シャンデリア
分厚い扉が勢いよく開き、奴らが戻ってきた。表情を見る限り、何もなかったんだろう。ようやく先に進めるわけだ。
「安全を確保しました。次フロアを抜け、そのまま改札まで移動しましょう。彼らはまだこの階層に留まるそうです」
「了解だ。お嬢ちゃん、行けるか?」
「ばっちり!」
すっかり元気が戻ったようだな。何よりだ。荷物をまとめ、簡単な名乗りを済ませてから大所帯で歩き始める。これだけいりゃあ怪物も寄り付かないだろう。
「アンタ達は知り合い同士でパーティを組んでるの?」
「しらないひとどうし!ネットで知り合ったの!」
「まさか…誘「違う違う!あるだろ?政府認可のアプリが」
「男3人に囲まれて…まだ小学生程度なのに…こんな素顔も見せない鎧野郎とも…」
キイルトースが目白とやらに絡まれ困っているな。見てる分には面白いが、ありゃあ随分と厄介そうだ。
「目白、静かに」
「でも…「いいから」
安中の静止で目白は黙り込んだが、その目は未だにキイルトースを睨んでいた。気の毒に。
安全が確認された次フロアを抜け、新たなフロアに入る。ここも他のフロアと基本的には家具の配置などが一致していて、異常はなさそうだ。巣が何個か家具の下に見えるが、襲ってくる気配もない。
「彼らが静かな間に通り抜けましょう。ナビを見てください、ここらは繁殖地帯となっているそうです」
「だとしたらなんで襲って来ないのかしら。ウォールアイは自らの縄張りに対して敏感なのに」
「こっちの人数にビビってんだろ。それより、その魔法剣についてちょっと聞いてもいいか?」
「構いませんよ」
「なんでいきなり巨大火球を出せたんだ?見てたんだよ、アンタが剣から出してたとこを」
あの時は戦闘中でそこまで目がいかなかったが、確かにそうだ。巨大火球はただでさえ難しい魔法の中でも高度なものに当たる。剣が魔力を増強させ、威力を強化したのかも知れないが、そんな例聞いたことがない。
「あの剣には特殊な記号がついているのを見ましたか?私の考えでは、あの記号から魔法を強化するなんらかの力が出ているのだと思っています」
「ふーん、そんなもんか」
三井が魔法剣を鞘から取り出して観察しながら歩く、それを横からパトリシアが目を輝かせて眺めている。次フロアへと繋がる扉についた。
「開くぜ」
安中が扉をこじ開けると、中の景色が見えた。シャンデリアには血に塗れた人間…冒険者の亡骸が吊り下がって揺れている。今までの部屋より豪華な装飾がされているが、その殆どが目を痛ませるほどの赤に染まっていた。控えに持っておいたナイフをホルダーから取り出して片手で構える。復帰早々でこんな目に遭うとは、ついてねぇ。
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