第2話

「さぁ!一休とやらこの屏風の虎を見事捕まえる事が出来るか!?」


「なるほど、分かりました。この一休、見事虎を召し取って見せましょう。されど、それにはいくつか問題がありまして…」


「なんじゃ?遠慮なく申してみよ」


「絵から虎が飛び出た際、この大きさですと子どもの私一人では些か不安でございます。いや、出来ぬと申しておる訳では御座いませぬ…が、万が一にもお集まりの方々へ被害も考えますと、この屋敷のお侍様方に御協力をと…」


「おお…?おお…確かにそうだな。そういうのは大事だな。これ…何人か具足に武器を持って来賓の方々の前に立て。しっかりお守りするのだぞ」


「それともう一つございまして…」


「なんじゃ?」


「飛び出し慌てた虎は何をするか分かりませぬ。人を襲わず一目散に掛け出す可能性もございます。いやいや、逃すつもりは毛頭ございませぬが…それでもやはり、屋敷内や、庭へ警護をお願い致したく」


「ま、まぁ…そういう可能性もあるな。確かにそれは危険だ…これ!残りの奴らにも具足と武器を持たせて配置せよ!急げ」


「それと…」


「まだ何かあるのか!?」


「この様に厳重に警備した中でも屋敷外に出る可能性もなきにしもあらず…いやいやいや、この一休、いかなる事になりましても必ず虎をお縄にする事をお約束致します。ご安心を。しかしながら、ここはやはり近隣の方々へのお声がけもお願い致したいところではあります」


「いや…それは…流石に」


「ああ!これは失礼を!!過分なお願いで人足もお手隙ではないご様子、ここは私自ら近隣周りまして『これより虎が出るかもしれませぬ』と言って参ります!その間に御屋敷のご準備を!」


「待て待て待て待て!近隣への注意とかは…その…いらぬだろ?」


「何を仰います!?何も関係の無いものが虎の餌食になる可能性もあるのなら『今より我が屋敷の屏風の中より虎が飛び出るが故、暫く家の中に籠るべし』と近隣どころか町中に言って周るべきでございましょう!?行って参ります!!」


「待って…参った。参ったから町中はやめて」

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このはし 渡るべからず 破竹 @hachiku

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