第6話 正反対な二人の令嬢
さて、やっと第4部での『素の』テレーサ初登場回でした。
前話でも出ていましたが、アレはあくまでも外面同士の交流でしたからね。
「実はこのくらいは精神的に距離が近いですよ」というのを見せるための回なので、ある意味『真のテレーサ初登場回』と言えるかもしれません。(笑)
第3部ではテレーサと色々ありました。
テレーサが近づいてきた理由が分からず訝しむところから始まり、認識が「あれ? 話してみると面白い子かもしれない」に変わり、その後には彼女の父親や派閥の思惑のせいで喧嘩して、それでも仲直りした2年前。
あの時からまた歳月を積み、二人の仲は更に深まっています。
特に第3部を読んでくれている方が読めば、仲直りした当初よりも「随分と硬さが摂れたやり取りだなぁ」と思ってくれた……らいいなと思って書きました。(←最後でちょっと自信が無くなってきた。笑)
さて。
裏話を第2部からずっと読んでくださっている方はおそらく知ってくれているでしょうが、私は「ギャップ」と「対比」が好きです。
という訳で、今回のセシリアとテレーサにも正反対のギャップを盛り込んでいます。
それが「学校を楽しむテレーサ、楽しめないセシリア」です。
いやまぁセシリアも、実際に生活すれば楽しくない事も無いのでしょう。
どれだけ嫌な環境に放り込まれても、少なくとも現状は身体的・精神的に追い込まれてはいませんからね。
普通に生活する中で楽しいと思える瞬間はあるんです。
だけどセシリアの場合、比較対象である『家』が、今までかなり自由にさせてくれていました。
セシリアは既に、勉学関係の関する『すべき事』は6歳時点で既に前倒しで終わらせています。
ですから10歳以降、社交関係で新たに出来た『すべき事』をする時以外は相変わらず、自分が好きなように時間を使っていたのです。
しかし学校では、基本的には常に周りの目があります。
周りの目がある以上、「伯爵令嬢らしく居る事」はセシリアにとって貴族の義務です。
だからどうしても気が抜けない。
家に居る時のように好きな事を手放しでする訳にもいかないし、既に習得を終えている勉学に励む「ふり」さえしないといけません。
因みに「ふり」とは、真面目に授業に出席する事。
本当は既に知っている事を習う授業なんてつまらない以外の何物でもないのだが、それでも頑張って、真面目に授業を聞いている……という体裁を保っています。
つまらないのに。
そう、つまらないのに……。
ならば前倒しして全てを習得、だなんて真似をしなけりゃ良かったのでしょうが、勉強を始めた4歳当時のセシリアは、学校の事も授業内容の事も、それから習得・未収得に関わらず授業には出ないといけない事も、実は何も知りませんでした。
幼かった彼女にとって、多分これが一番の誤算だったでしょう。(笑)
それに対してテレーサは、家ではいつも「侯爵令嬢たるもの」と言われ少々厳しめに育てられました。
彼女は国内の政治派閥『保守派』筆頭の娘ですし、第二王子の婚約者最有力候補でもあります。
だから厳しくされたのは仕方が無かったのでしょうが、それ故に家族の目が無いこの場所を彼女なりに謳歌しています。
もちろん頭のいい子ですから、彼女とてここが社交の場と完全に切り離されてはいない事など分かっています。
しかしそれでも周りのちょっと緩い空気感が、彼女にとっては嬉しいものだったのでしょう。
という、育った環境が生んだ二人の対比を今回は書いてみました。
和やかな友人との休憩時間です。
セシリアにだって、たまにはそういう時があっていい。
が、ごめんなさい。
次話で暗雲が立ち込める事になります。
ぞう、ざまぁフラグ再登場です。
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