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『もしもし?お?ああ、紫音か。』
「そうです、紫音ですよ。お爺様の携帯から私の携帯にかけてるんですから、そうに決まってます。」
『まあ、そうだろうな。それはいいとして、どうだ?新堂や北代の様子は。テストはまた3位なのか?』
「別クラスですから、普段の様子はあまり分かりませんが、相変わらず北代が1位、新堂が2位でした。私はその下、3位でした。」
『まあ、たかが学校のテストだ、気にするな。だがまあ、北代の方はともかくとして、新堂にはせめて勝ってほしいがな。』
「そうですね……。でも、あの2人は別格です。一学年時の考査でも、2人は平均95点は取っていますし。ですが、四月初めには模試がありますし、ので、そこで頑張ってみます。」
『ああ、頑張りなさい。と、そんなことを聞くために電話をしたわけじゃない。新堂のとこの娘さんと、北代のとこの跡継ぎが、同居しているらしいと、それを伝えるために電話したんだったな。これは
「恭一様から……。相変わらず、仲が良いようで。」
『はははっ!仲良くしておいて損はしないからなぁ、あの家とは。』
「……そして、同居、というのは、あの2人がですか?」
『そうそう。詳しくは知らんがな。この事はまだ内密に、とのことだったかな。だが、周りにバラしたりすれば被害を被るのは此方、くれぐれも、周りには話すなよ。これだけは覚えておけ。北代家は敵に回してはならん。』
「はい。肝に銘じておきます。では、お元気で。」
「今日から新クラスですね。」
「そうだな。周りは出来るだけ静かであってほしいが……。」
「誰と一緒になれますかね。」
「さあな。そこは俺の知ったことではないし、願ったからと言って変わるわけでもないし。」
俺は、この数ヶ月を振り返る。
「だがまあ、去年は仲のいい奴が同じクラスにいるだけで、少し楽しかったのは確かだな。気が合う奴がいるといいけど。」
「はい!そうですね!」
「楽しみにするのはいいんだが、時間を考えてくれよ。ご飯食べてて、登校初日遅刻……なんてなっても知らんぞ?」
「!? もうそんな時間ですか!?」
もうそんな時間である。
「鍵は閉めておけよ。俺は先に行く。」
「お皿は……?」
「ああ、水にでもつけておけ。始業式の後はすぐ帰宅だろうからな、帰ってきたら洗う。」
「すみません、お願いします。」
「了解した。鍵はきちんと閉めろよ。」
クラス分けの表には、8クラスに分けられた300人余りの同級生が記載されていた。
その表を見ると、俺の所属する組は1組で、そこには朱莉、堂島、西園寺、そして、父母が死んでから一度も会っていない祖父、北代恭一の
2組には隼人と美晴、5組には河合と畑中、6組に佐伯、木村。知り合いのいるクラスは、そんなものだろうか。
張り出された紙の前にいると、当然彼がやって来る。
「あーあ、今日から別クラスかぁ〜。ま、別にいいか。隣のクラスだもんな〜。」
「俺は静かになるから嬉しいけどな。」
「酷いっ!?」
「冗談だ。」
彼がそんな風に騒ぐものだから、半分本気だったがそう言ってやった。
「それなら、冗談じゃねえトーンで話すなよ。泣けてくるだろ。」
はて。彼が泣くなんてあり得るだろうか。いや、美晴にこっぴどくフラれるくらいのことでもないと無いと泣くなんて有り得ないと思う。
「おい冬樹。お前、今失礼なこと考えてるだろ。」
「お前呼ばわりとは。一応、北代家の次代当主なのだがな。」
「うっせ。一ノ瀬も柊木もそこそこの家系だぞ、北代には劣るけど。」
「ああ、分かっているとも。」
「分かってんだかねぇ……あ、美晴いたからじゃあな。」
「ああ、また。」
そしてようやく、嵐が去った。
「あー、今日からこのクラスでやってくわけだが、本格的に授業を行なっていくのは来週からだ。あと、俺は現代文B担当の
担任から色々と説明を受けた後、体育館で行われる始業式へ向かう。だが、校長が毎度の如く繰り出す長話は、相変わらず何も理解できなかった。
俺が椅子に座ってぼうっとしていると、背後に気配を感じた。振り返れば、2人の男がいた。
「北代君、久しぶり!」
片方は俺の知る顔、堂島光のものだった。
「ああ。2週間ぶりくらいか?」
「光、誰?」
隣にいた、俺と同じくらいの背でメガネをかけた男が、小さく、だが芯のある声でそう呟いた。
「あ……、どうも。俺は、光の友人の
「はじめまして。俺は堂島の友人……でいいのかな。北代冬樹だ。」
俺が「友人」と言ったところで縦にぶんぶん首を振る堂島。
「……え?北代?あの?」
「まあ、世間一般で聞く北代と同じだと考えていい。」
「光が話してたのは、嘘じゃなかったのか。」
「だから言ったでしょ、司。」
なぜか自信げにそう言った堂島。
「これがその『天才』か……。なんだか、予想より地味……?」
自覚はしているが『地味』と言われると少し思うところがあるな。
「自分を天才とは俺は思わないが……流石の俺でも、初対面の男に地味なんて言われると傷つくんだが。」
「あ、ああごめん。なんというか、オーラを隠すのが上手いって意味だったんだけど。」
「どういう意味だ?」
「普通、そういう人ってオーラがすごいんだよ。ほら、このクラスでも2人いるでしょ。天宮さんと新堂さん。風格というかなんというかね。ただ、1番所作が美しいのは北代君だ。だから、気配を隠すのが上手いんだなと。」
「目立つのは嫌いだからな。外を歩くたびそんなことを言われても敵わんし。」
目立っても良いことなどない。それはよくわかっている。だから、影を薄く、そして目立たぬように息を潜めるのだ。
「なるほどね。北代君、宜しく。さっそくだけど、冬樹君って呼んでもいいかな?」
「あっ!僕もいいかな!?」
「え?ああ、別に好きに呼んでもらって構わないが。」
どう呼ばれようが、俺に害はない。そう思っているので、彼らにはすぐ許可を出した。
————後書き————
どうも。やる気値マイナスのしろいろ。です。唐突に書く気が失せて長い時間ベッドと融合し続けていました。いや、その、部屋に本が溢れてるので片付けてたんですよ。そしたら、ノートが出てきまして。高一のと中三の現代文のがです。中身見たら、真っ白でした。何も書いてませんでした。そのノートは、全くの新品でした。……何やってたんだろ僕は、とぼうっと生きていたら1週間が経過していたというわけです(?)。意味が分かりませんね。
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