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「えー、西園寺は、諸事情によりこの冬休み明けまで謹慎処分となった。詳細は伏せるが、休み明けからはこれまで同様に接してやってくれ。以上だ。」


十二月二十四日、遂に明日を今年最後に迎えたホームルームは、担任の一言で終わった。


『なあ、西園寺って何かやったのか?昨日もいなかったけど……。あ、もしかしてあれか?北代をいじめてたみたいな?』


『てか、あの嫌がらせはなかったよねー。ウチも小学生かよってツッコんだもん、あー、心の中でだよ?』


『職員室で話されてたのを小耳に挟んだ程度だけどよ、掴み掛かったら北代に返り討ちに遭った、みたいな感じだったぞ。』


男女関係なく、西園寺の件は盛り上がりを見せた。その結果、クラスメイトを代表した何人かが俺のところまで来た。


「なあ、どうやって西園寺を返り討ちにしたんだー?」


誰だこいつ。


「さあ。想像に任せるよ。」


「そんなこと言わずにさー。」


正直鬱陶しい。


あの後、クラスメイトの男子(彼女持ちでない)が、謝ってきたが、特に何か泣かせるようなことを言ったつもりもないのに泣きつかれた。心が広いとかなんとか言っていたか。……俺が心を持っているならの話だがな。




「じゃあ、俺はもう自室に入る。寝てるかもしれないから、十一時をまわったら入ってくるな。」


「はぁい。おやすみなさーい。」


気楽なものだ。年末の特番は夜遅くまでやっている。が、女子の間では夜遅くまで起きているのは肌に良くないと聞いたことがある。だがそれでも俺が忠告する必要はない。彼女の責任だからだ。


俺は自室に入ると、押し入れに隠してある包装紙とブランケットを取り出して、明日に備えて包装紙に包み込む。


「……。できた、のか?」


少々不恰好だが、素人にしてはできた方だろう。


「あとはこれが渡せるかどうかだな。」


このプレゼントを渡せるかどうかが、一番重要なところなのだ。




冬樹くんは凄いです。西園寺君は一時期ボクシングをやっていたそうですから、パンチを避けるのだって難しいはずなのです。……実際、彼が私に迫ってくる時はその話をされましたから。きっと強いことをアピールして振り向いてもらおうという算段だったのでしょうね。全く、そんな人に興味はないと言ったのですが。


特番など見ていると、ドラマの総集編をやっていたりとついつい見入ってしまうのですけれど、冬樹くんは全くそういうことに興味がないようなので、私が自分で録画しないといけないのです。冬樹くんからは自由に使っていいと言われましたが、あまり使っていないのです。


「あっ、そろそろ十時ですか……。明日は必ず渡さないといけないので、早く寝るとしましょう。」


明日はクリスマス。二人の歩みはまだ始まったばかりだ。

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