服選びに下着選び

服屋にやってきた俺と愛莉。

「……なあ、いい加減離れてくれないかな」

「えー、いいじゃんちょっとくらい」

「どこがちょっとだよ!」

俺の腕に抱き着いたまま離れてくれない。

「あのな、家にいたときも言ったが……お前のおっぱい当たってんだって」

「仕方ないじゃん。それと、そんなこと考えるなんてお兄ちゃん変態さんだねー」

「……ここでそれを言うな」

愛莉から抱き着かれている間、周りの目が俺に向いていた。

なんというか、「リア充じゃん……」とかって引いてるような目とか、「リア充死ね!」とかっていう目も俺に向けられていた。

そういうけど、こいつ全然離れてくれないんだよ。

俺は決してそういうつもりはないのに……非リアな方ごめんなさい。

これはどっちかって言うと、好かれている側では?

まあどっちでもいいんだけどさ。

「それで、愛莉はどういう服が欲しいの?」

話題を変えるべく、愛莉が欲しい服のことについて聞いてみた。

「そうだなー……パジャマとか欲しいし、あと下着とか」

「パジャマ?お前中二だろ?」

「中二でもパジャマは着るの!」

いけない、失礼な質問をしてしまった。

たしかに、大人になってもモフモフのパジャマとか着る人もいるしな……。

「それと、下着……だっけ?」

「うん。下着も、一緒に選んでよ」

「はっ?下着もって、パジャマもかよ……」

いや、パジャマは一緒に選ぶのはいいが、下着って一緒に選んでいいものなのか?

中二の下着を選ぶとか、考え方によってはちょっとエロいな。

いやそうじゃなくて……。

「これなんかどう?」

愛莉は何着かパジャマを持ってきた。

「えーと、この中から選べと?」

「なんでもいいよー」

愛莉が持ってきたのは、モフモフのパジャマ、果物の絵が描かれているパジャマなど、結構かわいいものがあった。

この中だったら、俺はモフモフのパジャマがいいかなぁ。

「この中だったらこれかな」

「モフモフ?これけっこういいよねー!」

たしかに果物の絵が描かれているパジャマとかもいいが、質感的なところでいえば、俺はモフモフの方が好きだった。

サラサラしているものっていうよりは、もこもこしてる方が好きというか……。

この服って完全に秋冬用だよな。

今の季節感で言えばちょっと早い気もするが……モフモフパジャマ姿の愛莉かぁ、絶対かわいいだろ。

「パジャマは一着だけいいの?」

「うーん……ほんとはもっと買いたいけど、お金そんなにないでしょ?」

なんと、俺のお金事情で一着だけにしていたらしい。

「そうだなぁ……ほんとは使いたくないけど、買いたいなら買っていいよ」

「ほんと!?お兄ちゃんってば優しいんだからー」

「いや、そういう訳じゃないけど……」

現金で言えば二着ほどしか買えない。

だけど、財布に入っているクレジットカードならいくらか買えるんだ。

一応クレジットカードには、俺の親がかなりの金額をつぎ込んでくれている。

基本的にはバイトで稼いだお金を食費などに回し、家賃などはこのクレジットカードから引いている。

買い物で使うお金のほとんどがバイトで稼いだお金なのだ。

「えーと、それじゃあこれとこれと……」

と、愛莉は他のパジャマを買い物かごに入れこんできた。

「それじゃあ、パジャマは五着でいいかな。次は下着見にいこー」

「あっ、おい!」

愛莉はそう言うと、俺の手を引っ張り歩き出した。

疑問なのだが、女子の下着を売っているコーナーに、男である俺が入っていいのだろうか。

まあお金を持っているのは俺だし……いいのか?

「なあ、さっさと選んで帰ろうぜ」

俺はこの場にいてはいけないと思い始め、愛莉に早く買えるように促す。

「分かってるってばー。そんなにせかさないでよ」

あははっと笑いながらそういう愛莉。

俺の気持ちをわかってくれないかな愛莉さん。

「それじゃー、これなんかどう?」

いよいよヤバい展開になってきた。

女子から「これなんかどう?」と、男に向かって下着を見せてくるのだ。

そしてその下着を服の上からつけたりと……他から見れば、ただの変態だ。

「それでいいんじゃない?」

俺は適当にそういいつつ、早く帰れないかなとソワソワし始める。

「そうかな?あんまり似合ってないんじゃない?」

いや、自分がそう思うなら自分で決めた方がいいのではないか。

「お兄ちゃんってば選ぶセンスないんだから」

とここで、ばっさりと言われてしまった。

ちなみに俺はドМとかではないので、こんなこと言われると悲しくなる。

「ははっ、冗談だよー。だからそんなに落ち込まないで」

そういいながら俺の背中をさする愛莉。

なんというか、俺が愛莉の子供みたいになっている。

「うーん……これがいいかな」

愛莉が手にしたのは、黒になにかの柄がついているパンツ、そしてこれはスポーツブラというものだろうか。

ブラをつけるほど、こいつは胸の発育がいい。

いいというかなんというか……まあ、発達してるんだよ。

「よしっと、それじゃ会計して帰ろ?」

「お、おう」

やっと帰れる!と思った矢先、

「あ!凜堵じゃん!……って、ここ女子の下着とか売ってるコーナーだよ?なにしてるの?」

「あ、いや、そのあれだよ!い、いい妹の!下着を選んでいてさ!」

「妹?ああ、たしか愛莉ちゃんだっけ?」

「そう!それでここにいるんだよ!」

見つかった時の焦り、そしてこの場所にいてはいけないという焦り。

いろんな焦りが混じって、うまく言葉が発せられなかった。













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