第21話 転校生
……な、なんでカガミ様がここに……?
震えが止まらない。多分今の私は真っ青な顔をしているだろう。
カガミ様の顔をみるだけで全身が凍えてしまうのではないかと思ってしまうくらいの寒気がした。
恐怖でろくに顔を上げられない私は、うつむいて震えを抑えるのに必死だった。
そして私は恐怖を無理やり抑え込んでゆっくりと顔を上げる。もう一度カガミ様であるかを確認するために。
すると、私が顔を上げた先に不気味に笑うカガミ様と目が合った。
「……!」
私はその不気味な笑顔で全身に悪寒が走り、私は思わず教室を飛び出して行ってしまった。
「……麻実……⁉」
私を追ってくる紗矢の声が響く。
さすがに紗矢には追い付かれ、私は紗矢に腕をつかまれたとたんへなへなと床に座り込んだ。
「どうしたの麻実? 急に教室飛び出したりなんか……!」
「……あぁ……う……っ。もうやだ……。もうやだ……」
「何…どうしちゃったの…?もうやだって何が…」
この騒動に、クラスのみんなが私の周りに集まった。
私は両手で顔を隠して「もうやだ」と小声でつぶやき続けた。
カガミ様が来てあの悪夢がまたあるのだけは絶対に嫌だ…。
「おい火神! 落ち着け……! なんだ、何があった?」
先生が私の名前を呼んだ。
……その名字で言わないで……。
私は恐る恐る顔を上げてこういった。
「……カガミ様が……来てるんです。……私もう人が殺されるとこなんて見たくない……!」
私は大声で叫んだ。先生は意味が分からず頭にはてなマークを浮かべるようにキョトンとした表情で見つめる。
そして他の教室に聞こえているかどうかも知らず、気づけば周りのクラスの人たち全員が教室から出でこちらを見ていた。
視線とか、そう言うものは気にも留めなかった。ただ、カガミ様が同じこの場にいると考えると恐怖でたまらないのだ。
「……麻実。何があったの? いいから言ってみて……?」
紗矢が優しい声で声をかけてくれるも、私の体は恐怖であふれ、私のからだがしゃべることを許そうとはしなかった。
そして私はふらふらと立ち上がり、おぼつかない足取りで教室に戻ろうとした。
「麻実。無理だよそれじゃあ……! いったん保健室いこ? ね?」
紗矢がふらふらとよろける私を支えながらそう言った。
私は小さくうなずくと紗矢は「先生、保健室連れて行ってきます」と先生に一声かけて私を支えながら、ゆっくりと保健室まで誘導してくれた。
私は紗矢にベットの上で転がるよう言われベットに倒れこむと、紗矢が心配そうに震える私の手を握った。
まだ震えは収まらなかった。
「……ねぇ麻実。落ち着いて答えてね。なんであんなふうになったの……?」
紗矢が私の顔を覗き込むようにしていった。
「……信じられないかもしれないけど…私、夢を…みたの。おばあちゃん家に泊まってる夢。そこはすごく大きいお屋敷、……そこで、ね。お母さんとか使用人さんとか……みんなが死んじゃうんだ。……あの転校生は、みんなを殺した犯人。私をもてあそんでた……! 人が死ぬのを楽しんで……! 私が苦しむのを楽しんで! 嘲笑って! もう嫌なの、うんざりなんだよ! カガミ様が来たら……またきっとみんな殺されちゃうんだ……!」
「麻実、落ち着いて。……それは夢なんでしょ? たまたま同じ顔の人が転校してきちゃっただけだよ。……大丈夫……」
紗矢が私を落ち着かせてくれようとしてるけど、私の震えと恐怖は一向に収まることはなかった。
……なんでカガミ様がここにいるのかがまったくわからないの……。
とにかく気持ちを落ち着かそうとしたいのに、私の体は全くいうことを聞かない。
どうして……なんで。あれが夢でも……転校生は間違いなくカガミ様だ。私に向けたあの不気味な笑顔はきっと私のことを知ってる。
……夢だって浮かれた私がばかだったんだ。カガミ様の言ってたのに。
「……ごめん。一人にさせてもらってもいい?」
私は紗矢に顔を向けて微笑みながら言った。
「うん。わかった。ちゃんとおとなしくしてよ?」
「わかってる。じゃあね」
「じゃーね」
紗矢が振り返って手を振って保健室を出ていく。
今のところ先生は誰も来てないみたいだ。
……もう教室に戻りたくない。このままずっとはさすがに過ごせないかな……。
ほんとにあれは夢じゃなかったって言うの…?
でもお母さんだって生きてたんだしそんなはずない。カガミ様だっているはずはないのに……なんで?
私じゃ何もわからない……。
あの私の意識が飛んだ時、その後どうなったんだろう……。お母さんは死んでしまってて……藍さんは仕事。お父さんも自分の部屋に戻っててもう一人の男の使用人さんも仕事だろう。おばあちゃん……はよくわからないけど……。
だからきっとみんなが私の意識がないのに気が付くのはずいぶんあとの話になる。
……だったらカガミ様はどうしてたんだろう。
私の意識がなくなる前に言った言葉……「あなたは一生私から逃げることはできませんのよ」
これが今の状況に関係しているのなら……本当に……夢なんかじゃなかったってことになってしまう。
絶対、夢であってほしいなんて願っても無駄なのかな。
カガミ様がいる限り私は何も信じられない。
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