第174話 老騎士と女王の過去


 女王陛下の執務室を退室したあと、俺は廊下を歩きながらオラーノ侯爵に問うた。


「結局……。あれは何だったんですか?」


「……私の執務室で話そう」


 オラーノ侯爵は一言だけ告げて、無言で廊下を歩き続けた。王城にあるオラーノ侯爵用の執務室に入り、互いにソファーへ座ったところで――


「はぁぁぁぁ……」


 オラーノ侯爵は頭を抱えながら大きなため息を吐いた。


「……あれはな、私への当て付けだ」


「閣下への?」


「ああ。昔、私は陛下から婚姻を申し込まれてな――」


 もう一度ため息を零したオラーノ侯爵は、過去の出来事を語り始めた。


 王国最強騎士がまだ若き頃、彼は王立学園を卒業して騎士団へ入団。


 エリートコースを歩んでいたオラーノ侯爵は、彼の父親の意向もあって数年ほど現場を経験した後に軍務省の王城勤めとなる事を期待されていた。


 これは次期当主としての将来も見据えての事だったようだが、本人はそれを拒否。あくまでも現場勤務を続けて、剣の道を歩み続けることを希望した。父親と何度か揉める事もあったようだが、この選択が王国最強への道へと繋がる。


 当時は聖王国とのいざこざが拡大した事で国境沿いにて小規模な戦闘が続発。その戦闘にオラーノ侯爵が参加すると、剣の才能を発揮した彼は敵将を討ち取るという快挙を成し遂げた。


 武功を立てた事で王都にて表彰されたオラーノ侯爵。このタイミングで、まだ少女だったクラリス女王陛下は彼に一目惚れした。


 当時のクラリス女王陛下は相当本気だったらしい。


 この頃の女王陛下は正に純真無垢な少女といった感じだった。現在の有能さを垣間見せるシーンは多々あったようだが、それでも年相応の少女であったそうだ。


 常に笑顔が絶えず、彼女の周りは花畑のように平和な雰囲気が漂っていたという。


 そんな純真無垢な少女が一世一代の大勝負を仕掛けた。オラーノ侯爵と結婚したいと希望を告げて、更にはオラーノ侯爵本人にも「お慕いしております」と告白をしたらしい。


 しかし、オラーノ侯爵にも心に決めた女性がいたのである。


 それが現在の妻であるマリアンヌ様。こちらもこちらで、王立学園時代から将来を誓い合った大恋愛の途中だったわけだ。


 それでもクラリス女王は構わないと思っていただろう。だって、王国は一夫多妻制である。


 オラーノ侯爵の父親も乗り気だったそうだ。この国は女王制であるものの、自分の息子が王家の一員になれるならと喜んだ。王家と強い繋がりが出来てオラーノ家も安泰となると思っていた。


 だが、本人は違ったのだ。


「私はマリアンヌしか愛せぬと陛下の求婚を断った。王国は一夫多妻制であるが、二人の妻を平等に愛せる自信が無かったからな」


 彼自身が言った通り、陛下の求婚を断った。


 断られた女王陛下は自室に籠って出て来なくなるほどのショックを受けたようだ。


 それだけじゃなく、貴族達も巻き込んで相当揉めたらしい。貴族達は求婚を断ったオラーノ侯爵の正気を疑うような事を言い出し、挙句の果ては本人へ向けて大バッシング。


 彼の父親も「何を馬鹿な事を」と激怒して、当時のオラーノ侯爵に味方は一人もいない――いや、相思相愛だったマリアンヌ様以外はと言うべきか。


 しかし、そんな状況になったとしても不器用な男は一切折れなかった。


 私はマリアンヌしか愛せない、と。


 彼の決断は王家を酔心する貴族達を激怒させた。


「結果、私は第三ダンジョン都市に左遷されてな。マリアンヌとの結婚も保留となって、私達は引き離されてしまった」


 さすがに侯爵家の息子を不敬罪としては裁けなかったのだろう。代わりに軍務省へと圧力が掛かり、オラーノ侯爵はエリートコースから外れてしまう。


 婚約者だったマリアンヌ様の実家も「距離を置いた方が良い」と判断して、マリアンヌ様を屋敷の中に軟禁した。二人は想いを募らせたまま、一言も話せずに離れ離れになってしまった。


