第10話 Long Service

僕たちは水も飲まずに二試合、続けてバレーボールの試合をしたかのように息を切らしながらベッドに倒れ込んだ。二人の激しい吐息だけが部屋中に広がる。今までお互い隠していた感情が解放感と共に、解き放たれたからなのだろうか。


「ハァ…ハァ…先輩……激し過ぎ…ハァ…です」 

「お前……ハァ……もだ…ろ」

「こんな……セックス…初めて」

「俺もだ…」


 五分ぐらいだったかな、二人で天井を見つめていた時間が続いた。ふと、掛け時計に目をやると、七時半になる前だった。シャワーを先に浴びろと言われたので風呂場へ向かった。頭からシャワーを浴びる間、この一時間の間に起きたことを僕は整理しようとしていた。僕が先輩の性的対象であり、僕の下着姿が忘れられないこと、僕を見てまた興奮したこと。でも先輩はゲイなんだろうか? 


それともバイ?


「俺も入るぞ」

「え、先輩ちょ」


 僕はさっきまでやっていた相手に向かって、なぜかあそこを隠した。


「お前、なんで隠すんだよ」

「え、いや、先輩、あの」

「かわいいな。もう一回犯したくなる」


後ろから抱きしめられながら、耳元で囁く先輩に、また欲情してしまい第三試合を軽く終えた。

 

 体も綺麗さっぱりと洗い、僕たちは夕飯を食べてないことに気づいた。ソファに座って携帯をいじりながらデリバリーを探している先輩の脚の間に、僕はちょこんと体育座りで床に座った。


「なんでもいいよな?」

「うん。なんでもいいよ」


 僕は思いっきり首を後ろに反らし先輩の顔を見ながら返事をした。


「じゃあまたピザでいいな?」

「いいよ」


  頭を撫でられた。何だか一気に距離が縮まって、自然と敬語さえも使わなくなっていた。けれども、ピザが届いた頃には僕たちはお腹が空いてちょっと不機嫌だったのか話もせずにテレビをずっと眺めていた。


「ピザ、うめえよな」

「うん。生ハムピザうま!」

「お前、いつも美味しそうに食うよな」

「そう?」

「うん。大学の頃からそうだった」

「大学の頃って……」

「実は……俺、サークルや飲み会ん時、気づくとお前のことずっと見てたんだよな。で、悠美と付き合ってたし、俺もどうしていいかわかんなくてさ。竜二と大地にいつも目で追ってしまう男の子がいるって相談たんだ。バイかもしれないって」

「それで?」

「でも竜二と大地はバイが周りにいないから分かんないらしくて『かわいい弟みたいな感じだからじゃん』てさ」

「僕はたまに奏太くんのこと見てたけど」

「だよな? 一緒にプレーしてなくても何度か目あったもんな?」

「うん。だって好きだったもん」

「なんだよ、早く言えよ」

「いや、奏太くん彼女いたじゃん」

「まあ、そうだよな」

「でも、奏太くんケツワレが好きなんでしょ?」

「いや、そういうわけじゃないだな。お前が履いてるから好きなんだ」

「えっち」


 僕は2枚目のピザをかじりながら言った。先輩も2枚目に手を出している。


「お前さ、俺の彼女になるか?」

「彼氏でしょ?」

「あ、彼氏か」

「うん」

「あと、今日は泊まっていけよ」

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