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2月初旬にスマホデビューをし(かなり遅いらしい)、朱莉や隼人、叔父などとLINEの交換を行なってから一週間。


今日は2月14日、世間で言うところのバレンタインデーである。ここ数日、朱莉の帰りが遅いので少し心配……なんで俺は朱莉のことを考えているんだ?まさか彼女が大事とでも?大事な何かなんてすぐになくなってしまうのに。


「……俺は浮かれていたらしい。」


俺は昔の記憶が掘り起こされる。


『お前のせいだ!お前が死ねばよかったんだ!』


『なんか言えよ愚図が!お前のせいで忙しくなってるってんのにお前は何も言えないのか!?もう5歳なんだろう!?すみませんぐらい言ったらどうだ、ああ!?』


『お前、すみませんで済むんだったらお父さんもお母さんも助かってんだよ!ふざけんなよ、すみませんすみませんってそれしか言えねえのかよ、とんだ次期当主様候補だなぁオイ。』


親戚中から浴びせられる言葉。父は有能な人だったのだ。彼に任せていればグループはどんどん大きくなる一方だった。その人が死んで、彼らも不安だったのだ。それくらいの言葉は耐えられていると思っていた。


だが。


『人殺しめ!』


トラックが勝手に突っ込んできた、父も母も俺と助ける為に死んだ、そう周知されていたにも関わらず、1人が発したその『人殺し』という言葉に、周りは俺は何も感じなかった。もうその頃から、何も感じなくなっているのが当たり前だった。




その当たり前は俺にとって揺るがないもので。それでも彼女はそれを変えてくれた。だから特別だなんて思っていたけれど、結局他と変わらないのだ。そう思うと何故か12年も前に枯れたはずの涙が頬を伝う。彼女の笑顔を思い浮かべると尚更泣けてきてしまう。俺はただキッチンで立っていた。







今日はバレンタインデーです。なので冬樹くんにチョコをあげたかったのですが、それを美晴さんに尋ねると「ウチで作る?」と言ってくれたので、2週間で上達して作ってやる、と燃えていたのです。結果として帰りは遅くなってしまいますが、今日のための特訓で、チョコは食べられる味になっているはずです。チョコが割れたりしないようにゆっくりと歩くせいか、いつもより遅くなってしまいました。


「帰りましたぁ。」


いつも通りのいい匂い。でも今日、彼だけは違いました。


「あ、ああ。おかえり。見てくれよ、涙だ。俺にも涙はあったらしい。俺は人間だったらしい。」


その顔は、【無】でした。何一つ表情を持たないその顔からは、ただ雫が落ちているだけ。私は冬樹くんの心に刻まれた傷がどれほど大きく、深いものだったのかようやく理解しました。


「どうしたん、ですか?」


これだけは聞いておかねばならないと、私はそう思いました。


「簡単なことだ。俺は、君を特別だと勘違いしていた。でもそれは違った。ただの勘違いなんだ、気にしないでくれ。」


そう言った彼の顔は苦痛で歪んでいるようでした。






俺はなんなんだろう。勝手に人に期待するなんて変だ。俺は何に期待していたんだろう。


俺は涙を拭う。そうして精一杯の笑顔を浮かべて、いつも通りに接するんだ。


「なんでもない。そろそろご飯だから準備手伝ってくれるか?」


「……。」


俺のせいだ。俺が悪いんだ。そう思えば少し楽になれる。自分の中で全てを完結させてしまえる。


「どうした?」


「冬樹くんはそれでいいんですか?」


「それでいい?」


「冬樹くんにとって私が特別であってほしいです。だから、これだって用意したのに。それでも特別じゃないんですか?あなたは、冬樹くんは。どうしたら救われますか?」


彼女は小さな包みを取り出す。


「これは?」


「開けてみて下さい。」


しばしの沈黙。俺が包みを開ける音だけが周りを支配する。箱に綺麗に入っていたのは、綺麗な丸型のトリュフチョコ。


「これは……。」


「今日のために頑張ったんですよ?」


彼女は俺にここまでしてくれるのか。ただ義務だからと同居をしているわけではないと、行動で示してくれたのだ。


「俺は、あの時から成長してないんだな。」


幼稚なままだ。両親を失った痛み。親戚中から浴びせられた言葉。それに囚われて、俺は進歩していなかった。逃げていた。


「いいえ、成長しているじゃないですか。冬樹くんは誰よりも優しいです。あなたは、成長していますよ。」


俺は、彼女に。俺が欲しいものをくれると、そう期待していたんだ。


「これまで、よく頑張りましたね。もう、大丈夫ですよ。」


彼女は崩れる俺を抱き締めた。彼女の温もりは、これまで感じたことがないほど暖かく。俺は自覚した。ああ、俺は彼女を———。









あれ?私冬樹くんを抱き締めてますけど、なんだか嬉しいような、そんな気が。私は冬樹くんのこと、こんなに......ううん、恥ずかしくて言えませんっ!








——後書き——

書くぞー‼︎と息巻いたはいいものの、結局寝落ちして書けなかったのです。

はい、ゴメンナサイ。許して下さい。


あ、あと。今週から来週にかけて、猛烈に忙しいので多分2日に一回のペースの投稿になります。え、毎日書け?いや、僕も寝たいんですよ。カンベンしてくださいな。.....ゴホン、ということで、そんな感じでお願いします。これからも応援よろしくお願いしますね!

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