「当時の第三ダンジョンはまだまだ氾濫も多く、まさに地獄のような場所だった。仲間達は次々に死んで行くし、聖王国からのスパイ活動も活発で一時も気が抜けない時代だったな」


 だが、この苛烈な経験は彼を更に高みへと導く。


 ダンジョン内にいる凶悪な魔物、外に出ても敵国からの刺客との戦い。対魔物戦、対人戦の両面を経験していく事で、オラーノ侯爵は精神も剣も磨きが掛かった。


 左遷された騎士という立場から始まり、小隊の指揮官、中隊の指揮官、果ては第三ダンジョン攻略部隊の指揮を執るまでに。


 才能を発揮した彼は遂に第三ダンジョンの最下層まで到達。ダンジョン全体を掌握して、都市に平和を齎した。


 同時に幼馴染だったベイルーナ卿と協力して王都研究所の魔導具開発にも貢献。他にも現在行われているダンジョン栽培計画にも携わった。


 左遷された地で多大な功績を生み出したオラーノ侯爵。そうなればもう王都は彼を無視できない。


「そして、私は再び王都へ呼び戻された」


 再びエリートコースに舞い戻ったオラーノ侯爵だったが、彼を王都へ呼び戻した人物が問題だった。


「当時は王家の代替わりが行われた直後でな。私を呼び戻したのは他ならぬクラリス陛下であったのだ」


 彼を呼び戻したのは、求婚を断られたクラリス女王陛下本人。


 となれば、また求婚されるのかと思いきや……そうではなかった。


「陛下は私に言ったのだ。私を選ばなかった事を後悔させてやる、と」


 そう言った女王陛下は、随分と変わっていたと彼は言う。


 純真無垢で笑顔の絶えなかった少女は消え失せ、今現在の女王陛下そのものになっていたと。何を考えているのかさっぱり読めず、大胆な行動を起こすようになっていったのだとか。


「…………」


 俺は黙って聞いていながら、内心では「失恋が女王陛下を変えたのか?」と推測した。


「その後、私はは王都騎士団副団長に任命された」


 同時期、マリアンヌ様と結婚を果たす。


 クラリス女王陛下の言葉は頭に引っ掛かっていたが、彼女もまた魔法使いであった貴族の男性と結婚を果たした。これで全て丸く収まったかと思われたが……。


「陛下は新婚だった私を側近に任命した。これがかなり無理矢理でな。騎士団とのやり取りは私を通さなければ行わないと言い出したのだ」


 もちろん、オラーノ侯爵も気まずさがあったようだ。一度は断るものの、陛下は執務室にオラーノ侯爵を呼び出して「拒否は許さない」と女王命令までをも下す。


 別に男女の付き合いを求めているわけでもない。ただの仕事、国のためとも言われて、オラーノ侯爵が折れる形となった。


 しかし、ここからクラリス女王の「ワガママ」が目立ち始める。


 まだ副団長だったオラーノ侯爵が側近に任命されるのも異例だったし、騎士団とのやり取りに対して「団長」を無視して「副団長」と行うなんておかしいにも程がある。


 さすがに周囲の貴族達も「おかしい」と騒ぎ始めた。だが、異を唱えられる者はいなかったのだ。


 何故なら女王クラリスは優秀だったから。


 魔導具の積極的な研究と開発、全騎士団への魔導兵器配備、新世代魔導兵器の開発における個人資金からの助成。他にも国民に向けての積極的な生活支援や移民受け入れ等の手厚い保護によって多大なる支持を獲得した。


