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「冬樹君は部活入らないの?」


最早当たり前であるかのように、俺は堂島と海原と帰宅……いや、彼らが買い物に行くところに同行してくるだけか?そんな感じのことをしていた。もちろん2人の部活がないときだけだったし、時々隼人がついてくることもあったりはしたものの、大抵三人だった。


「ああ。特にやりたいこともないし、帰ったら家事が待ってるからな。」


今は分担して家事ができるとはいえども、学校がある昼は何も出来ない。朝と夜で家事全てこなすには、部活なんて入っていることなどできないのだ。


「そっか。一人暮らしだったっけ?」


「あ、ああ。まあその話は追々していく。」


海原と堂島が、情報を漏らさないと確信した後になるだろうが。


「そっか。残念だな。」


「残念ってどういうことだ?」


これまで出てきた話題に、今の言葉に該当するものがない。


「将棋部、入らないかなって思ったんだけどさ。」


将棋か。叔父上の相手をさせられたこともあったな。俺が勝つともう一回、もう一回とうるさいので適当に負けていたから、俺に実力があるとは思えんが。


「まあ気が向いたらでいいよ。一応、部として存続しそうなくらいは、部員もいるからね。……まあ、ほんとにギリギリだし。僕らが卒業した後は……って顧問も言ってたけど。」


「まあ、あまり参加できそうにないだろうからな。すまん。」


「いや。気にしなくていいよ。部活なんて任意でやってるものだしね。好きでもないのに入るとか辛いでしょ。」


「僕もバレー好きだから入ってるしね!」


「その割には休み多くないか?」


こうして帰るのが同じということは、休みが多いということだ。


「うん。次に大会があるの秋だから、一旦オフだってさ。自主練はしておくようにとは言われるから、ランニングとかはしてるんだけどね。」


「普通、練習するんじゃないのか?」


運動部に所属したことはないが、去年クラスにいた野球部員らしき生徒が、『夏休みも盆休み以外ずっと活動だぁぁぁっ!』と叫んでいたところを鑑みるに、こういう時こそ練習に費やすのではないか。


「そうだよね。おかしいよねぇ。でも、赤点で補習の部員が去年出たからね。一ヶ月は自主トレと勉強に徹すること、って言われたよ。」


赤点。確かうちの基準は40点以下だったか。


「なんかまあ、そんな感じでさ。僕はもちろん中の上は取ってるつもりだよ?冬樹君みたいに上の上まで取るのは無理だけど。」










「冬樹くーん、この番組面白いですよー!一緒に見ませんかー?」


食後は暇なもので、食器を洗ったり洗濯物を干したりするだけで終わる。彼女の下着に関しては、最初こそ彼女も少し警戒していたのだろうが、「無表情で私の下着類を干してるの冬樹くんを監視しているのは、なんだか自分が馬鹿らしくなります」とか言って、三日目あたりから気にしている風にもしなくなった。そういうことくらい、ずっと気にしておいて欲しいものだ。ただそれを言っても、「冬樹くんはそんなことしないって知ってますし、大丈夫です。」なんて言って笑顔を浮かべるのだ。


「まあ、彼女が俺をどう思っていようと関係ないか。」


「冬樹くーん?」


洗濯物も干し終わったので、


「どうした?何かあったか?」


と返す。


「これ、一緒にみませんかー?」


まだ、その話をしてたのか。














「可愛かったですね……。」


彼女が見ていたのは、動物関連のバラエティ。『可愛い映像集』なるものを見て、終始「可愛い」を連呼していた。生き物を飼ったことはないが、犬猫など世話が大変なだけな気がしてならない。


「動物、好きなのか?」


「好きです!ただ家では飼えないというか、飼っていても構う時間が作るのも大変だったので。ぬいぐるみを代わりにしていたんです。」


「そうなのか。」


令嬢ともなれば、作法の勉強なり、することは多いかもしれない。俺は昔父と母に叩き込まれたっきり、特に何も言われていないが。


「そのせいで部活とかも入れませんでしたし……。」


「どういうことだ?」


「実はですね。私、作法を覚えるのに手間取りまして。よく先生を困らせました。花道やら茶道やら、やることが多すぎて、ごちゃごちゃになってしまって。」


まあ確かに、「道」とつくものは作法も色々あるか。


「部活、入れてたら何か入ったか?」


「え?あー、どうでしょう。養蜂ようほう部ってのがありまして、気になってはいたんですが。」


養蜂?すごい部活だな。


「ただ、土日の活動でしたから。土日は作法の勉強で追われてましたので、そんな暇はないと思ったのです。あとは単純に、はちって怖いな、と。」


蜂が怖くて養蜂なんて出来るのか、とか言われたんだろう。


「入りたかったか?」


「どうでしょう。珍しかったから、という理由だけだった気もします。」


「ま、珍しいものではあるな。珍しい部活といえば、ウチの中学には茶道部があったぞ。俺が珍しいと思っただけで、本来珍しいかは知らんが。」


お茶を立てたり、和菓子も食べたりしますとか言って部活動の紹介をしていたんだっけな。和菓子目当てで体験しに行ったやつが結構いた記憶がある。


「あーあー茶道なんて何も聞こえませーん。」


……。何やってるんだ……。


「フッ」


耳をパタパタさせ首を振って、聞こえないアピールをする。それが何だか可愛らしくて、俺は吹き出してしまう。


「むっ。笑いましたね?」


いつしかそんな事をやめており、俺を間近で見ていた。


「近い。……まあなんだ、可愛らしかったからな。」


「可愛らしい……ですか。」


自分ではそう思ってはいないのだろうが、十分に可愛らしいと俺は思う。


「ふふふ。そうですか。」


と、嬉しそうに言った。


最近の朱莉がわからない。感情の浮き沈みが激しすぎやしないだろうか?











———後書き———

どうも皆さん。しろいろ。です。最近めちゃくちゃ暑いですけど、今日は湿気こそ高いものの、涼しいですね。ちなみに、扇風機の前で「あああああああ」ってやりながらこの話を考えました。ちょっと寒かったです。

このあとは、まだ出てた羽布団を仕舞います。まだ出てるの、と思った方、その通りです。思う存分呆れ返ってください。めんどくさかったんです。



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