05




次の日から、一週間、嫌がらせが続いている。筆箱が隠されていたり、机に落書きされていたりと、小学生がやりそうな残念な類の嫌がらせ。それに、新堂があの場で脅していたことは皆に知れ渡り、女子から総スカンをくらっている。そういったところも彼の機嫌を損ね、嫌がらせを加速させるようなことになっている。ついでに、度胸のない他の男子は、俺に恨むような視線をぶつけるだけだ。


ついでに言えば、日を増すごとに目に見えて新堂の機嫌が悪くなっているのを皆理解していないのだろうか……。別に新堂に向けての嫌がらせではないので気にしていないのだが。


「……くん。し……くん。」


誰かが俺を呼んでいる気がした。俺は周りを見渡し、声の主を探る。


その声は案の定新堂だった。


「今日のお弁当はどこですか....?」


「まだ一時限目だろ。なぜ今聞く。」


呆れてしまう。だが隠しても仕方のないことなので、答えてやることにする。


「俺の鞄の中に二つだ。」


「ちなみに中身は....?」


「......あのなあ。授業中だということを忘れていないか?」


「はっ!そうでした!」


「料理を楽しみにしてくれるのは嬉しいが、あまり話しかけるな。」


「なぜでしょう?」


「分からないなら、いい。」


言っても無駄と理解した俺は、意識を授業へ集中させた。




「はいこれ。今日のは昨日の残り物だが、許して欲しい。」


「昨日のものと言いますと……コロッケですか?」


いちいち目を輝かせるな。眩しくて目が潰れる。そんなことになれば、「目が、目がぁっ!」と叫ぶのもアリかもしれない。いや、やっぱりやめよう。この映画だってよく知らないのだから。……そもそも映画館なんて行ったこともない俺がやるのは失礼だ。


「そうだな、コロッケをメインに入れておいた。」


「ありがとうございます!美味しかったんですよ、あれ。」


「そこまで好きなら俺の分も分けるが……。」


「えっ!?あっ、でも。ふ、北代くんのお弁当ですし……。」


「今日はあまり食欲がないんだ。だから少しもらってくれ。」


「そう言うなら……いただきますね。」


あれだけ突っぱねて壁を作ったはずなのに、こうもあっさり壁を破られると、そこにはもう尊敬の念まで覚える。だが学校で冬樹と呼ぶなと釘を刺しているので、そこは最後の砦として残っていると信じている。




何事もなく帰宅し、今日を終えるはずだった。そう、ここでハプニングが起こるなど誰も予想していない。


「チャイムか。」


「出ましょうか?」


「いや、いい。俺が出る。すごく嫌な予感がするんだ。」


俺の嫌な予感はよく当たる。でもこれは、この同居が始まる時以上の嫌な予感。俺は玄関へ向かい、ドアに手を掛ける。


「開けたくないな。」


思わず愚痴をこぼしてしまう。しかし重要な用事だったりすれば大変だ。俺はドアを開けてしまう。


「よっ!」


手を振っているのは、隼人、と柊木さん。


『バタン』


「あっ」


即座に閉める。が、鍵をかける前に入られてしまう。


「よっ、来てやったぜ、御馳走しやがれ!」


なんだと。


「なんでそうなるんだ?」


「まさかてめー聴いてねーとは言わさんぞ?昨日約束したじゃんか、お前の飯食わせろって。」


そんな覚えはない。断じてない。この1秒で昨日を振り返ったが、そんな約束した覚えはない。絶対に。


「流石にそれは嘘だな。」


「嘘じゃねーよー。ほら、昨日の帰り際。スーパーでお前が特売のやつ買ってっちゃって、そん時に『明日はお前んとこで食わせろー!今日はそれ譲るからー!』って叫んだんだぞ?」


なんだその恥ずかしい話は。こいつそんな話をしていたのか?


……待て。確かに昨日叫んでいる奴がスーパーに居たような。


「隼人、そんなことしてたの?」


どうやら柊木は知らないご様子。ご立腹のようだ。とりあえずそのまま帰宅してもらいたい。


「でも、お母さんには食べるって言ってきちゃったし……。ご馳走になってもいいかな?」


「いいですよ。」


最悪だ。新堂が来た。それが1番まずいことだったのに。


「あら、新堂さん。どうしてここに?」


「待て。俺が説明する。」


俺は頭を抱えたくなった。




「へえ、お前んとこの叔父さんがかぁ。けど、それってなんか新婚夫婦みたいだな。」


「北代の叔父様とは面識がありまして。それと、一ノ瀬さん。新婚は少し恥ずかしいです。」


新堂、なぜ俺の叔父と面識があるんだ。


「取り敢えず、クラスでは何も言わないで欲しい。言ったらどうなるかは理解しているよな?」


「へいへい。言わねーよー。」


1番怪しいやつが返事をしてくれたので、とりあえず一安心だ。





    後書き

はじめまして!


キャラ紹介をしておこうかなと思います。


北代冬樹 本作主人公。黒と茶の中間のような色の髪の毛。身長は175cmほど。太っても痩せてもいない。部活には所属していない。


新堂朱莉 冬樹の同居人。料理センスが壊滅的。金色に近い髪、プロポーションは抜群。身長は160cmほど。こちらは新堂グループの令嬢。冬樹の叔父には面識があるらしい。同じく部活には所属していない。


一ノ瀬隼人 冬樹の友人。174cmと少し冬樹より小さい。本人は気にしていない。部活は陸上部。休みとオフの日は美晴といるか家の手伝いをしている。


柊木美晴 隼人の彼女。世話を焼くのが大好きで、毎朝隼人を起こしに行くのと、彼の為に弁当をつくっていくほど。隼人からは、時々「母さん」と呼ばれることもある。そのことについては満更でもないようである。部活には所属していない。


西園寺桐人 朱莉が冬樹と一緒にいることが許せない様子。冬樹と朱莉が同居しているのはまだ知らない。テニス部に所属(おかげで冬樹、朱莉と帰宅時間が違う)。


(なんでこんなとこにキャラクター紹介載せてるのかって?

忘れてたんだよ!ごめんなさい!!!!)


前の話にも少し書き足したところがあります。ここに書かれているようなことばかりですので(部活動については今初めて考えた)、特に読み返す必要はありません。


こんなもんですかね。冬樹の叔父さんや朱莉の父親などはこれから登場させるつもりなのでまだ書きません。


駄作ですが、最後まで応援してもらえるととても嬉しいです!

☆もつけてくれると、ありがたいというか飛び跳ねます。



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