 何より、彼女の行った政策が国内にあるダンジョンの安定に繋がったのが大きい。


 騎士団がより強力な魔導兵器を持つ事で氾濫を鎮圧しやすくなって、怪我人や死者の減少に繋がった。都市に住む者達も氾濫が起きなくなった事で安心して暮らせるようになった。


 街の荒れくれ者はダンジョン狩人という職を得て、それが更にダンジョンの安定に繋がる。


 研究所は潤沢な資金をもって研究に没頭できる。研究の成果、副産物を利用して魔導具が続々と開発される。


 そして、それらは貴族と平民の生活を豊かなものにしていく。彼女の行った事は国内に住む人間の幸福度増加に繋がったのだ。


「陛下の行う政治は確かに優秀だった。周囲の貴族達も次第に納得していき、文句を言う者もいなくなった。だが、私に対しては……」


 クラリスは何かとオラーノ侯爵を執務室に呼びつけて会話を行うようになった。


 会話といっても自分との不倫を勧めるような如何わしい内容じゃなく、仕事に関する内容ばかりである。だが、その会話の途中途中に小さじ一杯分程度のワガママとが入り込む。


 新婚生活はどうだ? と聞かれて答えると「私ならこうする」と言い出す事から始まって、時には自分と結婚した場合の将来を語ってみたり。


 ただ、先に言った通り「小さじ程度」である。冗談にも聞こえるような軽いレベル。


 他にも自身の誕生日には希少な宝石を用いたプレゼントを要求する事もあったようだ。ワガママに応えたオラーノ侯爵がプレゼントを差し出すと「大切にする」と頬を赤らめながら言ってきたそうだ。


「果ては王女様の名付けに関して、お前が決めろとも言われたな」


 女王陛下とご結婚なさった貴族の男性は、子供が出来た直後に病死したらしい。


 女王陛下のお相手に関する噂は、過去に酒場でターニャから聞いた事がある。病死したとか事故だったとか、色々な話を聞いたが……。ターニャは黒い噂もあると言ってたっけ。


 もしかして、その黒い噂が囁かれた原因はオラーノ侯爵に名付けを任せたから?


 夫だった男は病死して、孕んだ子の名前を初恋の相手に決めさせる。想像すると黒い噂が立つのも分からんではないような状況だ……。 


「それは……」


「勿論、断ったがな」


 最終的には王城勤めの貴族全体で名付けの候補を挙げたようだ。三日三晩考えた渾身の名前だったそうだが、結局は女王陛下自らが決めたらしい。  


 ――ここまで話を聞く限り、クラリス女王陛下はオラーノ侯爵を諦めてはいなかったのだろう。別の角度から見ると、自分を振った男に対してじわじわと言葉の縄で首を絞めているようにも思えるが……。


「しかし、未だにですか?」


「まぁ、歳を取ってからは頻度も減ったがな」


 最近では「小さじ一杯」から「小さじ半」くらいには減ったようだ。


「最初は私も贖罪のつもりだった。しかし、次第に周囲にも無理難題を言うようになってな……」


 自分が振った女性に対して対応を間違えたと彼は言う。男女のもつれから発生した問題だとも。


 ……まぁ、オラーノ侯爵の言う「贖罪」は悪手だったかもな、と俺も思う。


 ただ、彼等は普通の男女じゃない。貴族と女王だ。この地位と関係性が問題を難しくした要因でもあり、今の女王陛下を形作った原因でもあるのだろう。


「ですが、過去の出来事が私に関係するのですか?」 


「……お前と私は似ているそうだ。若い頃の私にそっくりだと他の貴族からも言われたよ」


「つまり、私と若い頃の閣下を重ねて見ているという事ですか?」


 オラーノ侯爵は「かもしれん」と弱々しく言った。


 果たして本当にそうなのだろうか? 彼の推測を聞いて、執務室での出来事を思い出すが……。


 どうにも俺にはそう思えなかった。


 そう感じた理由は、執務室で見せた陛下の視線だ。


 何かと問題発言をする前に陛下はオラーノ侯爵の顔をチラリと見ていた。あれは俺を誘いつつも、オラーノ侯爵の出方を窺っているんじゃないだろうか?


