミ様だ。それ以外何でもない。
「さぁ。私もそろったことですし、推理ゲーム……再開しますわよ」
「……あなたは……だれですか」
やっと私の口が開き、真っ先に飛び出したのはこの言葉だった。
「……私を見ても分かりませんの? 私は「神様」。カガミ様だとみんな言ってるでしょう?」
「なんで……? 夢じゃなかったの……?」
私の口から疑問が零れ落ちる。
カガミ様は私の口からこぼれた疑問を弾き飛ばすかのようにして当然だというようにこう言い切った。
「……私いいましたわよねぇ? 絶対に逃がさない……と」
カガミ様は不気味に笑う。
気づけばさっきの衝撃よりも衝撃が少なく体の震えもないようだった。心なしか恐怖感も少ない。
……もうこの衝撃はなくなったようだ。寝たから落ち着いたのかもしれない。
「……もう推理ゲームなんて……やりたくありません。どうせやっても人が死んでいくだけなんでしょう? なら私はみんなのためにいっそ死ぬ……!」
私はそう吐き捨てた。
……みんなが犠牲になるならみんなのために私が死んでしまう方が手っ取り早いもの。それに……もうみんなにいたい思いさせたくないこれ以上カガミ様の楽しみとなる人は増えないでほしい。
……カガミ様も心を入れ替えてくれたのならどんなにいい話か。こんなこと絶対におこってなかったのに。
「みんなに死んでほしくないのならあなたがきちんと推理して真相を暴くんですのよ。それにあなたは経験していますわ。……自分には謎の力、とんでもないものがあることを」
「……そんなのどうせまぐれです。カガミ様がそうだと思ってるだけで私には何の力もあるはずがないんです……! そんな力があるなら私はもうあなたを殺しているでしょうね。すべての元凶はあなたですから。……だから推理したって結局無駄なんですよ……。犯人はカガミ様しかありえないじゃないですか……」
「……それは前にも話したはずですわ。私は操っているだけでこれから死ぬ人に手を付けてはいないって言いましたわよね?」
カガミ様はあきれた顔でそう言った。
それはわかってる、けど……カガミ様が操ってるならカガミ様が犯人しかありえなくなるじゃん。殺される人に手を付けたつけていないは関係なく……。
ていうか……、なんでそうやって私に犯人を当てさせようとするの? 犯人がわかっても本人は操られていたわけだから何も覚えてないよ。だから結局犯人が見つかっても動機はないし本人も記憶にない、それにここには私が決定的な証拠を持っている。
これはもうカガミ様がやったしかありえないんだよやっぱり……。
……だからこんなことやってもただの無駄になってしまう。人が次々に死んでしまうだけ。……カガミ様の楽しみのために……大勢の人が命を落とすなんてひどすぎる……。やっぱりカガミ様がいるだけで世界は全く違う方向へと足を進めていってしまっている。
どんなに呼びかけてもきっと振り向いてはくれないだろう。……それなら、力ずくでも引き戻すから。だれ一人、カガミ様のせいで命を落すひとがいない世界に行くためには……やっぱりカガミ様の存在を消すしか……方法はないのかもしれない。
強引だとしても、周りのみんなが死ぬよりはよっぼどまし。
ちゃんとやりこなすから……私。
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