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「おっ、あけおめだな!」


旅行を終え帰宅してから数日経ち、新学期を迎えた今日の教室にて。


「ああ、おめでとう。あ、そうだ。これ、土産。」


俺はショッピングモールで購入したカステラを渡す。ちなみに彼女は『ぽると』というビスケットを買って行ったらしい。俺も貰ったが、中に羊羹が入っていて不思議な感じがした。美味しかったが。


「ん、サンキュ。つーかお前と朱莉ちゃん、一緒に長崎にでも行ったのか?」


彼女はさっき「お土産です」と配って回っていたから、隼人にも渡したのだろう。


「隠しても仕方ないか。まぁ一緒に行ったぞ。」


「へ、へぇ。……なんか、お前少し柔らかくなったか?」


彼女の言葉のおかげで心が少し軽くなり、叔父からも紗希からも同じことを言われていたのだが、隼人にも言われるほど変わっているのか。


「まぁ、あk……。新堂の影響が強いだろうな。」


いつもの癖で朱莉と呼びそうになる。俺が彼女に名前呼びを禁じているのに、俺がやってしまっては示しがつかない。


「んん?朱莉って呼ぼうとしたな〜?」


彼がそう言った瞬間。周りの男子がこちらに猟奇的な目を向けた気がした。


が、俺がその目の方を見ると今度は恐怖に染まった目を向けてくるのだ。……俺が怖いなら最初からそんな目をするな。


俺は小声で隼人に言う。


「なあ、そのことは他言無用って言ったよな?」


「そうだっけか〜?」


俺が睨むと、


「じょ、冗談だって……、」


と言って来た。正直信用出来ないが。


そして時間になり、担任がやってくる。


「オラお前ら、席につけ。……みんな、あけましておめでとう。課題を出していたと思うが、それの回収してください、あとは、この後始業式して帰りだ。以上。」


他の要項も特にないらしく、そのあとはフリーになる。


そうしていると俺の方まで一人寄ってくる奴が。


「北代君。少しいいですか?」


朱莉が、こちらにと手招きする。




教室のすぐ横、階段のところに2人で面と向かって話す。


「冬樹くん、雰囲気変わり過ぎです!みんなチラチラ見てるじゃないですか!」


さっきは「北代君」だったのに今は「冬樹くん」、やはり女子というものは怖い。


「髪型も服装も何一つ変わってないが。」


「滲み出てる雰囲気です!なんかどんよりした闇が綺麗さっぱり消えてるじゃないですか!」


「そうだとしたら朱莉のおかげだな。」


心が軽くなったのは彼女のおかげ。俺は至極当然のことを言っただけなのだが、


「そ、そんな、恥ずかしいですよ。」


そんなに照れるのか?


「ま、まあいいです。」


「それだけか。じゃあ俺はトイレ行ってから戻る。」


俺は彼女と反対方向に歩き出す。

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