 ――未だ初恋の男を諦めきれない。


 そんな感じにも思える。


 俺への態度も本当は断らせる口実だったんじゃないだろうか?


 そもそも、どうして陛下自らが? という話だ。


 身体能力向上を子供に継承させたい、それが魔法使いであれば確率が上がる、そういった話であれば別の女性でも良いのではないだろうか?


 最終的に下した「ウルカとの子供が出来てから」という判断が余計にそう思わせる。本当に能力を継承した人間を増やしたいならば、なりふり構わず子供を作らせるんじゃないだろうか?


 自分の推測を頭に浮かべつつも、明かさないままオラーノ侯爵に「どうして陛下自らが子供を?」と問うてみた。


 すると、彼は腕を組みながら口を開いた。


「陛下は国内で最大の魔力量を誇る女性だ。昔、国内最強と謳われる魔法使いがいたのだが、彼に対して魔法をどれだけ撃ち続ける事が出来るかという実験が行われた」


 結果、その魔法使いは炎魔法を一時間ほど連発し続けた。しかも、そのほとんどが魔物を軽く殺せるような威力だったらしい。


 レンが全力全開で放った雷魔法を一時間連発するようなものだろうか。


 対し、クラリス女王陛下にも同じ実験がなされた。彼女は倍の二時間ほど撃ち続けたらしい。


「加えて、陛下には特別な魔法がある。秘匿されているので明かせぬがな」


 要するに現状で最強最高な魔法使いはクラリス女王陛下という事だ。そんな彼女との子供であれば、二種類の力を受け継いだ最高の魔法使いが誕生するかもしれない。


 陛下はそれを狙っている可能性がある、とオラーノ侯爵は語った。


「本気だと思いますか?」


「本気だと思って行動した方が良い、と言った方が正しいかもしれんな。陛下はウルーリカとの子供を見てからと言っていただろう? 結果次第では現実になる可能性がある」


 更にオラーノ侯爵はクラリス女王陛下の身体に関わる事も語り始めた。


「陛下を見てどう思った? 若々しいと思わんか?」


「ええ、まぁ」


 陛下の容姿はどう見ても二十代前半の女性だ。


 若作りしているとかそんなレベルじゃない。とても年上には見えないし、ウルカと並んでも「同年代です」と言っても何ら違和感がない。正真正銘、二十代の女性そのままである。


「あれは優れた魔法使いの証だ。最近の研究では体内に保持できる総魔力量が多ければ多いほど、身体的な老化が遅くなると言われている」


 身近なところだとレンだろうか。


 彼は少年のような見た目をしていて、ここ数年は身長も伸びていないし顔つきも変わっていないと本人から聞かされた事がある。


 オラーノ侯爵が知る魔法使いの中には、歳が六十を越えても三十歳程度の若い容姿を保っている者さえいるらしい。


 彼等と同じく、女王陛下も二十年以上前から外見が変わっていない。王都研究所の予想では「六十を越えても容姿は変わらないのではないか」と囁かれているんだとか。


 ……逆に言えばベイルーナ卿は総魔力量が少ないのだろうか? 彼は魔法使いだが、年相応に老化を重ねているし。


 他に出会った事のある魔法使いはレンの兄であるリンさんだろうか。


 彼は自分を「優秀じゃない」と言っていたし、魔法を発動する際もかなり疲労した姿を晒している。


 だが、レンと同じく容姿が幼い。オラーノ侯爵の言った研究結果が正しければ、リンさんはもっと成長してても良い気がする。


 この違いはなんだろうか? 彼等が双子だからか?


