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ホワイトデー。それは「バレンタイデーにチョコやらを貰った側がホワイトチョコやマシュマロ、キャンデーでお返しをするもの」らしい。今調べた。


この間お礼として作ったガトーショコラは好評だったから、ホワイトチョコベースで何か作りたいが。


パソコンはたしかに便利だったが、スマホはさらに使いやすい。レシピを暗記する必要がなくなり(このことをあかりに話したら「暗記なんてしてるんですか!?」と驚かれた)、気になれば見ることもできる。……必ず手も洗うし衛生面ではばっちり対策をしているつもりだ。


そうこうしていると【バーチ・ディ・ダーマ】という一口サイズの小さな菓子が目に入った。レシピだって簡単だし、これにしようと決めた時。


家で出来るはずがないということを思い出した。なぜならば、朱莉は良い匂いを嗅げばこちらに向かってくるのだ。隠すことなど到底出来るものではない。……つまり手詰まりなのである。サプライズにする気がなければいいのかもしれないが、彼女の驚く顔が見たいのだ、仕方ない。


俺は仕方なく、美晴にLINEでメッセージを送ることにした。


『菓子作りがしたいから柊木の家で器具を貸してくれないか?』


一ヶ月でタイピングのが技術は多少向上した。買った当初は一文打つのに2分かかったのだ、今は1分である。……これも朱莉や隼人、美晴に言わせれば遅いらしいが、この文を打って30秒もせずに


『いいよ〜、何作るかによるけどオーブンとかは貸せるし。あ、もしかして朱莉ちゃんのため?だったらラッピング用の包みとか持っておいで、教えてしんぜよう〜』


こんな長文が送られてくるのだ。しかも『朱莉のため』とやけに勘が鋭いのだ。俺はたしかに、彼らに比べれば遅いのも当たり前である。……言い訳をしようか。そもそも滅多なことでは触らないから、配置も覚えられないし上達しないだけだ。反復練習したパソコンのタイピングは今ではキーボードを見ずに打てるし、練習さえすれば……


———結局この「すれば」は、どこまでいっても「すれば」であった。いつまでも下手なままなのである。


色々と悩んだ挙句、明日にでもということだったので約束を取り付けて俺は一息ついた。


画面を凝視したせいで目が少し疲れた。俺はベッドに寝転がり、そのまま眠ってしまう。







『おい冬樹。』


ピロン、と音がして俺を叩き起こしたメッセージが画面上に表示された。


この呼び方をする男は1人しかいない。というか、1人しか登録していない(叔父はカウントしない)。


『なんだ?』


寝惚け眼をこすって画面をよく見て、たっぷり30秒かけて打つと、10秒もせず返信が来る。


『美晴のとこで菓子作りするらしいな。俺にも食わせろ』


といった内容が記されている。つまりは美晴から聞いたのだろう。


と、俺はここでひとつ気になることができてしまう。


『朱莉にはその事を伝えたか?』


 これが漏れていてはサプライズにならない。美晴のところで作る理由も無くなるのだ。


『いいや。伝えてない。美晴にも聞いてみたけど、伝えてないってさ。』


20秒もせずにこの文量を間違えずに打ち込み、尚且つ美晴にすら確認をしに行ったのか。とまあそんなことは置いておいて、朱莉にバレていないことが分かって一安心した俺は、勝手に食べに来いと打ってそのまま目を閉じる。




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