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「冬樹くん。」


「なんだ。」


「家でぼうっと休日を過ごすなんて、高校生がすることではありません。」


「じゃあ、何をすれば良いんだ?やることなんて何もないぞ。」


教科書もまだ届いていないし、予習もできない。本当にやることがないのだ。


「そうですね、お買い……いえ、一緒にどこか行きましょう。」


「どこか行くあてでもあるのか?買い物に行くんであれば、荷物持ちくらいならやるぞ。」


「……うーん。そうですね、あ。」


「何処だ?」


「図書館、行きたいです。」












「わあ、凄いです!こんなにいっぱい、本が……。」


図書館なら当たり前な気もするが。


「推理小説が好きなんだったか?」


「はい!大好きです!」


別に俺に向けた言葉ではなかったが、なぜか少し恥ずかしかった。


「……。俺も一冊だけ、借りてこようかな。」


「はい。じゃあ、借りるものを決めたら、ここのカウンターの前で。待ち合わせましょう。」


「分かった。じゃ、後で。」


俺は図書館内の、小説のコーナーへ向かった。














俺が居たのは、「ライトノベル」が並んでいる棚。


「異世界転生?転生車?トラックになって、異世界を行く……意味が分からん。」


これによれば、トラックに轢かれて死んだ影響で、主人公がトラックになったらしい。その導入でさえ意味が分からないが、そのまま地球ではない何処かに、飛ばされたらしい。とんだ災難だな。


別に作品を否定しないし、読んでみれば面白いのかもしれないが、俺には理解ができなさそうで借りるのを諦めた。


短い話がたくさん載っている小説なのかと思ったら、どうやら小説の分類の一つだったらしい。最近はああいうものが流行りなのか……?


————流行りというよりも、たまたまそういうものを冬樹がとっただけである。






「あ、冬樹くん。面白そうな本、見つかりました?」


「おすすめの本とか、ないか?俺にはどうも選ぶってことが出来なくてな。」


「そうですか〜。あ、じゃあ、これなんかどうです?すごく面白いんですよー、これ。」


「ん、これは?」


「取り敢えず、凄いです、とだけ。きっと話すと物凄く長くなりますから。」


「……ああ、まあ、ありがとう?これにしてみる。」


「はい。私もそれ好きなので、読み終わったら感想聞かせてくださいね。」


「考えておくよ。ん?……あ、朱莉?そんなに借りて読めるのか?」


「はい。これくらい一週間もあれば読み切れるでしょうし、大丈夫ですよ。」


「読むの、早いんだな。」


俺の読むスピードはどうか知らないが、10冊を一週間で読むというのは、きっと早い部類に入るはずだ。普通の人にとっては。


「そうですかねぇ?多分冬樹くんの方が早いと思いますよ。」


その後の朱莉は、終始首を傾げたままだった。









結局、俺は朱莉に薦められた推理小説を借り、夕食のための買い物を済ませ帰宅した。夕食後、俺は自室で借りた本を読むことに決めた。


「勉強以外で机に向かうの、初めてかもな。」


本が置かれた机を見て、俺はそんなことを思った。


十九時十分、俺は読書を開始した。











「……。」


七時十五分、俺は全四〇五ページある小説を読み終えた。


「感想、聞きたいって言ってたか。」


俺は朱莉の部屋まで行くことにした。


「朱莉、ちょっといいか。」


「……はい?どうかしましたか?」


「これの感想を言いに来てな。」


「もう読み終わったんですか?」


「ああ。さっき読んできた。」


「…‥どうやって読んだんですか?」


「こうやって、パラパラってめくりながら。」


「……。じゃあ、第二の殺人が起きたことが発覚したページは?」


「174ページだな。」


「‥‥正解、ですか。」


第一の殺人事件の解決もないままならないまま第二の事件が起きたことを知り、探偵である主人公が現場へ勝手に向おうとするシーンだ。


「あれで読んでいるとは、やっぱり到底信じ難いですが、冬樹くんですから嘘は言っていないでしょう。じゃあ、感想をお聞かせ願います。」


「ああ。分かった。」











「冬樹くん、どうして今まで本を読まなかったんですか?」


「別に読まないわけじゃないが、あれだと読んでないと言われることが多くてな。ゆっくり読もうにも、どれだけのペースが正しいのか分からないし。そういうことばかり言われたら、読みたくなくなるだろ。まあ、それが原因で勉強ばかりしてきたんだがな。……にしても、『ライトノベル』は随分タイトルが長いものが多いな。あれはそういうものなのか?」


「さ、さあ。私もよく分からないので……。」


「そうだ。今度また、返却の時も一緒に行かないか?」


「やめておいた方がいい気がします。」


「? どういうことだ?」


「一緒にいるところを見られる可能性があります。」


「俺だなんて分からんだろ。髪もそこまでしっかりセットして学校にいっているわけじゃないし、隼人とか柊木とかぐらいしか分からないと思うが。そんなに心配なら、メガネでもかけていこうか?」


「メガネ?」


「そうだぞ。実は、少し遠視気味でな。さっきまでメガネして本を読んでた。」


本当に少しだけなので、いらないとも言ったのだが、変装に使えと渡された。変装なんてする時があるのかとも思ったが、作ってもらったものを無碍にもできず、本当に稀だが、本を読むときに使う。


「で、どうだ?それなら行けそうか?」


「……か、考えておきます。」


「そうしておいてくれ。」


それじゃ、と言って俺は部屋を後にする。











————後書き————

どうも、しろいろ。でございます。

一昨日、父が飲み会に行ってきたそうで。お酒を飲むのは別に良いのですが、それで終電を逃したようでして。……なんとも残念な人ですね。その後の母からの連絡によれば、歩いて帰ってきたらしいとのこと。昨日の17時ごろには「まだ寝てるw」と父が布団に包まった写真付きでLINEが来ました。……お疲れ様です、ハイ。今週忙しいので、次の投稿は土or日です。最近投稿減ってすみません。ようやく土曜でひと段落つくので、そこからはもうちょっとペース上げれるようにがんばります。ではまた。

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