12




クリスマス。現在時刻は午後6時。


「よし、これで完成、か。」


クリスマスだからと少し奮発して材料を買い込み、二時間かけて作った夕食。


叔父に毎年いただく七面鳥を捌いて、味付けをいつもより丁寧に行う。


年末に向けて体型維持をしたいとランニングに出かけた新堂は、一度自宅に戻って色々と取ってくると先程連絡が入った。やはり親が纏めただけの荷物では足りないものもあったのだろう。


もちろんブランケットは用意済み。隼人に聞いたら是非渡すべきだと言っていた。女性の扱いなら(多分)彼の方が上手だろうと思ったので、素直に従うことにした。


「う。か、帰りました〜。」


玄関へ向かうと、とんでもない量の荷物を手にした新堂がいた。


あまりの量の多さに俺が引いていると、


「これからもどうぞよろしくお願いしますね。荷物を持ってきましたから。」


叔父上、これは聞いていませんよ。




「ふわああ。いい匂いはこれから漂っていたんですね。」


にしても、彼女は俺の作った料理を前にすると、テンションがいつもと違う別人に変わるのは、俺のせいか……?


「今日は奮発して少しだけいい肉を買ってきたからだろう。」


「河合さんのところのお肉なら全部美味しいですよ、それに冬樹くんの味付けでもう完璧なのです。」


興奮気味に答えた新堂だったが、そのあと我に帰ると顔を赤くしていた。




「おいひいでふね。」


「口の中のものはなくしてから喋ってくれ。」


「すみまふぇん。」


「....。」


もう何も言うまい。料理をうまそうに食ってくれるのはありがたいことだ。俺はそれきり何も言わない。




そろそろ、用意したブランケットを渡すか。そう思い俺は机の上に包装紙ごと置く、


「「あの……」」


全く同じタイミングで振動も話し始めようとした。


「すまない、先に言ってくれ。」


「あ、はい。……冬樹くん、メリークリスマス。プレゼントです。」


なにやら大きいもの。ふわふわしていて重量はそれなりにある。....なんだこれ。


「これは……?」


「開けてみてください。喜んでくれるといいですけれど。」


よくよく見れば、この包装紙はデパートにあったクリスマス用の包装紙ではないか。


「開けさせてもらうよ。」


ゆっくりと包装紙を取り去って、中から出てきたものは、


「くまのぬいぐるみです。冬樹くんの部屋に置いて貰えると私も嬉しいです。」


ぬいぐるみ。これは、男子高校生へ渡すプレゼントとして合っているかは分からないが。


「これは新堂が選んでくれたのか?」


「もちろん。かわいいですよね!」


やはり女子はこういった可愛いものに目がないのだろう。


「ありがとう。大切にさせてもらうよ。部屋に飾るかどうかは、まだ決めかねているけど。」


「えっ、あっ。ど、どういたしまして。」


俺はぬいぐるみを一度膝の上に置く。


「……い。」


「何か言ったか?」


「はっ、いいえ。なんでもないですよ。」


「そうか。」


俺は一呼吸おいて、


「メリークリスマス。良かったら受け取って欲しい。」


ブランケットを差し出す。


「なんでしょうか?」


「……」


緊張で言葉が出ない。拒否されなければいいが....。


「……、……?」


作ったブランケットを広げては首を傾げる彼女は、俺の方をばっと向くと、


「どこの商品ですか?」


感謝よりもまずそこから、と言うところに少しショックだ。


「手作りなんだが、やはり気に入らなかったから?気に入らなかったなら別のものをまた用意するが。」


「これが手作り……。凄いですね、毎回冬樹くんは私の想像のずっと上を行ってくれます。」


「使ってくれるのか?」


「はい。あ、この花柄とか可愛いですね。」


「好評で何よりだ。」


彼女といると何故だか、これまでつまらなかった時間が、楽しく感じる。


本来なら俺にその資格がないことを、頭では分かっていても。

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