擬似血管

ナビには怪物の出現予測地点が写される。石レンガの迷路を怪物を避けるように進んで行くと、大広間のような開けた場所へと出た。


 「構造が変わるとは言われていますが、基本型は同じです。私は他のパーティに挨拶をしてきます、皆さんはここで待機していて下さい」

 「まるでビジネスマンだな、早く戦わせてくれよ」

 「兄ちゃん、そう急かないでも死ぬほど戦うことになる。パーティ同士の協力は大切だ」

 「そ、そうだよ! ともだちはおおいほうがいいの!」


 強化剤が切れてきた。早くしなければ擬似血管の真価を見せることができぬ。


 「こちらのパーティに協力を取り付けました。取り分は8:2、第2階層までになります」


 ラフなTシャツを着た顔のそっくりな男2人が協力者となるようだ。武器は小刀、頼りにはならんだろう。


 「俺が兄のバ•ディ、こっちが弟のハ•リィ、よろしくな」

 「こちらこそよろしく」

 「よろしくおねがいします!」


 チッ、馴れ合いやがって。ともかくこれでやっと先に進める、足早に2階層へ歩く。早く自分の力を見せつけてやりたい、4階層じゃ物足りない。


 「ガキも一緒じゃないか! 大丈夫なのかよ… 」

 「若々しさってもんがないな、言っちゃ悪いが弱そうだ」


 男2人が小言をボソボソと言うのが聞こえる。黙らせるか?


 「おい、お前ら、静かに出来ないならここで… 」


 ガラララ… と石レンガが音を立てて崩れる。煙に紛れハ•リィが大きな爪に刺され、牙が数え切れぬ程生えている口に噛み砕かれたのを見た。

 厄介な奴が消えてくれて助かる。


 「皆さん! 自分が適切だと思う位置に行き、それぞれ応戦の用意を!」

 「お嬢ちゃん! 俺の後ろに隠れてろ、手本を見せてやる」

 「ひっ… あっ、はい!」

 「種類はロングネイル、長い爪と鋭い牙が特徴、弱点は額の穴。皆さん、そこを叩きます」


 狭かった廊下を広くしてくれた怪物に感謝だな、

擬似血管から滝のように液体が流れるのを感じる。


 甲冑が体の一部となる、気分が高揚する、全てが止まって見えた。矢が怪物の右目に突き刺さる、それを合図に思いっきり、飛ぶ。襲い来る爪を拳で破壊、そのまま首を掴んで折る。血飛沫が降る、美しいほどにざあざあと。

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