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「…………。」


誰かが何か言っている。俺の口も勝手に動いて、「ああ。」とだけ返す。


そんなやりとりが3、4回ほど続いて。


「冬樹くん!眠たいならここじゃなくてベッドで寝て下さい。」


突然そう言って体が揺すられる。


「っ!?あ、朱莉か。ああ、昨日は寝てなくてな……。いつもなら1時間は寝るんだが……、昨日は一睡も……ふわああ。」


「ちょっと待ってください?いつも何時間寝ているんですか?」


いつも……?そんなの決まっているだろ。


「2時間半くらいか?長い時は3時間かな。」


「なんですかその睡眠時間。ショートスリーパーだったんですかとかそういう次元じゃないですよ、それじゃあ疲れ取れるどころか横になるだけで終わりじゃないですか。それに中学生の頃もそんな睡眠時間なら、私と30cmも差なんてつきませんよ。」


そんなに身長差があるとは思えないがな。


「……叔父上の家で無理やり寝させられてな。『成長期に寝ないでどうする』って。それでもその数年は8時間くらい寝させられたぞ?だいぶ寝たふりだったが。今は、特に止めも入らないし一時間だけとかざらにあるぞ。」


寝られないと、今見たくなってしまうし、流石にきついが……。


「ナポレオンみたいな感じですか……。」


「ああ、あの人も3時間とかだったか?にてるな。すまないが……すこしよこになってくる。」


舌が回らなくなってきた。ここが限界か。


「はい。おやすみなさい。」


俺は自室に向かって歩く。













夢の中で、俺は親戚……もう縁を切ったんだったな……今となっては他人の彼らから責められていた。


「お前、いつまで生きてんだよっ!?人殺しのくせにいつまでのうのうと生きてんだ、ああ!?」


「ご、ごめんなさい……。」


「ごめんで済むのかぁ!?これからどうなるか分かってんのか!?このグループの成長が止まるどころか、利益は下向きだぞ!?お前がどうにかすんのか!?出来るわけがねえだろ!?」


どれだけ謝っても、どれだけ殴られても。いつまでもいつまでも終わらない悪夢。だがそれは昔、現実に起こったこと。俺は今になってもこの現実を夢で見る。


そこで場面が切り替わる。


「冬樹、俺たちはもう行かないといけないんだ。冬樹を連れて行くことなんて、出来ないんだよ…。」


父、だろう。この夢は初めて見る。


「父さん……母さん……。置いていかないで……。」


そしてこれまで見た夢と同様、俺は肉体に宿っているだけで、その口を動かすことはできない。


これは現実に起こったことではないが、俺はただただ見ていることしかできない。その事実が胸を締めつける。


「冬樹、我儘言わないの。あなたとは、ここでお別れ。それは変わらない事実なのよ。私たちはもう行かなきゃなのよ。ね、冬樹。お願い。」


母か。俺は、いやこの夢の中の俺は。不安でいっぱいだったのに。


「……はい、父さん、母さん。いってらっしゃい。」


その不安を押し殺して、そう言った。


また場面が変わる。なんだろう、今度は暖かい。


「大丈夫、私がいます。大丈夫。安心してください。」


多分、母さんだ。彼女は、これまでの冷たい夢の中で、唯一暖かいものだった。


「かあ、さん?」


「あら。起きたのですか?」


俺は夢の中でも眠っていたのか?俺は立ち上がると光の元へ歩いていく。


「かあさん……おこって、ない?おれのこと、おこって、ない?」


顔は……よく見えないけれど。彼女は母だった。母のはずだった。


「まさか。今まで辛かったでしょう?泣いていいんですよ?」


俺にそんなこと言ってくれたのは、朱莉くらいだ。目の前の誰か、これが現実ならば、きっと朱莉だ。でも今の俺には、夢と現実の区別がつかない。きっと夢だろう。だから、俺は彼女の元へ歩いていく。


「辛かったでしょう。一人にして、ごめんなさい。」


「かあ、さん……。」


口が勝手に動いて、目の前の誰かをそう呼んだ。俺の意思か、それとも夢の中の俺がそう呼んだのか。分からない。


「もう、一人じゃないです。大丈夫。貴方はもう、大丈夫ですから。」


一人ではないということが、どれだけ安心することか。たとえ彼女が、今は死人である母であったとしても。これが夢であったっとしても。


「ほんとう、ですか?」


「ええ。私がいますから。」


「そう、か…。いや、大丈夫。俺には、朱莉がいるから。大丈夫だ。母さんは、寝てて欲しい。」


俺の口は、勝手に動くように思えたが。これは、俺の意志だった。これだけは、俺の心の声だった。


「母親想い、なんですね。」


違うんだ…俺は、母さんよりも、朱莉といる方が——。


俺は目の前にいた彼女に抱き着いたところで途切れた。そのまま、目が覚めるまで。












「ん……?んぁ……。」


なんだか頭の部分に柔らかい感触が。


「起きましたか?」


母……ではなく朱莉か。


「ん?なんで俺は朱莉の膝で寝てるんだ?」


「寝ぼけるとかそういう段階すっ飛ばして即刻いつもの冬樹くんですか。それなのにさっきは寝ぼけてたんですよね……ほんと不思議ですね……。あ、さっきからずっとうなされていたので私がここで寝させたんですよ。一体どんな夢見てたんですか?」


「いつもの夢だ。いや……いつもとは少し違うか。今日は、母さんが出て来てくれた。その夢で終わったよ。あとは特にないな。」


いつもの夢というのは違う気がした。いつもは、絶望で終わる夢が。彼女のおかげだろうか?朱莉の……。


「今、何時だ?」


俺は何時間寝たのだろう。時間によっては今すぐにでも昼食の用意を始めなければいけないはずだ。


「11時半は回ってると思いますよ。ちょっと待ってくださいね、今見ますから……えっと、11時48分ですね。」


不味いな。彼女のお腹が持つかどうか……。


「すまん、今すぐ作るから。少しだけ我慢してくれ。」


「はい。もうお昼ですか、今日はなんですかねぇ。」


彼女はゆっくりと俺の部屋から出て行く。俺は寝ていた格好から着替えるとキッチンに立つ。


「今日は、何を作ろうか。」


俺は、あの夢のことなどとうに忘れていた。









——後書き——

あけましておめでとうございます、大サボり魔のしろいろです。

はい、マジすんません。投稿サボりました。実に一週間ほどですかね、投稿サボりました。すごく、サボりました。マジごめんなさいッ!


今年はもっといっぱい書きます、ハイ。許してください。

じゃあ、今日はこの辺で。

これからも応援よろしくお願いします!



追記


書き直しました。なんだあの文。めっちゃ書き途中じゃん。すません。

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