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「……。本当に来てるのか……?」
電話がかかってきたと思えば、それは来客の知らせで。且つそれは、俺が今まで避けてきた祖父と祖母で。俺は混乱していた。
「取り敢えず帰らないと、だな。」
ふうっと息を吐く。それにより幾分か冷静さを取り戻し、家までまっすぐに帰ったのだった。
「お祖父様……お祖母様……どうしてここにいらっしゃるのでしょうか?」
10年見てこなかった、2人の顔。両親の死から一度も会っていない2人が、俺の家の前にいた。
「……お?おお!冬樹か!元気だったか?」「それにしても大きくなったわねぇ……」
「とりあえず中に入れさせて下さい。中で聞きますので。」
「あ、ああ。すまんな。」
鍵をポケットから取り出して鍵を開ける。
「どうぞ。」
「ありがとう。」「お邪魔するわね。」
「取り敢えずそこにかけてください。昼食はいりますか?」
そのまま祖父母を部屋に案内し、ソファーに座ってもらった。
「いや、結構。食べてきたからな。」
「そうですか。じゃあ30分ほど時間いただきますね。朱莉、食器出したりするから手伝ってくれ。」
「は、はい。」
俺はなるべく祖父母のことを考えないように、料理に集中することにした。
「さて。こうして会うのは、実に10年ぶりかな?」
「そう、ですね。」
「そんなに私たちが怖いかね?」
「そんなことは……。」
そんなことはない、と言うはずだった。だが、それは途中で止まってしまった。
「まあ、仕方ない。私たちは冬樹を責める気はないということだけ、よく覚えておいてくれ。私は、
父と母を殺した、なんて言われる俺を、責める気はないと。祖父はそう言った。
「……そうですか。」
その後は特に父と母のことに触れることなく話は進み、俺が2人のコーヒーをまた注いだあたりで。
「ああ、そうだ。朱莉さん。君に話がある。冬樹は一旦席を外してくれないか?」
「はい、分かりました。お話終わりましたら声をかけてください。」
「さて。新堂朱莉さん。……ああ、かしこまる必要はないよ。」
優しい声のはず。なのに、私はどうしても、彼から放たれる圧に萎縮してしまいます。
「は、はい。」
「私は君の御祖父の友人としてここにいる。北代家の元当主としてではないよ。意味が分かるね?」
かしこまる必要はないと、そう言ってくれているのです。
「……わかりました。出来るだけそうできるようにしますね。」
「ああ。ありがとう。早速だが、何か質問はあるかな?」
「そう、です、ね。どうして、冬樹くんの父親であった俊裕さん……でしたか。優一さんの方が弟さんですよね?名前として少しおかしくありませんか?」
もし、彼が北代家の元当主として来ていたのなら絶対に聞けないことでしたが、彼が祖父の友人として来たと言ったから聞けました。
「……俊裕は胎児発育不全だったんだ。ただそれだけなら良かったんだが……というか構わなかったんだが……。こちらが本当の理由だ。俊裕は体も本当に弱くてね。だからあまり表に立たせるつもりはなかった。それとは違って優一は健康に育ったからね。俊裕の代わりに当主にするつもりだったから、「一」を名前に入れたというわけだ。ただ、俊裕はそのあと体も成長していき、健康になってくれた。出来を比べるのは酷だが……、正直2人のうちどちらが優秀かと言われれば、俊裕だった。だからだよ。」
「そ、そうだったんですか。」
聞くべきではなかった気がします。そんなに重い話だったなんて。
「じゃあ次は私からいいかな?」
「は、はい。」
「君は冬樹のことをどう思っているんだ?」
「え?」
突然の質問。
「冬樹に対して、どういう感情を抱いているのか、と言っているだけだよ。」
「冬樹くんに……。」
「同居はあくまで、『お願い』という形をとっておいた。君が嫌なら断れるようにね。ただ君は了承してくれた。いくら幼い頃にあったことがあるとはいえ、年頃の男女だ。そういう感情がないというわけではないだろう?」
「……分かり、ません。」
「そうか……。」
「でも、一緒にいると、楽しくて。でも、時々冬樹くんは辛そうにするので。見ていてあげたいなって、気持ちになるんです。」
好きかどうかなんて、分からないですけど。一緒にいると冬樹くんを見ているのです。見ていないと、またどこかに行ってしまう気がするから。
「冬樹のこと、気に入ってくれてるのね。ありがとう。」
「冬樹が迷惑をかけていたりしないか?大丈夫か?」
「そんなことないです。むしろ、私が迷惑をかけてしまっている方というか……。」
ご飯の件然り、迷惑しかかけてない気がしますけど。
その後は雑談という形になりましたが、最後の方で少し問題が。
「今後も一緒にいてやってくれるか?」
「はい、もちろん。」
「……それは結婚してくれるということかな?」
「えっ!?」
突然の「結婚」の二文字。びっくりして大声をあげてしまいます。
「こんなにいい子が孫になってくれるなら私も嬉しいわ。」
「ちょっ、ちょっと待ってください。そういう訳では……。」
「冗談だよ。ただ、私たちは賛成だからね。」
「は、はい。」
その日、朱莉は。俺が話しかけても少し目を逸らしてしか、話をしてくれなかった。さらに、祖父からは、『取り敢えず頑張れ』とメッセージが届いた。意味が分からないったらない。
……何か気に触るようなことでもあっただろうか?
同居人から避けられるのは困るので、明日は少し夕食を豪勢にして機嫌を取るか、なんて考えたのだった。
もちろん、食事をなるべく豪勢にした次の日には、機嫌が戻っていた。やはりなにか、俺に問題があったのだろう。気をつけねば。
———後書き———
ねえちょっと。僕、しろいろ。なんですけど、とりあえず聞いてください。
カクヨム内で本探して読むじゃないですか。お、これ面白そうだな、と思ってフォローしようとするじゃあないですか。そしたら、ですよ?
とにかく動作が重くて重くて!フォロー出来ねえんですよ、皆様の投稿される作品が!!これは早く書けよってことですか!?確かに、全然やる気なくて書いてませんでしたが!
ということがあったので、贖罪も兼ねて投稿しました。以上しろいろ。でした。
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