 そこまで考えて、俺は内心「止めよう」と思い直した。これ以上考えても答えは出ないし、現実逃避しないで目の前の問題に集中しないと……。


「外見が老化しない。すなわち、身体的機能も老化しないという事だ」


 老化が遅いという事は、実年齢に反して人間的な生殖活動の限界に対する延長も考えられる。


 要は俺との間に子供を作る事に関して問題が無い。もっと言えば、オラーノ侯爵との子供さえも身籠る事が出来るかもしれない。


 陛下の真意はどうあれ、彼女が口にした「能力の継承を目的とした子作り」は十分に可能ってことになる。


「……私はウルカを裏切れませんよ」


「それは理解している。だから、私もそう進言した」


 俺の発言に対して陛下が放った「憎たらしいほどに似ている」という意味がようやく分かった。


 俺もオラーノ侯爵と同じく、一人の女性だけしか愛せない。平等に二人を愛せる自信がない。当時のオラーノ侯爵もこんな気持ちを抱いていたのだろうか?


 ただ、最後までオラーノ侯爵の『読み』を聞いても陛下は俺を求めいるとは思えなかった。


「ウルカに話しておいた方が良いですかね……?」


「そうした方が良いかもしれん」


 今後の状況がどうなるにせよ、後々発覚するよりも事前に明かしておいた方が良いだろう。


 今夜あたりにも明かそうと思うが……。彼女がどんなリアクションを取るか予想できなくて不安だ。


 しかし、俺自身の推測が正しければ――俺は完全に巻き込まれた側の人間だな。


「すまんな……」


 オラーノ侯爵も「自分のせいで」と自覚があるのだろう。彼は大きなため息を吐きながら俺に対して頭を下げた。


「いえ……。頭を上げて下さい。気にしていませんから」


 でも、どうしても俺はオラーノ侯爵を憎めない。


 これまで良くしてもらった恩もあるが、彼が一人の女性だけしか愛せなかった事も理解できてしまうから。


 俺も同じ状況だったら……。同じ選択をしただろう。



-----



 王城から屋敷へ帰った後、オラーノ家では称号授与に対するお祝いが開催された。


 仲間達とオラーノ家、それにベイルーナ卿を含めた親しい者達だけの食事会だ。


 普段よりも気合を入れて作ったというマリアンヌ様の料理とオラーノ家が秘蔵していた高級な酒を振舞ってくれた。料理も酒も美味しくて、この時だけは悩みの種が頭から吹き飛んでくれた。


 しかし、問題の時はやって来る。俺は寝る前に女王陛下から言われた事を包み隠さずウルカに明かした。


「……ふーん」


 女王陛下のお言葉を聞かせると、ウルカはたっぷり間を空けて答えた。


 ウルカは真顔でジッと俺の顔を見つめていて……。正直、怖い。


「だ、だけどな? 俺の考えとしては、女王陛下はまだ閣下を想っているように思えるんだ」


「ええ」


「あくまでも俺を使って閣下の反応を見ているだけに思えた。こう、提案をする際は閣下の顔をチラッと見るんだ」


「ええ」


「それに! 俺はウルカを裏切れないとハッキリ言った! 俺には君だけだ!」


「……そうですか」


 あ、ちょっと反応した。ウルカはそっと顔を逸らしたが、頬が赤くなっているのは隠せていない。可愛いやつめ。


 少しだけ顔を逸らしたあと、ウルカは俺の胸を押してベッドに押し倒した。そのまま馬乗りしてきて、上に着ていたシャツを脱ぎ放つ。


「ウルカ?」


 上半身裸になったウルカは俺の顔を見下ろしながら、自分の唇を舌でべろりと舐めた。


「じゃあ、余計な邪魔が入らないように優秀な子を産みます。私と先輩なら大丈夫ですよ。何も心配しないで下さいね?」


 邪魔なんてさせてたまるか。ウルカの表情からはそんな考えが窺えた。


「あ、ああ。勿論だ」


 ――後日、ニコニコ笑うマリアンヌ様から別の客室に移動するよう言われた。そこは今の部屋よりも壁が厚いらしい。


 俺は顔を真っ赤にしながら謝罪した。

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