第13話 Briefing
「一樹、起きろよ」
「…んん…もうちょっとだけ……」
「もう十時だぜ」
「もっと奏太くんの隣で寝た〜い」
僕は先輩に抱きつき甘えた。
「だ〜め〜だ」
先輩が僕の身体を起こし、先輩がベッドからおりた。
「十二時に竜二と大地に会うんだから。先シャワー浴びるからな」
そうだすっかり忘れていた。先輩をみると朝にピッタリという爽やかな笑顔でこっちを見て風呂場に向かった。このニコっとする笑顔を見ると、この人が本当に、昨日あんなエロい姿をして、あんなエロいことをしてきたのかと疑いざる負えない。ただシャワーを浴び終えても履いている下着はやっぱり薄いビキニブリーフだった。やっぱ先輩は下着フェチで、そして匂いフェチでもあるんだなと今までのことを思い出しながらベッドから飛び起き、シャワーを浴びた。
大地さんと竜二さんが時間通りに渋谷のハチ公前に現れた。
「よし、今日は間に合ったぞ奏太に、一樹久しぶり」
「久しぶりだね。一樹くん」
「お久しぶりです」
「おいおい、お揃いのTシャツで来んなよ」
「いいじゃ〜ん、別に」
相変わらず二人は仲が良い。でも、ペアルックは流石に少しひいた。
「どこで飯食う?」
「二人は、日本食がいいんじゃない?」
「日本食か。一樹は何がいい?」
「やっぱ寿司かな」
「お、じゃあ西武の有名な回転すし屋にすっか?」
「いいね。竜二、今日冴えてるじゃん」
「だろ、大地。俺だってやるときゃ、やるんだよ」
西武の回転寿司屋に到着すると、日曜日ということもあり、ざっと三十人以上待っていた。僕たち四人の意見は同じでその場から離れた。結局どこも混んでいて、デパ地下でお惣菜を買って竜二さんと大地さんが住んでいる吉祥寺のマンションへと行くことになった。
「結構いいとこ住んでるな」
「まあな、家賃二人で折半してるからな」
「汚いけどあがって」
大地さんが言うような汚さはどこにもなかった。2LDKで畳の部屋があるのはすごく羨ましく思えた。もう何年も畳の部屋で寝ていない。いつか僕も先輩と一緒に住むことができるかなと思いながらダイニングテーブルの椅子に座った。こぢんまりとしているが、家具もどれもセンスが良い。きっと大地さんが選んだんだろうな。
「あ、そうだ。これこれ」
先輩がリュックからクシャクシャになった紙ふくろを竜二さんに渡した。
「お、悪いね〜毎回」
紙ふくろから中身を取り出した竜二さんは嬉しそうにしている。新作かどうかは分からないが先輩の会社のケツワレだった。それを持って、台所で惣菜をお皿に移したり、電子レンジで温め直している大地さんのとこへ行きお願いしている。
「これ、履いて」
「嫌」
「お願い。大地」
「嫌」
「お願いします。一生のお願いです」
「分かったから後でね。てか竜二これ持ってって」
竜二さんがお皿に入ったサラダを運んできてくれた。
「先に食べていいよ」と大地さんに言われるが、僕たちだけ先に食べるのは申し訳なく、みんな机に揃うまで待つことにした。
「いただきます」
「やっぱデパ地下の惣菜最高」
「美味しいですね」
「これも食え、一樹」
「なんだ〜ラブラブじゃね〜か」
「そういえばお前たちに報告しようと思って」
「何何?」
「俺たち付き合ってんだ」
急な先輩の二人への告白に一瞬喉を詰まらせそうになった。こうやって先輩が自ら言ってくれて僕は嬉しかった。昔はそんなに自分のことを言う人じゃなかったのに。
「まじか?」
「あ! 思い出した! もしかしてさ、ずっと前に相談された目で追っちゃう男の子って」
「そう。一樹のこと」
「何だ〜お前やっぱ完璧なバイだったのか〜。こっちの世界へようこそ」
「こっちの世界って何だよ」
「まあ、でも一樹くんは大学の頃から知ってたよ。ゲイだって。ね、竜二」
「そうそう。でもなんか隠したそうだったから、触れない様にはしてたんだよね」
「え、なんで分かったんですか?」
「いや、あんなに奏太のこと見てたら誰でも分かるって」
「え〜僕、そんなに見てたんですか?」
「うん。見てた」
「ごめん、奏太くん」
僕たちは居心地がよく、結局夕飯も大地さんの手料理でおもてなしされ、暗くなるまで竜二さんと大地さんの家に居座った。みんながみんなオープンになり、笑いの絶えない時間が続いたが、そろそろ帰った方が良いような空気が出て、僕と先輩はホテルへと戻った。明日は朝早く起きて空港に行かないといけないため、僕たちは昨日よりも早くベッド入った。
「今頃、あいつらあの下着履きながらやってんだろうな?」
「奏太くん、何言ってんの?」
「俺たちもやるか?」
「軽くならいいよ」
「軽くか? でもお前、ギンギンだぞ?」
「奏太くんだって」
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