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あのあと彼を駅まで送ってから、商店街で牡蠣を買って帰った。カキフライにでもしようと思い、準備中なのだが、年末年始で食べすぎたせいで体重が、と言っていた朱莉がランニングに行っている為、揚げるに揚げられないのだ。あれほど美味しそうに食べる人に、冷めてしまったものを食べさせたくないからな。


結果俺は暇を持て余している。たった今出て行ったばかりなので、当分帰ってこないだろう。……そう言えば課題出てたな。


俺は彼女が帰ってくるまでずっと机の上で勉強していたのだった。






「帰りました……。」


もうへろへろでおなかぺこぺこです。でもおかしいですね。いつもこの時間なら美味しそうなにおいがここまで漂ってくるのですが。.....まさか倒れていたりとか。


私はゆっくりとリビングのドアを開けます。電気がついていませんね。見渡してもやっぱり居ないみたいでドアを閉......


「どうした?」


「ひっ!」


心臓が飛び出るかと思いました。だって物音ひとつ立てず後ろから低い声で「そうした?」ですよ?ええ、あんなのビビらないわけないじゃないですか。ひっ、て言うのも仕方ないと思います。


「こ、怖いですよ……。」


「悪い悪い。ゆっくり電気もついてないリビングに向かうもんだから、何してるのか気になってな。」


「その、いつもいい匂いがしてるはずなのに今日はしてなくて。おかしいなと思って入ろうとしたんです。」


私は、そのまま行ったことを口にしました。


「今日は牡蠣を揚げるつもりだったから、朱莉が帰って来る前に揚げ切ると冷めた物を出すことになると思ってな。可能なら出来立てを食べてもらいたいし。」


なるほど、それで勉強をしていたわけですね。納得がいった私はそのままお風呂へ直行しました。






「いただきます」


食材への感謝は毎食きちんとしているが、出来立てを食べて欲しいので揚げながらの食事だ。そのため立ったり座ったり忙しいので今は彼女だけがしている。もちろん落ち着いた時にきちんとするが。


「美味しいです!」


キッチンは換気扇も効いているし朱莉の声は聞き辛い。だから何を言っているのか分からないことの方が多い。それに加えて揚げ物をしているのだから、油の音で更にうるさいので、今回は何も聞こえない。彼女が興奮しているのだけは伝わる。多分いつも通り「美味しい」と言ってくれているのだろう。


やはり彼女には美味しいものを作ってあげたくなる。




「ふう、それじゃ座るぞ。」


二人分という量なのだ、揚げるものもそう多くない。


「お疲れ様です。美味しかったですよ。」


「それは良かった。ご飯のおかわりはいるか?」


ふと茶碗が目に入り、空になっていたのでそう言った。


「い、いえ。もうおなかいっぱいです。」


一瞬目を輝かせたが、すぐにその顔は曇っていき、断られた。


「そうか……。」


「おなかいっぱいになってしまったので、ごめんなさい。美味しかったです。」


おなかがいっぱいならしょうがないか。


そのあとはほとんど雑談だったが、やはり彼女との時間は楽しかったのだった。


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