第3話 気高く謙虚で聡明な、貴族による宣誓劇
さて。
しょっぱなで早速セシリアの『やらかし』について読んでいただきましたが、いかがだったでしょうか?
ここまでの部分は、セシリア・オルトガンという人間の人物紹介のようなものでした。
彼女は、本当は自分の好きなこと以外やりたくない筈です。
しかしそれ以上に、彼女は幼い頃から両親から刷り込まれた『貴族としての自分』を決して蔑ろにすることも出来ない。
それに加えて実はちょっぴり「アンジェリーの人を虐げる乱暴な措置に腹が立った」という感情的な対抗心もあり、セシリアは瞬時に思考を回し即興で演説をしました。
アンジェリーをけん制し、貴族の欣嗣を守り、今後の貴族の子女たちへの同様の言動への抑止を図るためにする、最も効率的な一手を求めて。
結果はこの通り。
シリーズを通して読んでくださっている方にとっては「セシリアらしいな」という感じに思えたかもしれませんし、「あぁセシリアって確かにこういう子だったわ」と思い出したかもしれません。
第4部から読んでくださった方にとっては、もしかすると「ふーん、えらく理想論を唱える主人公だな」と思えたのかも。
本文にも書きましたが、セシリア自身自分の入っている事が一種の理想論である事は十分に理解しています。
しかしそれでも彼女はそこを目指すでしょう。
それこそ自身の気持ちを犠牲にしても。
この物語は基本的に、伯爵令嬢・セシリアが周りの人間や状況に巻き込まれつつ返り討ちにする物語です。
が、同時に彼女は殊『貴族の義務』となると不器用なくらい頑なになります。
どこかいびつな存在ですよね、セシリアって。
でも敢えて、そういうキャラクターにした節もあります。
私は彼女に、誰かの増長を叩きのめし弱い立場の誰かに手を差し伸べる……だけの物語にするつもりはありません。
結構先のネタバレをすると、彼女が今まで救った相手はやがてそんな彼女のいびつさに手を差し伸べる時が来ます。
第3部でセシリアの女友達との仲直りに二人の少年が手を貸したように、もっと大きな事件が起きる未来でそれぞれに彼女を助けるべく動くでしょう。
12歳になり、セシリアは自らの振る舞いに一層磨きをかけています。
一見すると完璧な人間に見えるかもしれません。
しかし彼女は、あくまでもその時々の最も効率的な最善手を選択するだけの少女です。
最善であるだけで、完璧ではありません。
この騒動で、彼女は良くも悪くも目立ちました。
それを歓迎する人も居れば、忌避する人も、嫌悪する人も居ます。
今後は学校生活の中で、そんな人間に揉まれる事になるでしょう。
これこそが『フライングやらかし』をした弊害です。
その弊害を、今後も面白おかしく眺めってやってくだされば、作者みょうりに尽きるというものですね。
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