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「えー、明日は、健康診断を行う。とは言いつつも、お前らはバリウムを飲んだりはしない。……本当、羨ましい限りだよ。……ゴホン。えー、連絡を続ける。

 明日は男女共に体育着を持参すること。また、男女で登校時間が違うからな。女子は午前8:30に、男子は午前11:30までに、着替えて着席した状態でここにいるように。去年も健康診断はやっているから聞いてはいると思うが、特に男子。登校時間を間違えた時の最悪の場合は退学だ。去年度も変わらずそんなバカはいなかったが、5年前くらいに退学を食らったやつがいたんだよな……。そういうバカにならないよう、気をつけておけ。11:30だぞ。」









「明日、健康診断ですね。」


 夕食時、朱莉はあまり箸を進んでいないな、なんて思っていたら、突然明日の健康診断の話を切り出してきた。


「そうだな。あー、確か登校時間違うよな?女子は8時半だったか?」


「8時半ですから……いつも通りですよね。」


「鍵は渡してあるし、いまも持ってたよな?時間的にも俺と入れ違いになるだろうから、忘れると締め出し喰らうぞ。」


「分かってますよ。いつも持ち歩いてますので。」


 朱莉にはもう鍵を渡してあるので、持っていくのを忘れさえしなければ明日は家で待っていることになるだろう。


「……体重、去年よりあんまり増えてないといいですけど……。」


 彼女は視線をお腹に移し、そのあたりをさすりながらそう言った。


「見た感じでは健康的だし、べつにいいと思うんだがな。」


「……体重が増えてる前提で、話を進めないでください。」


 いつもあれだけの量を食べていて、少しも増えていないと考える方が無理があろう。それに、最近体重計のよく乗っているみたいだから、気にしているものとばかり思っていたが。


「増えたら嫌な理由でもあるのか?」


「え?………。」


 彼女は大半の男性から好意を寄せられる程度には顔も整っている方であると思うし、彼女が今気にしているスタイルも十二分に良い。少し体重が増えた程度でここまでビクビクすることはないと思う。だが彼女がどう思っているのか、それは俺には分からない。だからそう聞いたのだ。


「笑ったりしたら許しませんからね?……その。重かったら、好きな人にお姫様抱っこしてもらえないじゃないですか。」


 帰ってきた答えは、何とも可愛らしいもの。頬を赤らめてこちらを見る彼女に、笑うというよりも、微笑ましいという思いの方がよく当てはまった。


「あ、あとは、水着とか布面積の小さい服を着た時にお腹をたぷたぷさせたくないっていうのが……。」


 彼女のいいわけの間、俺は無理矢理に顔の筋肉のゆるみを戻して、いつもの表情で居られるように努めた。


「……そんな太ったりしてないだろ。」


「しますよ。ずっとパクパク冬樹くんの料理を食べていたら、3キロも増えてた時があって。頑張って元に戻しましたけど……またいつか、もっと増えてしまうかもしれないです。」


「朱莉の言う『いつか』なんて来ないから安心しろ。いつもランニングに行って頑張ってるだろ、大丈夫だ。」


「そうですかね……?」


「ああ。だから、ちゃんとご飯を食べてくれ。」


 朱莉が食べるからこんなに用意しているのだから。こんなにあっても俺は食べられないし。


「……分かりました。」


 やはり明日のことを気にしているのか、いつもより幾分か箸のスピードは遅くなっていたのだった。












 風呂に浸かって、さっきの会話を思い出します。


『朱莉の言う『いつか』なんて来ないから安心しろ。』とは言われたものの。


「まさか、ここがおっきくなって重くなってるか不安だ、なんて冬樹くんには絶対に言えないです……。」


 私は自分の胸に手をやって、上下に動かします。最近、ブラもキツくなってきている気がするんですよね……。


「身長の代わりにここばっかり……。」


 身長は中学2年生の頃から1ミリも伸びてはいません。代わりに胸部に全ての栄養が行っているのでは、なんて父と母から言われたこともあります。今では、その通り過ぎて泣けてくるくらいです。


「冬樹くんの隣を歩く時、ずっと見上げることになってしまいますし……。」


 最近また身長が伸びてきたらしく、180センチ近い身長の冬樹くん。かたや、160センチくらいの身長しかない、私。中学2年生になったあたりから一ミリたりとも身長は延びていませんが……もう少しくらいは、身長だって、伸びてもいいと思うのです。流石に180……いえ、170センチもいらないですけど、せめてあと5センチくらいは、ほしいものですね……。















 ———後書き———

 どうも、執筆なんて知ったことか!と、《死想顕現界域 トラオム》進めておりました、クリームヒルト&シャルルマーニュを召喚して自室で叫び散らかしたしろいろ。です。ローラン&コンスタンティノス11世といった他のPUサーヴァントは、PU2が来た時に引くか否かを決めます。もちろん、トラオムのストーリーは読了し、シャルルも再臨は完了、再臨絵も解放してきたので、あとはずっとクリームヒルトのための周回とスキル上げです。きっと次の投稿は、クリームヒルトの再臨が終わった後ひと段落してからでしょう。では、また。

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