第14話 不吉な予感

数時間たったころバンッ! と突然扉が勢い良くあいた。

どうやら不吉な予感は的中してしまったようだ。

そしてそこから見えたのはお父さんの姿。お父さんはすごく焦っているのか汗をかいており、心なしか息遣いもあらい。

とにかく何かを伝えようと大急ぎでこちらに向かってきたようだ。

「どうしたのお父さん……」

「麻実、お母さんの様子がおかしいんだ……!」

お父さんは震えた声でそう言った。

「……お母さんが……⁉」

私はその場から立ち上がりお父さんとともにお母さんの部屋へとむかった。

ベットに横たわるお母さんの隣にはお医者さんらしき白衣のおじいさんが様子を見ているようだった。

「……あの、お母さんに何が……?」

私はあわてたお母さんの症状を尋ねた。すると医者は「それがわからないんだ」と困った表情で言う。

私はその医者の言葉をきいて慌ててお母さんに駆け寄り様子をみた。

お母さんの顔は赤くなっていて「はぁはぁ」と呼吸する息遣いも荒い。熱があるみたいで、額には冷やされたタオルがのせられていた。

一見ただの熱だろうとも思うが、お母さんは意味不明なことをつぶやき続けていた。「助けて」だとか「嫌だ」「許して」「死にたくない」自分がいま殺されそうな状況に置かれているような言葉を次々に発し、みんなを困惑させていく。

もしこれが、お母さんの死を迎える前兆だったのだとしたら……なんとしても助けなければならない。

でも助ける方法なんて……何も思いつかない。

むしろ頭の中は真っ白だ。

そして私はあることを思い出し、部屋を飛び出して自分の部屋へと向かった。

カガミ様、どうか姿を現してください。

直接聞いた方が早いだろうとおもい、カガミ様を呼んだ。


「……なんですの?」

カガミ様は困惑する私に問いかけた。

「……なんですかあれは……!」

私はカガミ様に近づいて叫んだ。

「あっははは……‼ 面白いことになっているようですわね。……まあでも、まさか死んでしまうだなんて。私も予想がつきませんでしたわ。」

カガミ様は口に手を当て高く笑う。

……カガミ様の言葉を信じてしまった自分がばかみたいだった。

ただただ、敵だと思っておけばよかったのに…。

あとから後悔するようなことをしてしまうのは私の悪い癖だ。

「じゃあ人を操ってるのは嘘なんですか……?」

「……ふふ。どうかしらねぇ? 残念ながら私はそういうことにはこたえられないんですわ」

カガミ様はそんな、私をあおるような言葉を投げかける。

さっきまでの親しさはもうここには残っていないようだ。

「……神様だと慕われた神様も、人の不幸を楽しむ悪趣味な悪魔だった……ってことですか」

私は小さくつぶやいた。

残念ながら神様、カガミ様はこういう人だった。人を助ける神様ではなく、人の不幸を楽しむ神様。……もう、悪魔同然だ。

小さい声で言ったつもりだったがどうやら声は聞こえたらしく、カガミ様は怪訝そうな顔をこちらに向けると、こう返した。

「……でもこの力を持っている以上神様としか言いようがないんですの。……悪魔だなんて悪い響きですわね。私はそんな穢れた存在ではありませんのよ。気品ある美しい存在であらなければ神様としての地位が下がってしまいますものね?」

カガミ様は小さの低い私を馬鹿にするかのようなそぶりをみせそういった。

「そうですね。カガミ様のせいでまわりに悪影響を及ぼすことがなければいいのですが」

カガミ様のせいで周りまでこうなってしまってはもうだめになってしまう。せめてもの願い。

「……私はそれはそれでいいのですけれどもねぇ?」

カガミ様がそういうと、私は一つため息をついて立ち上がりお母さんのいる部屋へと向かった。


「……お母さん、大丈夫?」

私はドアを開けてその隙間から顔を出して問いかける。

それに気づいたお父さんがこちらを向いて残念そうな顔を浮かべる。

……何かが、あったんだ。

「……。お母さんは……」

「言わなくて、いいよ」

お父さんの開きかけた口を私はうつむいて止めた。

……あんな些細なことで人が……。

カガミ様はこんなのを見て本当に楽しいの……? おかしいよあの人。

私の心は、なぜか落ち着いていて感情に身を任せることはなかった。それがせめてもの救いだと思う。現実を知った私はその場で固まって、うつむいた。

そして状況をやっと頭に入れることができたのか、その場で泣き崩れた。

「……っ……。なんで……っこんな……。お母さん……」

そりゃあすこし好きではなかったけど、好きじゃなくてもお母さんだもん。その事実は誰にもかえられない。だからもう泣くしかなくて、どんどん感情があふれてくる。この前とは違う、罪悪感。あの時はもう状況理解が追い付いてなかったためもう何も考えられなかったけどあれは確かに絶望感だった。でも今回は違う、お母さんの死を受け入れて……現実逃避なんて絶対にしない。

……ただ、カガミ様は許さない。

いくら神様だからって言ってこんなの許されるはずがないじゃない。

絶対に許さない……。もう人なんて殺させない。

事件の犯人を見つけてこのゲームに勝つ。

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