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「なんかもう色々と限界なので、ティータイムにします。」
突然立ち上がり、そう宣言する隼人。9時から始まり、12時半に昼食。休憩などを挟み13時半から再開した勉強会は、3時半過ぎに突然立ち上がり声を上げた隼人によって終わりを迎えた。
「賛成です。ティータイムにしましょう。」
朱莉がそう言って隼人に同調したことにより、全員がふうっと息を吐き脱力、勉強モードを解除する。もちろん、俺以外である。
普段勉強しない男にしては、よく頑張った方ではないだろうか。約五時間半、ふざけもせず、よくやった方だと思う。
まあ、毎日予復習をしていないからこんなことになるのだが。
「ん、これ美味しい……」
天宮は皿に並べられたクッキーを食べた後、ぽつりとそう言った。本当に小さな声で、俺はすぐ隣にいたから聞こえた程度の、そんな小さな声を、
「だろ?冬樹ってやべーよな。」
隼人はさも当たり前であるかのように、言葉を返す。
「えっ。」
驚きでそう短く声を上げる天宮と。
「あっ。」
小さく声を上げる隼人。
「なんで聞こえてるんですか?」
「え?いや、今言ったのってこと?」
「はい。」
「それは……「隼人、やけに耳だけいいのよね。」
言葉に詰まった隼人に、助け舟を出す美晴。
実際これは嘘である。天宮があまり馴染めていないのを、隼人はずっと気にしていたので、口元が少し動いたのを見逃さず何を言ったのか読み取っただけである。
簡単に言ってはいるが俺もこれはすごいと思う。読唇術とか言っていたか。隼人は、好きなことには積極的に関わっていくからな……。
「そ、そう。俺、結構耳よくてさ。」
まあ、気にかけていたなんて言うのが恥ずかしかっただけだろうが、隠さなくていいだろうと、俺は思ったのだった。
「……それでさ。これ、冬樹が作ったんだよ。すげーよなって。」
強引に話を変えにきたな。
『もぐもぐもぐもぐもぐ』
……家に帰ったら作ってやるから、今は一心不乱にクッキーを頬張るな、朱莉。
「へえ、これを?」
強引に変えられた話題にすぐに乗る天宮。
「これを……。あれ?クッキー、もう半分ないじゃないですか。」
「んはっ!?」
ものすごい量を頬張っていたのだろうか。苦しそうにした朱莉は、手元にあった紅茶を飲んで落ち着く。
半分以上食べた犯人は朱莉だ。俺は別に止めていないが俺は悪くない。……多分。
「ゲームやろーぜ!これ!」
彼が持っていたのは、所謂テレビゲームというやつだ。
「それは?」
レースゲームだろうか?ライオンやらキリンと言った動物たちがレースをしているところがパッケージには載っていた。
「アニマルカートね。私はやるわ。天宮さんは……「紫音でいいですよ。」
じゃあ、紫音ちゃんね。紫音ちゃんはやる?」
……ティータイムの次はゲームをやるらしい。
「やります。」
なぜノリノリで返事をするんだ天宮。
「あのぅ……。私、未経験ですけど、やってもいいですか……?」
「もちろん。ああでも……おい冬樹、またクッキー持って来いよ。」
「す、すみません、食べ過ぎちゃって。」
「いやいや、朱莉さんは悪くねえよ。悪いのは持って来る量を誤った冬樹だからな。」
「理不尽だ。」
ティータイムを取るということも、そこで俺が作ってきたクッキーが出るということも、俺は一言も聞いていない。俺の主張は妥当だと思う。
「まあいいじゃんか。」
「……また今度だからな。」
「よっし。んで、冬樹はこれやんのか?」
「俺か?いや、パスしておこう。こういうのは分からないんでな。一回やったことはあるんだが……どうも下手でな。それっきりやったことはない。」
「ふーん。じゃ、俺の操作とか見ながら次のレースでやってみれば?俺、これ上手いからさ。」
まあ、少しくらいやるのもいいかもしれん。何事も経験だ。
「見るくらいなら。」
「よし、決まりだな。朱莉さんに天宮さんは?」
「簡単な操作だけ教えて貰えれば。」「私は知ってるから、あーちゃんに教えておくね。」
どうやら2人共やる気満々のようだ。
『3、2、1、GO‼︎』
レース開始を告げる大きな音がして、隼人・美晴・朱莉・天宮のレースが始まる。
「ああっもう!アイテムが取れません!」
もうコース一周目の半分まで到達している、現在一位の隼人に対して、現在最下位の朱莉は、アイテムボックスが置かれたところでとれないとれないと苦戦している。……そんなもの置いておいて、先に進むべきだと思う。周回遅れになる前に。
「ウフフフ……」
いつになく本気の目をしている美晴。今の目なら人を殺していても頷ける、そんな顔で、前を走る隼人にとげとげがすごいなにか(後で聞いたらウニとのこと)を投げつけることで痛めつけている。
隼人は真後ろから追跡する美晴から投げつけられる黒い物体を避けつつ、1番前を疾走する。恋人が自分を潰しにかかっていることを知り、非常に焦っている。
天宮はと言えば。
「……」
無言で美晴と隼人の後ろについて行っていた。
「きゃっ!?」「うわっ!」
美晴が放った爆弾に、自分もろとも巻き込まれてスリップした瞬間。
「……!」
それまで温存していた加速アイテムを一気に使って、天宮が一位に躍り出る。そんな、(俺からすれば)非常にレベルの高い戦いを繰り広げる三人の横で、完全に周回遅れとなった朱莉が、アイテムを入手する。
「チーターさんです!!」
なんと、彼女が選んだキャラクターであるうさぎがチーターに変身。とんでもないスピードでおいあげる。まあ、周回遅れなのは変わらないが。
「ああ……切れちゃいました……。」
チーターへの変身が解けた瞬間、そこにあったアイテムボックスをまた叩いた、
もちろん、2位美晴・3位隼人との差はとんでもなく開いているため、こんな程度で縮まることないはずだが、それから4回ほど連続してそれを出し、視界に隼人と美晴を捕らえたその時。
『GOAL‼︎』
レースが終了した。
———後書き———
どうも、突発性やる気失せる病のしろいろ。でございます。
ゴールデンウィーク……今年も特にやることなく家で本の片付けと夢の国に行くので追われておりましたが、皆様は何をしておりましたか?
……僕ですか?いい加減僕も外に出ないとなぁ、なんてゴールデンウィーク前半は思ってはいたものの、外に出れば雨に降られますし、暑いし、暑いし、面倒くさいしで前半で嫌になって、後半には外に出ようと、前半にたてておいた予定も全て無かったことにして目を瞑り、家で寝っ転がりながら「にじさんじ」なるものの切り抜きを見てました。友達から送られてきてたものでした。
外?出るわけないじゃないですか。家にいるんですよ。家で寝……なんでもないです。
本の木が群生する僕の家からこの文を書いていると、なんだか本気でヤバい気がしてきましたので、そろそろ食料とかの買い出しに出ます。
新作書いたんで、見てください。……まあ、気が乗らないと続けませんが。
ではまた。
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