第2話 捕らえられた兎

親の仕事上、転勤が多かった家族は

色んな所を転々としていった。


そんな家族に生まれた私は、

幼なじみなど覚えてるはずもなかった。


小学生の頃、私は親の地元の学校へと転校をした。以前通っていた学校では、沢山の友達がいた。私は、お別れの日に誰もいない教室で黒板にメッセージを残した。私は、静かに涙を流した。

人との別れを経験することは、とても辛いことだ。


転校してきた学校で上手くやっていけるのだろうか。それだけが心配だった。

そう思っていたが、案外周りは優しかった。

でもそれは、はじめだけだった。


学校生活にも慣れてきた頃、

地方からでてきた私は、周りと少し違うことに気づいていなかった。

授業中、音読がはじまった。

一人ひとり読んでいく中、私へと出番が回ってきた。

その時だった。何人かの視線を感じたのだ。

私は音読を進めながらも、周りの視線が気になって仕方がなかった。何か悪いことでもしたのだろうか、私は必死に考えたが、それでも心当たりがない。

読み終えて席に座ろうとしたその時、私は恐る恐る視線の先に目をやった。

すると、獲物を捉えるかのような鋭い目を私に向けているのが分かった。

一瞬にして、私は背筋が凍ったような感覚になったと同時に恐怖心が湧いた。


何故そんな目を私に向けているのだろうか。

その目の意味は何なんだろうか。

その子の普段を知ってるからこそ、その目は

明らかに私を嫌うような目をしているのが分かっていた。

その授業中、私は机の上に置いた教科書をただ見つめていることしかできなかった。


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